082 馬車の旅(中)
しばらく歩いてきたけど、とりあえず隠れられそうな木の下で一休みー。
幾らか木もまばらにある街道、こんなところでのんびりしていると冒険者に襲われそーな。
まあ、襲われた程度で相手にはならんかね? ヒュドラクラスの冒険者いたら怖いけど。
そうそうそんなのいてたまるかと言う話ですがね。実際冒険者と戦うとどうなるかわからん。
そういえば対人間の経験は一応ないのよなー。迷宮内で一回助けた時に叩かれたことくらいか?
外に出ても直接出会うことはなく、逃げてったからやっぱり戦ってはないしなー。
自分の強さがいかほどか……そういえば彼らはわっちのことを説明したのでしょうか。不安。
さてー。のんびりのんびりしているのもいいけど、どうやら近くに馬車が止まった模様。
しかも何やら人が降りてきた……野営か何かなー? ふむ。近づけそうなら馬車に近づこうかね?
でも、彼らの目をくぐって近づくのはそれなりに面倒そう、今はとりあえず動かないでおこうか。
そういえば擬態を使うのを忘れているなあ。使っておこうか?
およ? 何か近くに……にゃあっ!?
まさかこの私が油断して捕まることになろうとは……しかも相手が冒険者とか熟練者じゃなく子供。
しかし、娘さんを一人で外に置いたまま放置、しかも目の届かない所にやるのはどうなのよー?
そんなことだから私みたいな危険なスライムを連れてくることになるのよー?
まあ、僕悪いスライムじゃないよぷるぷるしてるけどねー。ムニムニしなさんな娘さん。
人間の言葉はわからない……念話スキル使ってくれればわかるんだけどなー。
私のスキル欄はスキル埋まってるのでどうしようもないのですー。ざんねーん。
しっかし、一緒に馬車に乗ることになるとは思わなかったぜ。まあ、冒険者が一緒だけどなー。
まあこの娘さん私のことをお放しにならないのでしかたないですね。どうにかできんのか。
これ、向こうさんも気が気じゃないんじゃない? スライムでも魔物は魔物。危険でしょ?
この私がこの人間の娘さんに本気で襲い掛かって食らい尽くそうだなんて思わないにしても。
それがわかるのは私の思考を読めるサトリさんくらいよー。
読心スキルって持ったら狙われそうだね。
とりあえず私は大人しくしているのです。別に対人間で殺し合いしたいわけでもなし。
子供を狙うとかそんな悪逆非道をする気もない。魔物のくせになに言ってんだって感じだけども。
しかし、この馬車外が見えねえ。安全のため? 幌改造とかしていないから?
冒険者、商人、嫁さんらしき人に娘さん、御者は外か。荷物もいろいろあるなー。
なんというか、こういうのは初めて。そういえば本当の意味で馬車には乗ってなかったのよな。
馬車の裏に張り付いての旅だったんだものねー。
外は見えるけどあれはあれで気が気じゃなかったぜ。
馬車の下、馬車の中、今度馬車に乗る時は馬車の上かしら。
煙と馬鹿は高い所が好き。誰が馬鹿じゃい。
さて、夜。本当ならとっととおさらばしたいですなーってところです。周りが人だらけだもの。
一応自分スライム魔物です。襲われたって危険は低いとはいえ、周りが人間は怖いのです。
ですので私はとっとと外に逃げたい。
馬車の上か、最悪下でもいいからそこにへばりついて街近くまで移動したい。
このままずーっと娘さんの腕の中はイヤー! 私ロリコンじゃないのー!
人間に欲情しないのー! 触手プレイできるけどしないよー!
ってーか、そもそもちっこい娘の体に触れて欲情できるかっての!
それ以前に嫁さんの豊満な体が触れたところで感触わかんねーだろうから欲情しねえっつーの!
まあ、そんなことはいいのです。スライムである私にそういう感覚は無縁、どうでもいいこと。
ずーっと夜になっても眠る時も私を抱いたままの娘さん。そこまで私のこの体が好きか?
抱き枕扱いかな? それともぬいぐるみ? 全力で抱いても潰れないのです。
逃げたい……でも、なんとなく冒険者からの視線を感じる。
警戒の気配を感じる。動くと襲われそう。
まあ、襲われても大丈夫だろうけど、無駄な争いは避けるのが吉。しばらく私が生贄か……




