097 導き手と魔物人
ふう……これでラストかなあ、進化。スライムリーダー?
ボスキングエンぺカイザー、それでリーダーか。
まあある種、種の頂点と考えればいいのかなあ? わかんねーです。ま、なんでもいいか。
それよりも。気になることが一つ。いいえ、別にスライムの進化とかそういう物ではなくて。
今目の前にいる女性に関して誰か知りませんかー!
いいえ、知ってても答えようもねーでしょうけどさあ!
うーん? っていうか、あれ、この人さっきの吸血鬼の女性か。
よくよく見てたわけじゃないからなあ。ってか、さっきぶっ殺してなかったか。
そういえば突き飛ばされてきたところを頭の上ぽーんと跳んで避けたのか。
あ、そうなるとさっきの進化中の微妙な無防備時間にいたってことじゃね!? あぶねえ!
でも、向こうさんこちらに攻撃してこない、襲ってこないってことは害意はないってこと?
まあ、そうね。一応主である吸血鬼がいないから後は本人次第になるのかしら? あれ、それはそれで変か?
吸血鬼の主、主である存在を倒されたら配下は普通敵討ちとかするよね。うん、普通はするよなあ?
でも、そういえば。よくよく考えれば、あの吸血鬼が血を吸った相手だよね。
血を吸われた側なんだよね。そこまでの忠誠心、敬愛を抱いていない可能性はある?
吸われたばっかでいいように使われてたとか。
うん、ありえなくもないだろうけど……でも、なんでこの人こんなに落ち着かない感じ?
っていうか、自由になったなら逃げればいいじゃないのって思うのだけど。
いや、まあ逃げようもないか。今彼女吸血鬼だもんね。
人間との暮らしに戻るってのも無理っぽいか? ああ、もう……結局どうしようもねーじゃん?
っていうか、話す手段もないわけだし。
いや、まてよ? 今、我は進化したばかりやねん。つまりスキル欄に空きがある。
ふむ、これまでずーっと考えてたけど、スキル欄の空きがないせいもあってじゃあやめとくかと言う考えだったが。
やはりあれか、他所で色々と関わる時に使ってもらった念話スキルの出番ですな!
アナウンスさん、念話スキル下さいなー!
あれさえあれば会話には困らんし、人間の言葉も覚えられる!
振動感知でこの振動はこの言葉に適合しますーっていうのがわかれば会話が分かるんや!
だから教えれ!
『スキル<念話>を獲得しますか?』
ふっふーん! 今回はあっさりスキル確認が来たな! まあ今まで経験して存在は把握しているし。
明確にこのスキルとわかっているスキルの要求だからまあ当然かな! よし、スキル承認!
『スキル<念話>を獲得しました』
こういうときアナウンスさんがノッてくれないのが非常に残念ですな……まあしかたねーです。
そういうことで、ちょっといいかな
『っ!? え!? もしかして、あなた、ですか?』
はいはい。あなたの目の前のスライムさんが念話の相手ですよー。
まあ、驚くのもしゃーないとは思うのだけど。とりあえず、いいかね?
『はい……なんなりと』
むう? 何故君はそんなに畏まっているのかね?
別に吸血鬼でもないし、君らの主は別の、ってか倒したあれじゃないの?
『はい、まあ、そうなんですけど……今まであの人が私たちを支配していたのは確かです。ですが、今はその繋がりも切れています』
ふむふむ。
『そうなっているのですが……本能的に、あなたに従うように、という感覚が私の中にあるのです』
ふへ? ふーむ? 君らの主を倒したから?
吸血鬼の持っていた支配権を得たから、とかそう言うことなのかなあ?
『わかりません……先ほど、あの吸血鬼を倒してすぐは解放された気分でいっぱいだったのですが……そのあと少ししてからそんな感じで』
うむー……うむー? もしかして。さっき、自分少し止まってたと思うけど、その後からそんな感じに?
『はい。そうなります……何かわかったのですか?』
ああ、うん……スライムリーダー、支配者、導き手、ふうむ。
もしかして……上位者支配者としてのそういう何らかの作用があるのかなあ?
まあ、よくあるけど上位の種族は下位の種族を率いられるってのは確かにあるのやもしれんが……でもそういうのは普通同種よなあ。
別にこの女性がスライムとかそういうわけではないはずなんだが……うーん、でも他種でも可能なのかも?
『……あの、私この後どうしたらいいでしょう?』
うむ? スライムに聞くようなことではないと思うが、どういうことかな?
『主であった吸血鬼もいなくなり、他の仲間、同種、吸血鬼にされた人たちがどのようになっているかはわかりませんが、どうすればいいのか』
そう言われてもなあ……他の仲間、とりあえずあの時自分を襲ってきた吸血鬼やゾンビは全部いなくなったけど?
『……なら、恐らくは仲間はいないですね。あの場に全員が呼ばれたはずですから』
ふうん……で、どうすればいいというのもなんで? 別に自由に生きられると思うけど。
『私は元々領主の娘でした。それが今は吸血鬼、魔物の一種です……これから魔物として生きていかなければならないんです』
ああ……それはなかなかきついかもね。でも今後の話をスライムに頼るのはどうなのよ。
『お願いします! 頼れる人が他にいないんです!』
まあ、主ぶっ殺した自分に責任ありか……まあ、成功するかわからんけど色々考えてみましょうか。見返りは貰うけど。




