実験
連続投稿です。未読の方は前話からお願いします。
私が紙に書いた『雷』から文字通り雷が発生する。
15cm位の高さから落ちた雷が机の中央を黒く焦がした。
これは手品でも魔法でもなく、拾った綺麗な石を粉にして水に溶いたモノで紙に文字を書くと石の持つ力を発揮できるというタネも仕掛けもある現象である。
今回は石を溶かす量を少量にしているけど濃度を濃くしたらもっと強い力を使うことが出来ると予想している。
ガラスの瓶に入れたこのカラフルな石達。
RPGとかファンタジー小説でお約束の魔石とかオーブとかマテ○アと言わるヤツだ、コレ。
とりあえず今の所、魔石と呼んでおこう。
(・・・非常にまずいね、これは。)
ホリファでは帝王以外が世界を構成する『力』を使うことが出来ない。
帝王は創世の神より選ばれた者であり、世界を安定させるために『力』を行使することが出来る。
でもコノ石があれば何時でも何処でも誰でも『力』を使うことが出来てしまう。
しかも帝王は自らが司る元素以外の力を使う事が出来ないが、石ならば種類をそろえれば様々な効果を発揮することが出来る。
さっきの雷は、炎の赤い石と風の緑の石を溶かした水で発生出来た。
私がプレイしていたホリファには魔石は登場しなかったし、存在について触れる事もなかったのだけど、目の前に確かに魔石は現存している。
こういう場合、これが世の中に出回れば『帝王』による抑止力が弱まり、争いが勃発するのがセオリーだ。
キラキラな乙女ゲームを血生臭くするわけにはいかない、それに私は戦略ゲームは苦手だ。
戦争ロマンスの悲恋も物語の上では嫌いじゃないが、現実なら起こらないでいて欲しい。
平和万歳、何事もない人生最高。
「よし、片づけよう。」
今なら誰にも知られてない、証拠隠滅してしまえば問題は起こらない。
そう、私だけの秘密・・・何だかイカガワシイ響きにドキドキしちゃう。
石を元の場所に戻し、使った筆や紙、器も処分した頃には日も暮れていた。
緊張から解放された私は、ベッドに潜ると直ぐに眠りに落ちて行った。