序章 特殊潜在を行使する者
人間は自身にリミッターを設けている。
こんな話を聞いたことがあるだろうか。
肉体、精神の限界を超えてしまわないように制限を設けている。
その制限の中に超能力も存在する。
即ち、人間は潜在的に超能力を持ち、超能力を行使することが可能である。
これは人間の限界を超えた人間達の物語。
超能力を行使する者達の物語。
二○○○年……世界の人々は突然、超能力を得た。
否。
超能力を、人間の限界を超えた力を目覚めさせたのだ。
しかし、その力は人間の肉体を、精神を崩壊させた。
そこで人間は崩壊を防ぐ方法を考案した。
特殊潜在抑制機。
通称『LS』はリミッターを超えた際に生じるあらゆる崩壊を防ぐ力を持っている。
即ち、人間は超能力の顕現、LSの開発により本来の力を発揮することができるようになったのだ。
力を目覚めさせた人々はその超能力を受け入れ、超能力を持つ者を『有潜在者』。持たない者を『無潜在者』と呼んだ。
人間は超能力を様々なことに役立てた。
……それはいつしか当たり前のものになっていた。
その利便性から人は超能力への知識を、情報を求めた。
それ故、国規模での情報争奪戦が勃発した。
二〇一四年、大戦開始。
二〇一五年、大戦終結。
悲しい戦争の歴史だ。
涙と血が流れ、大地と海を包んだ。
しかし、あまりにも短い大戦に誰もが唖然とした。
二〇二七年。
薄暗い森の中。
「目標アルファ捕捉」
「こちらも視認した」
ギリースーツを着た部隊が一人の少年に自動小銃の銃口を向ける。
少年は右腕を突き出し、超能力を発動する。
脳神経から人間本来の力を引き出す。
その命令はたちまち少年の肉体を、精神を破壊しつくす。
――はずだった。
全ての崩壊は少年の耳にイヤーカフのように掛かる特殊潜在抑制機……通称、LSがその全てを抑え込み、何の異常もなく少年は能力を行使する。
「撃て」
サプレッサーで抑制された射撃音が連続して響く。
『奇跡』の力が目覚める。
銃弾は少年の直前で動きを止めた。
宙に浮き、その動きを完全に停止している。空間が固定されたが如く微動すらしない。
「……何っ?」
「どういうことだ?」
少年は肩で呼吸をし、苦しそうに胸を抑える。
「……これで最後…………だから」
少年の右腕は天を指し、振り下ろされた。
「散れ」
その瞬間、部隊の全員は上半身と下半身が分裂し吹き飛んだ。
ありとあらゆる穴から血を吹き出し、飛び散らせた。
「レナ……」
少年は想う人の名を呼び、瞳を閉じた。
しばらくの間、動きは止まり風の音が響いた。
血の匂いが濃厚に鼻を刺激する。
少年はその匂いを無視し、意識を周りの空間の音だけに集中させる。
「……見つけた」
少年は大きく口角を上げ、狂気を露わにした。
少年の求めに応じ、LSがその力の発動を難なく行わせる。
「……ディザスター」
木々の中に隠れた大規模な軍事基地。
その基地は一瞬で炎に包まれた。
響く警報。
飛び交う怒号。
逃げ出す兵士たちは炎に囲まれ身動きが取れない。
「……終わった」
とある兵士の言葉は最期を意味する。
荒れ狂う火柱。
黒く染まる空に瞬く稲妻。
揺れる大地。
二〇一五年の大戦以来の大規模な自然現象の行使、そしてそれによる破壊。
乾いた破裂音が響き、数回爆発が起こる。
弾薬庫にでも引火したのだろう。
人々の狂声は誰に届くわけでもなく、儚く消える。
十二歳の少年、南雲トオルは大戦のしこりを全て駆逐し終え、天を仰ぎながら涙を流すのであった。
時は過ぎ
二○三○年。
トオルは自宅の敷地内にある小屋にいた。
薄暗い空間で集中力を高める。
呼吸のリズムを一定にする……そして息を止め、右手で耳に触れる。
正確には耳に取り付けられたLSを起動する。
脳からの命令。それに伴う崩壊とそれを引き受けるLS。
――バチッ――バチバチッ!
トオルの右腕に電気が纏う。その光は青白く、暗闇に光を与える。
右腕を正面に突き出し叫ぶ。
「レイン!」
その言葉をトリガーに電気が空間を高速で飛翔する。
その先には鉄板のような、大きな鉄の盾があった。
――バチィッ!
鼓膜を破らんとするその鋭い音は何度も反響し、やがて消滅した。
空間は再び暗闇を取り戻す。
「……よし、戻ってきたな」
満足そうに頷き小屋を出る。
風がそっとトオルの頬を撫でた。
四月も後半になり暖かくなってきたが、朝はまだ冷える。
右腕を数秒見つめ、自宅へと向かう。
南雲トオルは自身の能力に導かれ、その運命を行使し続ける。
こんにちは。下野枯葉です。
今回の作品は『超能力』について書いてみたものです。
超能力……いいですね。ほしいです。
そんな思いで書いてみました。
様々な設定を練りに練って文にしてみましたが……。
纏めるの難しいですね。
まぁそこは頑張って纏めていこうと思います。
では今回はこの辺で、
最後に、
金髪幼女は最強です。