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スラさんの転生先こつこつ生活記  作者: 蒼和考雪
異世界観光旅情
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076 助けた魚に連れられて

あー、海流に流されるんじゃー。なんていうか着地できないとこの流れに抵抗できねえぜ。

まあ、それなりに上の方に向かってるっぽい? だめだ、水中で方角なんぞ分からん。

せめて明かりさえあればなー。太陽光さえあればそっちが上ってのはわかるんだが。

どうせなら圧縮解除をしたり同化で利用するのもありかねえ? どうなんじゃろ。

まあ駄目そうなら最終手段じゃな。流石にずーっと海の中は地獄やでえ……

うーん、人が流されるときどういう音楽があったっけ? どなどなは違うしー。

えーっと、さかなさかな……あれは頭が良くなる歌やし。うーんと、うーんと……

のっぱっ!? なんかあたった!? なに、何にぶつかったの!? 岩じゃないよね!?


『な、何!? 纏わりついて……やー! 放してー!』


えっ!? 何か声が……念話!?


『誰!? 誰ですかっ!? だ、誰かいるならこの頭に纏わりついてるの放すの手伝って!』


あー、もしかして、それって……ちょい待ち、ずるりと動くかもしれんが我慢なー。


『ええ!? なんです!?』


よっと。ほーい、ずらしましたよー。


『うう、まだ何か頭に張り付いてる感覚が……だ、誰なんです!? いいえ、何なんですか!?』


ただのスライムです。


『……スライム? この海の深い所にスライムなんていたかしら?』


まあ、いるのは仕方ないと思うよ? ってかーぶつかってごめんね。でも流されてるんだ。

スライムだから水中泳いでも碌に泳げるわけでもなし、海流の勢いに負けてぐわーんとね。

だからちょっと助けてくりー。


『そ、それはいいけど…………って、そういう場合じゃなかったー!?』


ふみ? どうしたねん。って、なんか近づいてきてる?


『っ! ああ、せっかく離してたのに!? もう追いつかれた……って、あなたがぶつかってきたから!』


んなことゆーとる場合じゃないやろ! ちょっとうまく近づきな! 相手してやんよ!


『ええっ!?』











 その日私は普段は行かない、私達の海でない領域に出た。海は誰の物でもなく、魔物も普通の魚も好きに移動して入ってくる。それでもある程度縄張りというものは存在する。私達は私たちの仲間でその領域を作り出した。その範囲であれば、魔物も危険な魚もいない。それが私たちの海だ。

 その外に出ると言うことは当然危険がある。しかし、私達の海の近くではあまり危険はない。それを知っているから少しだけ外に出ることは誰しもがしている。私もみんながしていたからこそ外に出た。最初の内は問題はなかったのだけど、そのせいかもう少し遠くに、外へ外へと。いつの間にかかなり私たちの海から離れたところに来ていた。当然その場所は私たちの海のように安全ではなく、危険の及ぶ場所。

 そこで私は凶暴な魚の魔物に襲われた。鮫種の魔物だ。

 全力で逃げた。おかげで私たちの海から離れすぎたせいで助けを求めることも出来ない。だから少し深い所に潜る。深い所は大きな危険があるけど、そのかわり危険自体が小さくなる。獲物が少なくなるから代わりに狙われる危険は上がりそうな気もするけど。でも、一度狙われるとそのあとも狙われ続ける可能性は高いから、なら少しでも逃げやすい方に。

 どんどん深い所に潜ると潰されそうな力がかかる。それを嫌い多くの魔物や危険な魚はあまり追ってこない。私もその力はかかるけど、スキルで耐性があるから問題はない。ただ、魔物の方は諦めが悪いのか、それでも追ってきた。ただ、少しは遅くなっていたようで、私は振り切ることができた。

 しかし、運が悪いことにその途中で何かにぶつかった。そのせいで目の前が見えない。

 その何かはスライムだった。おかしい。スライムが海の中、この深い所にいるなんてありえない。そもそもスライムが普通に私たち会話できるなんて言うこともあり得ないはず。スライムはそこまでの知能を持ってない。でも実際に会話できる。念話を使わないとできないけど。ちなみに海中では言葉での会話がしづらいからみんな念話できる。

 そんなスライムの相手をしていると、そのスライムが何かが近づいてると言った。さっきから追ってきた魔物だと思う。せっかく逃げられていたのに、このスライムのせいで台無しだ。酷い。思わず罵声を浴びせてしまったが、スライムの方からなにやら魔物と戦うとか言ってきた。

 そんなことできるはずがない……と言いたくなったんだけど。でも、この深海に何故かいるスライムだからどうにかできるのかな、とも思った。でもこのスライム、自由に移動できないって言ってたけど。え、つまり私を乗り物にして近づくってこと!? それって私が危険なことになるんじゃないの!?

 でも、スライムの言うことを聞かないと私の方が危険。だって魔物が追ってきているから。多分今度は逃げられるか怪しい。今の状態だと逃げ切る前に追いつかれる。そうなると私は魔物に食べられて儚い命を散らしてしまうの……そんなことになってたまるもんですか!

 そういうことなので、スライムに頑張ってもらう。うまくスライムが魔物と戦い始めたらそのうちに逃げてもいいかもしれない。見捨てるのはどうなのかな、とも思うけど、そもそもぶつかってきたのはあちら。ううん、私も前を見てなかったのが悪いと言われればそれまでだけど。でも、私の戦う力じゃどっちにしても勝てないし……だからスライムにまかせよう。


 スライムが勝っちゃった!? え!? 何、あの大きくなって一飲みにしちゃったの!? スライムってあんなに大きいの!?











ふう。ごっそさんでしたー。どやねん。倒したでー。


『す、すごい! スライムってこんなに強いの!?』


それはスライムによるなー。

自分はずーっと鍛えに鍛えて迷宮の主に会えるくらいに鍛えてから迷宮を出てきたから。

だから他のスライムは自分ほどは強くないんじゃないかな?

えーっと、カイザースライムとかなら同じくらい強いかも?


『そんなスライムいるんだ……へー』


ところで、海の上に……できれば地上に連れてってほしいんだけど? 助けたお礼に。


『う……それは、そのー……私、そういうの許可でてなくて』


えー。


『本当は私たちの海の外に出る事自体駄目なの。今回は追われちゃって、それで逃げるためにここまで……』


ふーん。じゃあ、とりあえず地上に近いところの海底まででいいよ。


『……ねえ、あなた強いのよね?』


さっき言った通り、目の前で見た通りですが。


『じゃあ、ちょっと手伝ってくれない!? 今、魔物のせいで私たちのところが大変なの!』


ええー? でもあっさり外に行けるのに危険なの?


『別に今襲われてるとかそういうわけじゃなくて……強い魔物が集まってて危険なんだって話なの。手伝ってくれる?』


メリットがないのです。手伝ったってしゃーない話。ってーか君らが頑張ることちゃうの?

だいたい自分たちの事でしょー? それなら自分たちで解決するのが筋やん。


『むーっ! それならあなたも自力で地上まで戻ったら!』


うぐっ。それを言われるとなー。よし、なら交換条件で。助ける代わりに地上連れてけ。


『それならいいよっ! じゃあ、私達の海に連れてってあげるね!』


うーん……? なんか交換条件にしてはこっちの方がリスク大きいような気がする……まあいっか。

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