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スラさんの転生先こつこつ生活記  作者: 蒼和考雪
異世界観光旅情
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093 街の支配者、吸血鬼

 吸血鬼。主に伝承上の存在である人の生き血をすする夜の怪物。もっとも、それはファンタジー世界においてはまた別の話となる。この世界における吸血鬼は人型魔物の一種。その誕生起源については不明なところが多いが、主に迷宮内部で見かけることの多い魔物である。基本的に、吸血鬼は生まれた時点で中級冒険者で敵うかどうかというくらいに強い存在である。それゆえに吸血鬼がでるような迷宮はかなり危険視され、その存在の伝達を優先とされることが多い。

 吸血鬼自体は多くの迷宮で出てくる可能性のある魔物である。人型魔物であるがゆえに、迷宮の主が人型魔物に寛容的でなければならないことや、吸血種という場合によっては別種の魔物すら食い物にする可能性のある魔物であるがゆえに好みの問題もある。また、吸血種は他の生物の血から力を吸収する性質を持つ存在であり、その強化は周りの魔物や生物の影響力を受けやすい。周りの魔物が強ければ強い程、吸血種は強くなりやすい。ゆえに迷宮の主にすら敵対することすら場合によってはありうるゆえに、迷宮への采配は難しい魔物である。


 しかし、もし吸血鬼などの意志ある吸血種が迷宮に采配されれば。その迷宮は場合によっては盤石な体制となり得る。それくらいに吸血種という存在は強い。この場合吸血鬼か。まず吸血による力の奪取、それによる自己強化、自身の血を含ませることによる支配、眷属化、場合によっては自分と同じ吸血鬼、吸血種の作成、魅了や精神操作や催眠性質を持つ魔眼、怪力、獣化、霧になることができるなど多大な恩恵を持つのが吸血鬼と呼ばれる存在なのである。これらは多くの伝承の付与や創作による影響が強いともいえるが、幻想の世界、ファンタジーなどの異世界においてはその恩恵がそのまま適用されていることが多い。

 この世界でもそうである。もちろん強化がそのまま全部付与されていると言うことは、同時に彼らにとっての弱点も多く付与されていると言ってもいい。しかし、吸血鬼の弱点としてよくある十字架に弱い、などは存在しないし、招かれなければ侵入できないなどの性質もない。この世界における吸血鬼の弱点は聖なるものに弱い、光に弱いなどである。流水を渡れない、ということにかんしては、大河であれば適用されるが少々の流水の影響はない。よく言われる白木の杭、ニンニクなどはまったくもって影響はない。いや、そもそも白木の杭を心臓に刺されれば吸血鬼でなくても死に至ろう。まあ、吸血鬼は高い不死性を持つ。それらを無効化するというもののための白木の杭なのであろうが。


 まあ、そんな絶対強者ともいえるような吸血鬼、それが迷宮内に生まれ、独自の意思を持っているわけだ。あるスライムが迷宮の外に憧れを抱き、迷宮の外に抜け出したように、吸血鬼が自身の力の絶対性に自信を持ち、その結果迷宮の外に出て多種の支配、蹂躙を行いたいと思うのはわりとあり得ることであるだろう。なにせ彼らは魔物、もともと人間含む多くの生物の敵対者。特に吸血種は他生物に思う所はなく、血液のある生物はほぼ自身の餌であるわけである。

 ゆえに、吸血鬼と言う存在は危険な存在だ。迷宮で確認されればその殲滅を最優先とされる。まあ、滅多に吸血鬼が迷宮に生まれることはない。それくらいに強力な存在であるがゆえに。ただ、生まれてしまえば上位の冒険者が殲滅に動くくらいに大きな危険である。

 吸血鬼は光の無い迷宮においては絶大な無敵性を誇る。もっとも、死ににくいだけで死なないわけではない。迷宮の外においては、光がある故にそれによる消滅、死の危険がある。しかし、彼らにとっては夜、月のある夜においては絶大な強さを誇る。月は魔の象徴であり、魔の存在に対する恩恵は高く、闇で夜に生きる吸血鬼に対する力の影響力は殊更大きい。ゆえに、迷宮の外にいる吸血鬼は夜において絶大な戦闘能力と無敵性を誇る。だから迷宮の外に出てこないように抑え込むわけである。


 もっとも、吸血鬼と言うのはその能力が絶大である。また、霧になる、獣化などの特殊能力を持つ。人間がどの程度彼らに見つかり逃げだせるのか、彼らの影響を受けずに彼らに気づけるのか。仮に見つかったとしても、人間を倒し精神を操作しどうにかすることはできる。また、吸血鬼は人型の魔物、それも他の魔物と違いほぼ人型、大きめの吸血牙や青白い顔などの特徴は有れど、それらを隠すことだってできるわけで、迷宮からの脱出は容易。まあ、それ以後の生存に関しては彼らが精いっぱい努力しなければならないのだが。






 さて、吸血鬼に関する話はそこまでにして。そんな吸血鬼の一人がどこかの迷宮から抜け出し、時計塔の街、マリセルに来た。この吸血鬼はかなり頭がいいようで、対人間に対するかなりの物事を行っている。一つは街の支配。通常冒険者によって退治される吸血鬼だが、その冒険者の精神操作や洗脳、一部の眷属化などを行い戦いにならないよう、争いにならないようにした。同時に他所の街に吸血鬼が現れた報告がいかないようにも調整している。

 これらは別に冒険者たちに限らず、他の人間達にも同等である。領主館に訪れ領主も支配し、この街を完全に支配下に置く。下の人間も外に出ようと逃げようとする者もいたが、それらは確実に始末し、多くの人間の家族を人質に逃げ出さないよう、伝えないようにさせている。外からの来報に関しては、街を半ば鎖国、閉鎖的な状態にすることで対策した。もちろんこれに対する疑問はよその街でもあり、人員を送り調査しているが、それらはその人員の精神操作や、一部の実態を見せることで対応している。吸血鬼が現れたことは伝わらないよう、疫病や死霊術師の仕業など色々と。

 何も知らない旅人が訪れることもあるが、基本的には街に入らせずに素通りさせたり、場合によっては始末することもある。それくらいのことをして、この街はいまのところ他所に情報が漏れていない状態を維持されている。

 とはいっても、それも万全ではない。いずれは何かおかしいと感じて誰かがこの街にきて吸血鬼を倒すだろう。もしくは、その前に吸血鬼が危険を感じ逃げ出すか。それまでどれほどの被害が出てしまうことか、誰にも分らないだろう。


 ただ、あるスライムは今回の物事を解決する気満々であるようだが。

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