第十一話・介護認定の話
介護制度は有り難いです。医療保険制度についてはいろいろあるようですが、私はこの国に生まれてよかったと思っています。亡父は脳梗塞後遺症による全身麻痺、胃瘻、おむつ、糖尿のため要介護五の状態で亡くなりましたが高額の医療費がかかってもなんとかできました。
ただ入院中は一人部屋だといけないので、差額ベッド代がすごいことになりました。これで家計が切迫したのは残念ですが、それは仕方がありません。
父の死後、一人暮らしを満喫していた母も倒れ、一時は要介護四でした。母は入院手術リハビリをこなし、再度介護認定を受ける段になりました。介護認定は認定員にみていただくのですが、母はリハビリの成果を見せるものと受け止めて張り切りました。実際、普段は杖がないと歩けないのに、杖なしでも大丈夫としゃべりまくりました。声だけは元気。いつもは杖にすがって歩くのに杖なしで歩く。二、三歩にすぎなかったが初めて見た。認定員はそれを見て歩けますねと。母、満足そうに笑う。リハビリの成果が出ていると私も嬉しかったが、このハイテンションは一体なにか。案の定、母は認定員が帰った後ぐったりして、しばらく頭があがらなかった。でも「どう、うまくやったでしょ」 と私に満足げに息を切らしながら言うので「あっ、何かのテストと間違えていたな」 とは思いました。
結果は約一か月後の通知で判明。要介護四から要支援もつかない「ゼロ」 になりました。認知症の診断済み、トイレ失敗あるため紙おむつ使用、普段は歩行器使用中なのにこれは非常に珍しいケースだといえます。
……認定のためにわざわざ施設内の病床にきてくださった介護認定課の若い女性は感じがよかったのですが、何が悪かったのだろうかと今でも思っています。母は引き算もできず、三つの品物の名前も言えず、己の年令も間違えて言ったのに。施設なのにここは病院で入院中ですと言ったのに。あとで家族聞き取りでも見当識障害ありで困っていると私も施設の人も口添えしたのに。薬の管理も自分ではできず、放っておくと鎮痛剤を飲み過ぎて胃が痛いとひっくり返るのに。
ケアマネージャーも「えっ、介護なし? ゼロってうそだろ」 と驚き、再度申請してやり直してもらいました。結果「要介護一」 となり私も納得しました。かなりのレアケースだと今でも思っています。
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それがきっかけになり、私は介護認定について時間のある時に調べ物をしました。コレ、かなりグレーのところもありますね。
介護保険サービスを少ない自己負担や年金金額内で受けられるといっても、上限がある。その金額を超えると、オーバーした費用は全額自己負担です。が、本人が在宅か、施設か、また都道府県と収入によって変わってくる。たくさんの介護保険を使いたい人は介護度が上がる方を喜ぶ人がいます。
以下は介護判定の大まかな基準です。介護専門のページから抜粋しました。◎印をつけたのは私です。面倒な人はこの項を飛ばし読みしてください。
◆要支援1
・日常生活において必要とする掃除や着替えなどの行為に何らかの助け(見守りや介助)を必要とする
・立ち上がる時や片足で立つ時に何らかの助けを必要とする
・トイレ(排泄行為)や食事を人の助けなしに自分でおこなうことができる
◆要支援2
・日常生活において必要とする掃除や着替えなどの行為に何らかの助け(見守りや介助)を必要とする
・立ち上がる時や片足で立つ時に何らかの助けを必要とする
・トイレ(排泄行為)や食事を人の助けなしに自分でおこなうことができる
◎移動するために歩く時や両足で立つ際に何らかの助けを必要とする
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◆要介護1
・日常生活において必要とする掃除や着替えなどの行為に何らかの助け(見守りや介助)を必要とする
・立ち上がる時や片足で立つ時に何らかの助けを必要とする
・移動するために歩く時や両足で立つ際に何らかの助けを必要とする
・トイレ(排泄行為)や食事をほとんど自分でおこなうことができる
◎混乱したり物事が理解できないことがある
◆要介護2
・日常生活において必要とする掃除や着替えなどの行為に何らかの助け(見守りや介助)を必要とする
・立ち上がる時や片足で立つ時に何らかの助けを必要とする
・移動するために歩く時や両足で立つ際に何らかの助けを必要とする
◎トイレ(排泄行為)や食事をする際に何らかの助け(見守りや介助)を必要とする
◎混乱したり物事が理解できないことがある
◆要介護3
◎日常生活において必要とする掃除や着替えなどの行為が自分1人でできない
◎立ち上がったり、片足で立ったりする行為を自分1人でできない
◎自分1人で歩く、両足で立つといったような移動するための行為ができない
◎トイレ(排泄行為)を1人でほとんどできない
◎◎いくつかの不安行動や、物事の理解への低下が見られる
◆要介護4
◎◎日常生活において必要とする掃除や着替えなどの行為がほとんどできない
◎◎立ち上がったり、片足で立ったりする行為がほとんどできない
◎◎歩く、両足で立つといったような移動するための行為がほとんどできない
◎◎トイレ(排泄行為)がほとんどできない
◎◎◎ 常に不安行動が見られかつ全体的に物事の理解への低下が著しい
◆要介護5
◎◎◎ 日常生活において必要とする掃除や着替えなどの行為ができない
◎◎◎ 立ち上がったり、片足で立ったりする行為ができない
◎◎◎ 歩く、両足で立つといったような移動するための行為ができない
◎◎◎ トイレ(排泄行為)ができない
◎◎◎ 常に不安行動が見られ、かつ物事の理解への低下が著しい
入居後の介護サービス費は料金が定額となっているので、どれだけサービスを受けても費用は変わりません。ただ、介護付き有料老人ホームなどで、より手厚い人員体制をとっている施設ではその分「上乗せ介護費」として加算されることがあるので、入所前のチェックが必要です。お金のトラブルも聞きますので親のその後が心配な人は事前調査をすべきですね。絶対に人任せにしないことです。
ついでに要支援・要介護度別に見た介護保険サービス料の自己負担額です。都道府県によって違うし、かつ改定も頻繁にありますので目安だとおもってください。以下は有料老人ホームの負担金額一覧です。単位数で表すのですが、一単位十円でも地域によって違う。非常にわかりにくいので、そういうのは飛ばしています。以下は某県の有料介護付き老人ホームのもの、令和二年四月の時点のものです。点数計算は面倒なので飛ばしています。ここに転載したのは本当に大雑把な計算上のものです。
要支援1 5,430円 要支援2 9,300円
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要介護1 1万6,080円 要介護2 1万8,060円
要介護3 2万130円 要介護4 2万2,050円
要介護5 2万4,120円
介護度の数字が大きいほど介護に人手がかかるので負担金額もあがります。介護度があがるほど、たくさん介護保険が使える仕組みです。そうやって普通の一般家庭でも介護保険を使ってもやっていけるような仕組みを作り上げているわけです。それで完璧でもないけれど、厚生労働省はよくやっていると思います。
悪質な介護施設はその制度をたくさん使って儲けたいがために、紙おむつの必要でもない入居者に、介護認定にあたり、因果を含めて? わざと紙おむつをはかせたり、認知症を装えと指示する。本物かつ重度の認知症は何をやってもわからないので、不必要な点滴など医療行為も看護師にさせておいて認定に臨ませる。これはある介護職員が暴露したものですが、さほどニュースになりませんでした。
亡父のいた施設でも介護職員は仕事がきつかったのか、次々にやめていかれ、共同使用のお手洗いはいつも便で汚れた状況だったのを思い出す。一度も会っていない理事長とその幹部は豪華なパンフレットにはけばけばしい化粧と衣装で着飾ってポーズを取っている画像があって「所詮、ボランティアでないかつ世間体の良い金儲け施設だ」 と感じました。介護認定は利用者の家計を考えた良い制度だがそれを悪用して儲けようとする人々の存在がある。社会の末端でひっそりと生きている私でもイラクサを見た。




