表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
スラさんの転生先こつこつ生活記  作者: 蒼和考雪
異世界観光旅情
83/132

083 旅路のゴミ箱スライム

「あれ、放置していていいのか?」

「一応害はないみたいだからな……それに、ほら、あの子ずっと抱きしめて離さないだろ? 持ってるうちに倒すとな……」

「ああ、流石にそれはなあ……」


 商人の娘、シエラが持っているスライムを見て冒険者たちはそう語る。本来スライム程度でも冒険者は退治しなければならない。魔物は放置していると色々な危険がある。スライム程度の存在でも、増殖すれば危険度は上がるし、最悪の場合魔物は進化する。スライムの脅威は全くと言っていい程ないとしても、ビッグスライムになると下級冒険者でどうにかできるか不安になる程の強さとなる。そういうこともあって放置されるということはほぼないのである。

 しかし、シエラの持っているスライムには簡単には手を出せない。理由としてはわかりやすい。少女の持っているスライムに手を出せば、そのスライムをかわいがっている、抱きしめて大切にしている少女はどう思うか。少なくとも商人から依頼を受け護衛をしている彼らが簡単に手を出していいわけではない。もちろん少女の手からスライムが離れ勝手に行動したり、少女に害を加えた場合は話が違う。だがスライムは全く行動しないといってもいいくらいに大人しい。


「やっぱ従魔スキルか?」

「ありえないとは言えないが……あのくらいの年でよくそのスキルを得られたもんだ」


 スキル<従魔>を得るには魔物と仲良くなることが必須である。もちろん普通に得るのは難しい。意図的に得ようとしないとなかなか得ることはできない。なぜなら魔物とは本来危険なものであり、人間やその他生物と争う存在であるからである。スライムでも、近寄れば纏わりつき消化しようとしてくる。そんな生物相手に仲良くなんてできるはずはないだろう。それゆえに先に魔物に言うことを聞かせるため、倒すなり自身の力を証明して従わせるしかない。

 今回のように、スライムが害をなさないがゆえにシエラは持っていることができる。それは先に従魔スキルを持っていたからか、それともスライムに触れ従魔のスキルを得たからか。それはわからないが、少なくともスライムに害はない。ゆえにどちらが先であるにせよ従魔スキルを得たものだと考えられている。


「でも、ちゃんと確認したのか?」

「今の状況で確認できるわけないだろ……」

「それもそうか」


 旅の途中でスキルの確認をするのは楽にできることではない。そういった他人のスキルを確認できるスキルを持っているならば話は違うが、大体の場合街などで専門の道具やスキルを有する担当者に確認を頼むのが殆どである。自分がそういったスキルを得た場合、スキルを得たと言う報告がスキルの神のような存在から伝わるのだが。


「だけど確認する手段はあるぞ?」

「なに? どうやるんだ?」

「ふふふ……まあ、あの子のところに行こうぜ」


 そう言って冒険者二人はシエラの近くに寄る。


「なにー? 冒険者さん?」

「えっと、これをそのスライムに食べさせることはできるか?」


 冒険者がゴミを差し出す。スライムは少女に触れたまま何も食べる様子はない。今のところゴミ処理にもスライムは使われていないが、何も食べなければスライムは安全かと言われれば分からない。しかし、何も食べないスライムというのも奇妙なもの。スライムは何かを食べ続けて生きているものである。であれば、何かを食べるのが普通。何も食べないことはありえない。しかし実際には何も食べていない。

 何を言いたいかと言うと、何も食べないスライムに少女が何か……ゴミでもいいから食べさせることができれば、スライムを従えていると言うことになるのではないかと言うことである。まあ、同時にスライムが物を食べることができると言う危険があるということでもある。そういう点においてはこの確認は危険性の確認と言う意味では二つの意味で重要なのである。


「わかんないけど、いいよー。すらむー、これ食べてー」


 すらむー。シエラがスライムにつけた名前、もしくはスライムの呼び名。ここまで少女がスライムをかわいがっているとなると迂闊には手を出せないな、と冒険者は思う。少女が受け取ったゴミをスライムにおしつける。押し付けた時点ではすぐに変化はなかったが、にゅるりとスライムの体の中にゴミが入る。そのゴミをスライムはゆっくりと消化する。


「すらむーすごい!」


 シエラが喜ぶ様とは裏腹に、冒険者の方は難しい表情である。スライムが何も食べないわけではない、食べられないわけではないと言うことが分かったわけである。つまりスライムによる少女への害の危険は存在すると言うことになる。しかし、同時に少女の言うことを聞いたことから少女の従魔スキルの効果があるのでは、と考えることもできる。なので安全と思うこともできる。そのあたりの判断は彼等には難しい。まあ、スライムであるので害があってもすぐに対処できるだろうと彼らは思っている。


 ところで。その様子を見ていた商人や他の冒険者。彼らはスライムがゴミを消化できる、食べることができるということがわかったので、シエラに頼みゴミ処理をスライムに行わせることにした。別にその辺に捨てて行ってもいいのだが、野生のスライムの繁殖、それ以外の魔物が寄ってきたり、ゴミが自然に悪影響をもたらす危険など色々とあるので迂闊に処理できない。できれば街にもっていって街で処理をするのが一番と言うことであまり旅中には処理されない。

 しかし、スライムは基本的にあらゆるものを消化できる。であれば、ゴミの消化をスライムにさせれば持って帰る必要はない。ゴミの入った臭い袋を抱える必要はないのである。それはとても画期的な話だ。もっとも、シエラがずっと持っているので少々面倒な手順になってしまうのだが。また、スライムの成長や分裂に気を付けなければならない。スライムは食べて成長するゆえに。ただ、少女の抱えているスライムに成長の兆しは見えない。やはりそういう点ではこのスライムは謎が多いと彼らは思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ