第一話・はじめに
第一話・はじめに
まず改めてイラクサの話をしますが、ハーブ名の「ネトル」 というほうが通じるかもしれません。外来種で花粉症や泌尿器科系のサプリメントとして利用されています。日本で見かける山菜としてのイラクサは「ミヤマイラクサ」 と呼ばれ、西欧のそれとは属性が違うので別種です。つまり、アンデルセン童話に出てくるイラクサは日本のそれとは違う……植物学の分類はややこしいです。
さてこのイラクサを触って皮膚を刺激された場合に対抗するものが存在しています。その名も「ドッグリーフ」 。日本語直訳で「犬の葉」 ですね。これも外来種で西欧の野生のイラクサのそばには必ず生えているそうです。日本では属性が違うこともあり、それはない。
西欧ではイラクサでちくちくしたら、そばにあるというドッグリーフを探す。その葉を取って揉んで患部にこすりつけて治す……神の配慮かと思うぐらいよくできた話です。
ドッグリーフ自体は日本にもある。ギシギシといわれ、にきびなどにも民間療法として使われています。
イラクサはさわるとちくちくするので嫌がられる。イラクサだって生きているので種の繁栄のために傷つけようとする人間や動物から防御のためにとげを生やす。そこにイラクサ自身の他の動植物からの防衛と自然との共生がある。西欧ではイラクサのおかげで生きている生物のために、全部引っこ抜くな、そしてドッグリーフも引っこ抜くなと言われている。私はそういう話が好き。やはりこの世界は持ちつ持たれつ。人間のしたことすることで、いちいち悩んでいる暇があったら、そういうのに詳しくなりたいものです。
でも、そうはいかないのが私。愚かな私にふさわしい親戚の悪事を、神は私にだけ暴露したもう。それで今後私がどう行動するか、見たもうか……叔母Jの件で怒るのも、あきらめの境地に至り、どうせこういう人生なんだろうなと最近割り切れるようになりました。気落ちして何もできないときは、バレエの動画だけを一日眺めています。人生の最終段階でこれってどうよと思うけれど、それはそれでなんとか生きています。少なくとも我が子が成人するまでは頑張るつもり。
また小説やエッセイですが書くことで私自身が変わってきました。空想するものを文字に起こすのもお金もかかりませんし、実に私らしい人生です。
本エッセイもイラクサを盛大に生やしますが、ドッグリーフを題名につけたことで、イラクサの火消し役に添えました。百話までいけば、今より心穏やかに暮らしていることを夢見ています。
それでは第二話から開始です。よろしくお願いします。