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作業中

「これでいいか?」

火の宮の一室でキカが魔石の入った器を椿に見せた。

椿はこの石を「マセキ」と言うがキカの目には普通の石と大差なく見える。

「アー・・・ツブス。」

首を横に振る椿の返答にキカは粉砕棒を動かす手を再開する。

神殿は椿を闇の者だと疑っているが、キカの椿に対する印象は彩芽と同じ国の生まれだというだけの平凡な女だった。

それは神殿より身柄を引き受け炎帝の宮で数日過ごさせてもそれ変わらず、少なからず闇の者と繋がっているのではと危惧していたキカが拍子抜けするほどだった。

「どうだ?」

「・・・ハイ。」

再び見せた器の中身に椿は首を縦に振る。

「次は?」

「・・・・?」

「次だ、つぎ。」

「ツ、ギ?・・!」

身振りを交えてどうにか椿に意味が伝わる。

椿は一廻り小さな器に粉状の魔石を極少量移すと水差しに入っている水を入れた。

「水をいれるのか・・・ああ、水、入れる?」

「ハイ、ミズ、イレル。」

「混ぜる?」

「ハイ、マゼル。」

椿との対話は短文が効率的だと気付いたキカは短い単語と身振りで問う。

キカの言葉を椿はオウム返しに発音する。

その後に雑に束ねられた小さな紙束に記録する椿の姿にキカは小さく笑みを浮かべた。

石の粉を水に溶いた椿はそれを筆に付け、先ほどの記録帳から1枚紙を取ると筆で模様を描き始める。

模様を描き終えた瞬間、紙から小さな火が発生し紙が燃えた。

「これがマセキの力か・・・。」

帝王しか使えないはずの世界を構成する力が魔石によって行使出来る事を目の当たりにしてキカは驚きを隠せなかった。

しかもその魔石が自身の宮を含む神殿内より入手できることも衝撃の1つだった。

「マセキノ?」

「マセキの力、だ。」

「マセキノチカラダ。」

魔石を溶いた水の入った器を示す椿にキカはこの状況を見たら闇の者だと疑われても致し方ないと思う。

この世界で少し珍しい黒髪と黒い瞳も闇を彷彿とさせた可能性もありえる。

「他の帝王あいつらにも見せる算段を付けておいて正解だったな。それにしても――。」

魔石の作業自体は大したことはなかったのだが、意思疎通に時間をとられ窓からは茜色の日が差し込んでいる。

言語学習をさせていたと神官より報告を受けているが、今日の事を振り返ると「話す」次元ではない、赤子の方がまだ話せるのではなかろうか。

「ツバキ、手加減なく教えてやるから覚悟しておけよ。」

「ッ!?」

言葉は伝わらずとも不穏な空気は伝わったのか椿は顔を引きつらせキカを見上げた。

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