099 離別
ふぅはははははははー! 我、ついに人間の言語を覚えたナリー! ってーか、言語一種類のみか。
国で言語が違ったりはしないのな。統一言語?
バベルの塔は建っていないのか。それとも神が寛容だったのか?
もしくは、単純に言語が分かれる理由がなかったとか。
それ以前に人間以外も言語的には同じらしいし。
うーん、まあよくわかんないけど、スキル提供してもらってるし神様もいるっぽい。
つまり神様がどうにかしているのでしょう、多分。ぶっちゃけ考えても仕方ねー話ですね。
そんでそんで、あの人、あの女性、吸血鬼の女性なんだけれども。
「スライムさん、こんなところにいたんですか」
あ、クルシェさん。ちーっす。
「ちーっす、じゃないです……探したんですよ?」
いやいや、別にいいやんどこにいてもさ。別に君に問題あるわけじゃないやろ。
「そうですけど……」
あの人の名前はクルシェと言うらしい。
元領主の娘、現在はこの街の領主となった人間を裏で操る影の支配者。
まあ、元から高飛車ってわけでもない善人気質みたいだし支配者っちゅーても悪い意味での支配者じゃない。
単に彼女が生き残るためだけに、街をより良く悪いものを排するための支配。
まあやりすぎはあかんのだけどね。悪法も……はちょっと用法が違うか。
ただ、まあ、光だけでいい社会を築けるかってーとそうじゃないからねえ。
清濁併せ呑む、とまではいかなくとも、ある程度息抜きというか余裕と言うか、許容する部分は作らんとあかん。
まあそういうのも支配者、君主としてどこまで緩めてどこまで締め付けるか学ぶべきなんだろうけど。
俺にゃーわからんです。まあ支配者となったクルシェさんがこれから頑張ってやっていくでしょう。
仮に吸血鬼の存在がばれても逃げればえーねん。
まあ、昼間はやばいけど、地下はいまだにばれてないし。
あー、でもいずればれる危険はあるのかな。一応逃げ道作っておくように言った方がいいかね。
いや、そこまで面倒を見るのも違うかもしれん。
こちらも彼女に気を使うが、彼女のことは彼女が対処するべき。
「……大丈夫ですか?」
うん、問題ないよ。ちょっと考え事。
「そうですか。それはともかく……戻りましょう。いつまでも外にいると誰かに見つかるかもしれませんよ」
そうだね。とはいっても、中は中で不安あるけど。
「私の部屋にいれば大丈夫です。誰も入らないよう、入れないようにしていますから」
ううむ、そうかね。なんか自分この人に閉じ込められている気がするんだよなー。
まあ、ヤンではないっぽいけど。
過保護っちゅーか、妙に尊敬、敬愛されていると言うか……感覚的な話なんだけども。
しっかし、このままずっと一緒ってのはこの人の成長にはつながらん気がするし。
なんか自分的にも違う感じ。
それに、外に出ている理由もな。
こう、妙に湧き上がる、ここじゃなくてもっと別の場所に行けと言う本能的な。
うーん、まあ何にせよ、また旅に出るつもりなんだけど……どう説明しよう。
絶対引きとめられるのよな。
「……行ってらっしゃいませ。この街に帰ってくるのを、お待ちしています」
うん。帰ってこられれば帰ってくるよ。じゃあね。
別れはいつでも寂しいもんだぜ。うん、まあしかたないんだけどさ。
ってかそう思うなら一緒にいれば、って話だよね。
でも、なんか違うと言うか、あっち行けと言うかこっち来いと言うか、本能的な何かが……
最近なんか、疲れと言うか眠気と言うか、こう、たぎる力の休息が必要だと言う本能が!
いや、それって本能なの? って言いたくなる内容だけど。本能なんだよね、本能が語ってるのよ。
おめーさんちょっとどっかで冬眠しとけ。
ただし周りに何かいるとあぶねーからちゃんと安全確保しとけよ、って。
なんか具体的すぎねーです? まあ、なんかそんな感じがするので街から出るのです。
街じゃダメなの? 駄目だって。
そういうことで、クルシェさんとお別れして、私は何処か人里離れた場所に向かうのです。
でもどこがいいのかしら?
とりあえずこの街から最近は行き来の落ち着いた馬車に乗っていくのです!
吸血鬼騒動は収まったからねえ。今は普通に時計塔観光の街だな。
まあ、吸血鬼騒動の影響が残ってるけど。
今はまだ吸血鬼がいたと言うことで忌避されて観光客はあまりいない。
まあ、いずれ戻ってくるんじゃないかな。
クルシェさんが無事成長する頃には普通に観光客が来るようになっているでしょう。
それにしても、本能の言うどっかで冬眠しろって言うの、どこで冬眠しよう……
適当なところに穴を掘って眠る? いや、もうちょっとましな寝床が欲しいな。
熊とかそういうやつみたいに山に穴掘って寝るか。どっかにいい場所ないかなー。




