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第二十八話・子供ができないからこそ、その分、人生を楽しむ権利がある。 ●


 私の実妹Zの名言はいくつかあるのですが、これは筆頭にあたる。Zは子がいないのですが、その理由を母のせいにしてお金をせびっていた。このセリフは母から聞きました。でもそういう思考に至るのはZの性格もあるけれど、母の思考から来ているので母のせいでもあると思っています。今回はその話。


 母は私の幼いころからこう言っていました。

「女は子供を産んで一人前」

 このセリフの一言で不快な感情を持つ人はどうかお許しください。私はこの世のありとあらゆるイラクサな感情を綴る人間です。

「女は結婚できて当たり前、そして子供を産んでやっと一人前。仕事はせず、専業主婦になって子育てを楽しむのが最強」

 私は好きで働いていますが、それすら憐れました。

「共稼ぎか。かわいそうに。だから高卒の田舎の男なんかと結婚するなて、あれほど反対したのに」

 母の思考が時代遅れでおかしいのは、もうわかっているので「ハイハイ」 とスルーしていました。

 だからこそ、妹の不妊を嘆き当時は保険外で一回六十万円だった体外受精の処置料数回分は全額母が出しました。正確には父のお金ですが父は空気でした。私もZが子を切望していたのでそれは納得しています。でもその際にいう母のセリフが毎度イラクサでした。

「かわいそうに、Zはあんたより早く結婚したのにまだ親になれんやて。Zは昔から親に偉そうにモノ言っていたから、多分これからもずっと親になられへんねやで。これはバチがあたったんや」

 ……うわー。いくら治療費を払ってもらったとしても、Zが怒るのは無理もないと思う。そのうちに「子ができないのはお前のせいや、子がない分、人生を楽しませてもらう。お金をよこせ」 ……に、なりました。最後にはエスカレートしてお盆時の仏壇の前で母に暴力を奮うに至るのですからね。でも今となっては、これもどうでもいいです。

 Zがそういう思考になったのは、ひとえに母の子がない女性への蔑視から来ている。だからZがああなったのは、一部は母のせい。母は昔は働く女性ですら蔑視の対象だった時代に生きていたのです。時代は流れて考えも変わる。母だけが昭和時代から変わってない。私は母に言いました。

「お母さん、専業主婦希望者は、令和の時代では生ごみ扱いよ。それと子があると幸せとは限らないでしょ」

「ああ、そうやな。Zみたいな子を産んでもて、私は不幸や」

「そういう意味ではなくてね……」

「わかってる。子なしは、子で泣かんということわざもあるぐらいやからな。ZはZであんたよりもたくさんお金をあげてるし、それなりに幸せやのに、私をばかにしてお金ばかり取って」

「そういう意味では……」

「あんたまで、私をバカにするのか」


 ……と、いつも、こうですよ。文章にして書くと、母の一途な頑固さと愚かさがよくわかるわ……子がなくても大丈夫という思考のかけらでもあれば、Zもああならなかったと思います。

 Zは母を嫌いながらも母の金をあてにしていた。母に金がなくなると暴言と暴力を奮った。その源は母の思い込みから来ていると考えればZへの憐憫の情も湧くというものです。



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