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プロローグ

 テラセルド、2438年、初めてのフルダイブ型ゲームとして誕生した仮想世界オンラインRPG。それは世界を轟かせて、大企業にまで上り詰めた会社が出したものだった。そのゲームも終わりを告げようとしていたが、それでも人気ナンバーワンの座を、どのゲームにも奪われずにいた。

 その仮想世界で終わりを見ようとしたプレイヤー達もが、強制ログアウト直前に何十人かが暗黒へと飲まれていった。それはまるで次元の中に飲み込まれたかのように。




 巨大な山、しかし、巨大なでは収まり切れないような雪山。ごうごうという音と共に吹雪く風と雪、しとしとと降るのではない、終わることも、溶けることも無いだろうと思うほど強く吹き付け、その風は高く積もった雪も巻き上げる、その巨大な雪山を覆うほどの黒い雪雲は、その山だけを覆い光のほとんどを遮っていた。巨大な大小違った様々な雪溜まり、それもどこか丸みを帯びたような形だった。


 その山頂に平べったい黒い穴、それも最後の力を振り絞るかのように巨大になっていく平べったい黒い穴から何人か、ちゃんと数えるなら十人くらいがそこから出てきた。先頭には銀色のスーツをその上には闇の黒いコートのようなものを着た仮面男であった。


「ここは何処でしょうか?」


「私に聞かれても知らん」


 場所を聞いた仮面男はレイン、原初の魔王レインで答えたのは荊棘の魔王サラと呼ばれている十連星の二人であった。その他にもテラセルドで名を上げた魔王達が出て来る。

 その一人がレインに向かって突進――彼らからすれば少し速い程度だが――してきていた。その魔王は暗黒の魔王ロンであった。魔王の中でもレインに敬愛の念を異常に抱いている少年だ。

 そしてレインに飛びつくように抱きついた。


「先輩!俺とまた会えましたね。うるさいゴミがたくさん居ますが」


「テメェ誰がゴミだ?」


 その言葉に反応した男は赤髪、赤目で炎をモチーフにしたような漢だった。首からは紅の宝珠を五個ほど繋げられたアイテムをネックレスのようにかけていた。服も赤をモチーフにしており、胸元の服が開いていたがそこから見えたのは鍛えられた厚い胸板だった。

 その男こそ進撃の魔王ラースだった。


「俺に話しかけんな……カスがッ」


 そうロンが小さな声で呟いた。

 暗黒の魔王ロンはラースと正反対の性格だった。ラースが漢のような熱い気持ち、気合で闘いに挑めば負けることも倒れることもないと思っているが、ロンは計画的に裏から付けて挑めば負けることも倒されることもないと思っていた。だからこそ、二人は二人が嫌いなのだ。


 その二人の間を吹き荒れていた風が通る。


 ロンの青い髪は顔の右反面を隠すように少し長く伸ばしており、いつもは右目が隠れている。風が通った瞬間に前髪が上がり両目が見えた時、ラースに殺気を飛ばした。


「あッ?調子に乗んなよ?」


「教育なら、私も手伝うわ。ゴミと言われて黙ってるほど私は優しくはないわよ」


「我も許せんな」 


 その瞬間、レイン以外の九人の魔王が黒いオーラを纏う。それは魔王達の全体を覆い人の形をした別の何かにも見えてきた。目は爛々と黄金色に輝いて身体は黒いオーラで全体が見えなくなっており、荊棘の魔王が抜いたレイピアにもそのオーラが伝わっていた。

 ピリピリと空気が震えているような気さえするような殺気がこの場を立ち込めていた。その殺気を交わっているのが魔王達であるからこそ出せるのだろう。


「やめませんか?先客も居るようですし」


 その空気を壊したのも十連星が一人の魔王であった。その言葉だけで先程までの空気が嘘だったかのように消えていく。台風が来て次の日起きたらいなくなった時のように。いや、もしかしたら台風の目に入ったのかもしれない。


 魔王達が立っていた場所がゴゴゴゴと大きな音を立てながら揺れだした。辺りを見渡すまでもなく降り積もった雪に亀裂が入る。それは魔王達を囲んでいるようにあった雪溜まりからできているようにも見える。いや、それが正解だった。


「「「「グゥオォォォォォォォ」」」」


 そこから出て来たのは大小違った大きさの(ドラゴン)達だった。小と言ってもその大きさは人間みたいなゴミでは届くことすら叶わないだろう。それが数体、いや、数十体はいるだろう(ドラゴン)が眠りから覚める。ここまでの数はテラセルドでも見たことがなかった。


 それは最低でもレベルが六十を超えており、テラセルドでも見たこともないような(ドラゴン)から見たことのあるドラゴンもいた。そんなドラゴン達もいつのまにか現れ、自分達の縄張りに殺気を振り撒き、強大な魔力残滓を作り出した魔王達を警戒していた。

 その姿にはテラセルドの設定にあった気高く、プライドの高いモンスターとは似てもつかないような姿、しかしそれほどまでに目の前にいる魔王達に恐れていたのだろう。


「なかなか攻めて来ませんね」


「僕達を怖がっているのでしょうか?」


「眠……たい……のに」


「…………」


 ここまで待たされた戦い方をするのは魔王達にとっても今までなかったような気さえする。魔王達は激しく、台風が暴れてあっという間に過ぎていくような、そんな激戦ばかりをしていた。こんな睨み合いに新鮮さを感じていた。

 だが、それは魔王達だけであった。目の前にいるドラゴン達はどうしたら勝てるのかを必死に考えていた。その膨大な魔力が少なく感じ、剛岩鋼オリハルコン、中には魔素剛鋼アダマンタイトにも到達した鱗は布のように感じ、鍛えずとも得られる屈強な肉体が、筋肉が、干し肉のように感じた。


 魔王一人一人の行動を見逃さないようにその目は見開いていた。いつでも全力を出せるようにと戦闘態勢を万全に整えていた。しかしそれでも足りなかった。炎龍王フレイム・ドラゴンロード地獄炎龍(ヘルフレイム・ドラゴン氷の(アイス・)古龍エンシェントドラゴンなどのいる中で攻撃を待つことしか出来ないドラゴン達。


「はぁ、こちらから攻撃しますか」


「十連星のあの技、スキルで片付けましょ。その方が楽でいいわ」


「僕もそれがいいですね。話したいこともありますし」


「……ねむ」


「あぁ、先輩、俺もそれがいいな」


「我の星が降るか」


 巨大な黒雲が覆っている光すらないこの山に合計十個の光、隕石が落ちてきた。〈十降星〉、魔王が、それも十連星にだけ許せれた“日に一度だけ放てる”ことができる特別な異能スキル。そしてこれは単なる大きな岩が落ちてくる隕石ではなく、巨大な黄金色に輝く光の玉と言った方が近いだろう。

 それがだんだんと近づいてくる。そしてドラゴン達の生命の終わりも近づいてきていた。光の玉が大地――振り詰まった雪だが――に着弾する。その一帯を眩い巨大な光の大爆発が山にいた魔王達を囲むように起きる。そしてドラゴン達はそれに直撃したため叫び声にもならない雄たけびを上げて力が抜けたように崩れ落ちる。

 ドラゴン達は硬い鱗で自分の身体の原型を保てたもののその一撃は強く即死だった。それと同時に全員にメッセージが送られる。


「流石は龍ですね。直撃しても粉々になりませんでしたか」


「おかしくない?死骸が残ってるわよ?」


「僕も思ったんですがここは異世界じゃないですか?」


「我が前にひれ伏すがいいッ!」


「手応えねぇな」


「先輩、俺も気になったんですがヤバくないですか?」


 バラバラに喋っているようにも見えているかもしれないが彼らはこの場所、それも小さなヒントで自分達に何が起きているのかを考えていた。そして、予測できたものがいくつかあった。

 互いが魔王達を見て一人で動くのは良くないなと判断した。今、彼らがすべきことは次にどのように動くか、この雪の中でバラバラにならないように一定距離を保つことである。


「〈魔物探知(モンスター・ソナー)〉」


 魔法陣が出ないと言われてる種類の魔法で何も起こてないような気もするが、超音波のように雪の中、空の上空、レイン達の周りを波紋のように広がっていく。そして、何の魔物が居ないことが分かると仲間、魔王達に伝える。


「……モンスターはこの辺りにはもう居ませんね。一度ここで星連会でも開いて今後の方針を決めてから動くとしませんか?」


「先輩、テントかなんかを持ってるんですか?」


「今出しますよ」


 レインがそう言ってアイテムボックスから取り出したのはアイテム、それも課金しなければ取れない〈皇族の戦場テント〉と呼ばれるアイテムだ。何もなかった雪の上に白い、潔白のような美しい布のテントが現れる。そのテントは入り口から光が漏れ出していた。周りには何の装飾もされておらず質素にも見えるが、その布の価値は鋼糸をふんだんに使った高いものだった。


「寒いですし、早く中へ入りましょう」


「そうね。私も姉さんと同じ意見よ」


「僕の装備も防寒機能があまり無いですからね」


「気合いが足んねぇだけだろ」


 レイン達十人がテントに入ると周りは豪華な品がいくつか置いてあり、光は上に浮いてある〈浮遊シャンデリア〉が出していた。そして真ん中には何もないところから円形状のテーブルと王座のようなものをモチーフにしたような椅子が十個現れる。


「どうですか?」


「我が座るに値する椅子だな」


「見た目以上に広いですわね」


「姉さん、その双剣しまって欲しいんだけど」


 隻眼の魔王が一番にその椅子に座る。その次にいた殺戮の魔王が辺りを見ながら座ると「いつまでも出してある剣を片ずけて」と言いながら荊棘の魔王が座る。普通なら出した本人、原初の魔王が一番に座るのが先だろうが基本魔王達は遠慮という言葉を知らない。

 全員が座り終えると残った席にレインが座る。いつのまにか全員の視線がレインへと向けられていた。


「さて、始めますか」


「この世界を見て回りたいですね。先輩と一緒に」


「おいおい。そんなの後にしてくれねぇか」


「僕もその通りだと思うんですが、そこの二人が寝てたり、喋らないのはいつものことですが、あなたが喋らないのはどうしてですか?」


「え?何……それルルンに言ってるわけ?」


「私も山に来た時から喋らない理由を聞きたいわ」


「そうね。話次第では斬ってもいいかしら?」


「我の力で消し炭にしてもいいんだぞ?」


 昏睡の魔王、不動の魔王は寝ることと、喋らないことはいつものことなのだ。しかし調教の魔王ルルンはいつもは普通に喋っているのだ。自由といってもいつもしてることをしないのは他の魔王達からしたら不満を持つ者もいるのだ。そして事と次第によってはこのテントの中で一戦が繰り広げられるかもしれないのだ。

 ルルンはそれを無視するように喋り出す。


「だって、ルルンがその場に居るだけでもこっちに来るのに〜喋ったら龍がルルン目掛けて来るかもしれないじゃん?」


 ルルンにガミガミと文句を言っていた魔王達は手を頭につけてため息を吐く。『そう言えばこんな性格だったな』と思い、こいつに聞いたのがバカだったと後悔する。そしてレイン、原初の魔王に顔を向ける。仮面をつけてその顔の表情は見えないが、彼がアイドルを現実のものへと導き、この性格に拍車をかけた張本人だ。


「お、そう言えば俺はレベルの上限が超えて異能(スキル)〈限界突破〉ってのを覚えたぜ」


 それを聞いた他の十連星、魔王達は進撃に呆れた目で進撃を睨みつける。その異能スキルを持っているのは自分だけかと思っていた魔王も他の魔王の反応を見て、隠さなくても良いかと話し出した。その話題に口火を切ったのは荊棘だった。


「そのくらい分かるわよ。多分全員持ってるんじゃないの?」


「俺も持ってますね。……龍を倒したからでしょうか?」


「僕もありますし、別にもうこの会議意味なくありませんか?レインさん」


 その言葉を聞いたら何人かが頷き同意を示した。この会議はこの世界で何が起こるかわからないためだが、龍を倒して力が奥底から湧き出るような感覚があるため何が起きても心配ないと思えているのだろう。しかしその考えはもう曲げれないだろうと思ったレインは。


「互いの邪魔をしない、何かこの世界で重要なことが有れば共有し合うを条件にバラバラで行動しますか」


「僕は賛成ですね」


「分かったわ」


「我も良いぞ」


「先輩がそう言うなら」


「了解したわ」


「分かったよ〜」


「良いぜ」


 残りの二人も聞いていたのだろう頷くと立ち上がる。話し合いが終わったためテントから出ようとする。レインは全員が出たことを確認すると雪上に設置していたテントをアイテムボックスの中に入れる。回数制限もないためレインからすればいつでも使えるアイテムなのだが、ゲーム時代のプレイヤーはあまり重要視しなかったアイテムなのだ。


「俺も行きますか」


 他の魔王達は先にこの山を出て行っていた。この世界がどんな場所なのかを見て見たいという気持ちから本気を出して行ったのだろう所々クレーターに近いものがあった。レインもレベルが百二十七にまで上がっており、どこまで試せるのかを楽しみにしているくらいだ、魔王達の精神はどこかへ飛んで行ったのだろうかと思うくらい全員が清々しい顔をしてこの山から出て行ったのだ。

 そこから最後の一人が飛びだって行った。




自由組合、冒険者ギルドとも呼ばれている木でできた巨大な建物。巨大と言っても三階建の建築になっており大きくはないがこの世界からすれば巨大と言えるのだが。

 一階は冒険者が受付をしたり、依頼報告にしにくる場所で殺風景という言葉が似合いそうな部屋である。

 二階がキルドマスターが使うための部屋に会議室などが置かれている部屋。

 三階はここの職員達が暮らせるように小さな小部屋が沢山ある。

 そして今は二階の会議室で話が行われていた。


「今日、遠視のスキルを持つ門兵が神龍山で数個程の星が降ったと言っていた。初めは嘘かと思ったら後でDランク冒険者が見たと言ったそうだ」


 彼は屈強な身体つきをしており歴戦の戦士のようだが、上座に座っているにはその椅子に似合わない質素な服を着ており、顔などにも傷がありかなりの手練れのように見える。その言葉通り彼は元Aランク冒険者でSランク冒険者になり損ねた者、しかしその実力を買われ今の地位ギルドマスターについていた。


「ここからは私が話します。これからはその原因を星降りと言います。その星降りは神龍山の山頂に当たったと言っていたのでSランク冒険者を二チームを呼びました、着き次第その星降りについて調べてくれます。その間は神龍山に近づかないように冒険者達に注意を呼びかけてください」


「「「「分かりました」」」」


 それを聞いた職員達はそれを同僚、冒険者に伝えるために動き出した。“どんな時でも冷静に対処する”偉大なるグランドマスターが残した言葉で、それがこのギルドという組織を大きくしていった言葉だ。

 しかしその星降りのあった神龍山は豪魔地帯と言われて恐れられ、そしてここから何百キロも離れているため気付く者はあまりいなかったのが幸いだろう。


「あいつらはどうした?」


「はい。今は依頼達成したのでこのギルドに帰って来ているとの報告がありました」


「そうか……俺の右脚が義足じゃなけりゃ行ったんだがな」


 男はポンと手で脚を軽く叩く、膝からしたが木の棒のような義足であるため生活する分には問題ないようにしてあるが男はため息をついた。

葉丸小話

 この小説を読んでくれてありがとうございます!!

 これからも投稿していくつもりなので、見ていただければありがたいです!

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