092 妖しの夜
さあ夜になりました! この世界、文明の発展度合いはそれほどでもないという世界。
なんというか、明かりの類がそこまで発達していない。
ガス灯も電灯もない、明かりは家の中の明かりくらい。
昔と同じ無駄に明かりを使わないように夜は早く寝て朝は早く起きる、日の出日の入り期間の生活。
そう、つまり夜は皆寝ているから安全に探索できる……はずだったんだけどねえ。
何でか知らないけど、夜に通りをうろつく人が増えたー! なんでやねん! 夜型人間かお前ら!
まあ、なんとなーくわからなくもないのよね。
ゾンビとか、そういうのってなんでか知らないけど夜に活動するし。
ホラー系、オカルト系、死霊術とか闇系統って夜に生き生きしているよねー。死んでるのに?
良くあるやつだと、光を浴びると良くないとか、月の力を借りるとかそういうのなんだろうけど……まあなんでもいっか。
ようわからんけど、外を歩いている奴らは昼間の一定規則で動く、人間かどうかわからんやつら。
多分ゾンビとか死人系統か、人形か……操り人形? でも、生物的には……生きてるっぽい?
死人かー。ゾンビは一応ゾンビで死んでるけど、まともに動ける間は生きてる判定なのよなー。
足元とりついて死人かどうかの判定とかやりたくてもできんのよなー。
ってか、生きてるならとりついたらばれるねん。
ま、なんにせよこちらは彼らを見守ることしかできないんです。探索はしますけどねー。
んー、なんというか……彼らやっぱり人間じゃないっぽい?
まあ、こっちは直接触れられるわけではないけど。
なんかそんな感じなんだよなあ……うーん。
具体的にどうなのか、と言われると困るんだけど、振動がなー。
うーん、音、動き、振動感知は正直色々分かるんだけど、こう、口の動きとか……胸の動き?
ああ、うん、そうだ。呼吸してないんだな。やっぱ死んでるんじゃねーか!
いや、待て。もしかしたらエラ呼吸しているのかもしれんぞ? 水の中ではないけど。
もしかしたら、呼吸しなくても生きていられる人間かもしれん。そういうスキルがあるとか。
………………うん、現実逃避は止めようか。やっぱり彼らは人間じゃない、そうだろう、スラさん。
夜に動くか。まあ、ゾンビとかそういうの。町が死んだように静かなのも、あの死人らのせいか。
でも、そもそもなぜそうなっている? 街の中に被害らしい被害は見えないし。
そもそも街自体はまだ機能しているっぽいのよね? ってことは、死霊術師が街を牛耳ってるとか?
それにしては夜に街の中にゾンビをうろちょろさせる理由もわからんけど。
だいたい、街の中に誰もいない、人の消えたような建物もあったわけだし。いや、あれゾンビか。
ゾンビにした一家とかを徘徊させてるとか?
うーん、でも理由は? そもそも原因は死霊術師でいいのか?
スキルで死霊術くらいは普通に在りそうだけど、本当にそれなんだろうか。
スライムの勘が言っている、多分違うんじゃねーのと。あてにはならないかんかもしれないけど。
っと、ゾンビが出てくるところは……領主館かあ。
まあ、歩いている方向からして恐らくそこという推測。
まあ、街を支配していると考えるなら一番偉い所にいるのは普通かね。
でも、それはそれでどうなのか?
やってきました時計塔の街の領主館。
まあ、当然だけど侵入者が出ないように衛兵らしき存在がいるじえ。
ただ、その衛兵さんは来る人出る人は無視ですなー。
ただの置物? かと思ったけど、多分違うわなー。
出る人来る人を無視と言っても、出る人来る人は例の死人っぽい動くゾンビーの群れ。
うん、だめだわ。うーん、なんだっけ。
こう、なんか、こういうのの原因がなー。思いつく感じのがあるんだけどなー。
ん? 衛兵がびしっとして……あ、誰か出てきた。
今までのゾンビっぽいのとは違う、青白い顔の奴。
そういえばゾンビも青白い顔だけど、なんというか……いや、青白くはなかった?
日の光の元だとどっちかって言うと白だな。
夜ははっきりと青っぽく見えるけど、それでもはっきり青白くはなかったような?
でもあれははっきりと違うのが分かる。こう、血が青いんじゃないかってくらいに血色悪いわー。
まずあれ、人間じゃねーよぜってーって感じです。黒いマントに青白い顔、そして牙。
ああ、うん、なんか引っかかる感じで思い出したけど、あれだ。吸血鬼かいなっ!
そっかー。吸血鬼かー。多分エルフや人魚とかそういう系統に近い人型魔物一種なんだと思うけど。
そういえば迷宮ではあの手の魔物は見てねえな。竜王さんはああいうの嫌いだったんかね?
しかし、やっぱり血を吸う、霧になる、怪力、動物化、いろんな能力を持っているものなのかしら?
一度会うなり見るなりしてればもう少し能力が分かるんだけどなー。残念ながら初見なんだよなー。
ただ、魔眼、魅了の力とか、吸血で仲間作りとかそのあたりの力はありそう? わかんねーけど。
でも、あれか。街が静かなのってあれが多分原因よな。あいつが街を支配した結果。
冒険者が討伐に来ない理由とか街が支配されているのが分からないのかとか気になる所はあるけど。
九割九部あいつが原因とみていいだろう。
問題は……倒せるかどうかだな。吸血鬼の不死性は厄介だし。
場合によっては心臓に杭を刺さなければ死なないとかありえそうだぞ?
もしくは聖属性攻撃でないといけないとか。
スラさんに倒せる者なのか……でも、死なないなら死なないで永遠に食べ続けられるかも?
それはちょっと魅力的ね。餌に困らないならいいけど。
あー、でもヒュドラさん倒せたように、削りつづければ倒せるか。
問題はあれの知恵と自由度よな。人間系統なら、それなりに知性知能はあるわけだし。
ってーか、そうじゃなきゃ街支配できんわ。まあ、とりあえず……あれは倒す。
昼間、なんとか領主館に入り込めればなんとかできるかも。寝込みを襲え!




