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第二十二話・刺繍の裏側の話


 創作をしないときは、せっせと刺繍をしていた時期がありました。これは高校生ぐらいの時から続いている趣味です。時には毛糸を編んでセーターも作りました。通学時間、学業にバイト……それでもって時間を忘れて刺繍に没頭する時間がありました。若い時の方が時間がありあまっていたと思います。刺繍でもいろいろありますが、私は特にクロスステッチが好きでした。最初はオリムパスの簡単な構図のキットからはじめてベルギーのラナーテの刺繍まで夢中になりました。特にバスティンさんの作品が大好きで今でもキットを持っています。でも完成品を人に見せることはありません。一度見せたら「裏を見ないと作品の良しあしがわからない」 といきなりめくられた経験があるからです。刺繍に関してはこれは事実で、裏の刺繍糸の始末の付け方でその人の技量がわかるらしい……確かに上級者の糸の始末は本当に綺麗で感嘆する。私のはぐちゃぐちゃです。でも私の刺繍は人に見せるためではなく、綺麗な糸を繰り返しの動作で布に彩色していくのが好きなだけ。大事な自分の時間を汚されたような気がして、以来、人様に作品を見せたことはありません。

 刺繍に限らず毛糸を編んだりもあるけれど、大好きとはいっても温度差があり、他人に厳しいダメ出しをする人がいます。それこそ女社会を地でいくようなことがありますね。着物の着付けや柄をさりげなく、でも、舐めるように見る女性に怖さを感じるのとまったく同じです。

 私は毛糸編みにも凝ったことがあり、学生時代に一心不乱に編んでいたら、一段だけ編ませて~という人がいて、編ませてあげました。後日その人も編んでいたので私にも編ませてと言ったらば、「毛糸を編むのは、共同ではできない。一段でも別の人が編むとその一段だけが緩んだり逆に縮んだりするからだめ」 と、したり顔で説教してきたことがあります。思い出すだけで腹が立つけれど、それで絶交するにはあまりに大人げないし、それ以来、人前で時間待ちで毛糸を編むのもやめました。

 こうして書くと私はつくづくインドア派な人間ですね。そんな狭い範囲でもイラクサを生やしてしまう私っていったいなんでしょうか……お粗末様でした。


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