131 神様に出会った日
んー、ここかなー?
「私は少し息苦しいと言うか……すごく、圧倒される感じなのですが……主様は全然平気そうですね?」
え? やっぱり吸血鬼って神聖なものに弱いとかあんの? ごめん、無茶させてる?
「いえ、そういうわけではないと思います。なんというか……こう、目の前に自分よりもはるかに巨大な者がいると言うか、大きな手に潰されていると言うか……そうですね、初めて主様に対峙したときはもっと弱い感じでしたが似たようなものはありました。主様が主様となってからはなくなりましたけど……」
ううむ、つまり圧倒されるようなとんでもないのがいるからってことかなー?
っていうか、自分にもそういうのあったのか。
まあ、これでもヒュドラさんぶっ倒している超スライムさんですから?
スラさんはスライム族最強ですし?
「ところで……ここが儀式場とやらでいいのでしょうか?」
さあ? スラさんもどこが神降ろしの儀式場とやらかは知らないですし。
一応思い当たるところ、神山ならここかなーって感じ?
「ずいぶん適当ですが、それでいいのでしょうか……」
そもそも神様が明確に指示してきたわけでもなし、本気で何かしてほしいのならもうちょっとちゃんと言ってるんじゃない?
言われた場所と違って何もできないならそれはあんたの指示が悪いんやろって話ですからね。
「それは……流石に神様にそういうのを言うのはどうなのでしょう?」
いや、吸血鬼のあんさんが言うべきことかねそれ?
「吸血鬼が神様を信じてはダメと言うわけではありませんよ? 日の下に出られるようになって、私はそれなりに普通の人間らしく過ごしていた時期もありましたから。あの聖国のあの宗教においての神様は別に信じる……かはともかく、信仰はしなくても一応認めますし、他にもいろいろと神様の存在はありますし。それ以前に、私は直に神託を受けているので信じない理由もないわけです」
ああ、うん、確かに……クルシェさんが自分寝た後神託とやらを受けてたんだっけ。
それなら確かに吸血鬼関係ないわな。
っていうか、神様側も吸血鬼とか関係ないわけなのよな。
まあそもそも吸血鬼が神様の敵って言うのも理屈が分からんし。
「それで……主様、毎回脱線しまくっているのはしかたないのかもしれませんが、ここでいいのですか?」
だから知らぬって言う話ですし。
でも、クルシェさんがなんか息苦しい、気配を感じるっているのならここじゃない?
えーっと、スラさん魔王級? よくわかんないけど。
強い魔物扱い、前にあったとき、初めて会った時は……なんだっけ、カイザー?
進化形でもまだ最終のリーダーになっていない段階だったわけだけど、それでここでの弱い感じでしょ?
今クルシェさんは強くなって、それでもまだ息苦しい、圧倒される感じなんだからつまりここにはそれだけ強い存在がいる。
リーダーとなったスラさんよりもはるかに上の存在が。
つまり、ここにそれくらい強い存在、神様がいると言うこと……かなあ?
「……理屈としてはわかりますね。でも、ここはそういう気配があるのは確かですが……それ以外が特に、変わりがないと言うか」
そうね。前に見た時と変わんない石柱とかいろいろあるけど、神様が降りてくるとかそんな様子があるわけでもないし……
でも、神様はここに来いって神託下したんでしょ?
ならここに何かあるのかも。神降ろしの儀式場、つまりは神様降ろせってことかなあ?
「そうかもしれません…………神託をくれたあの人が降りてくるなら……多分……」
多分?
「………………なんでもありません」
いや、絶対何かあるよねそれ!? いったい何さ?
「教えません。ええ、私からは教えません。教えてはいけないとも思いますし」
ううむ? ううむ……ううむ! ううむー……
「何ですかその反応?」
いや、流石にないなーと思っただけ。
そりゃないわーって思っただけだから。流石にそりゃ失礼だし。
「……?」
っていうか、この思考漏れてないな。
うん、大分念話するための表層部思考にも慣れたものだねえ。
よくよく考えたらなんじゃそれって話だが。
まあ、そんなこと話してないで調べますか…………
「そうですね」
…………んー………………んんー…………………………特に何もないね!
「そうですね……と、言いたいのですが。主様、主様のいる場所が光ってるんですけど……」
え? あ、うん、確かに光ってるね。んん? んんん!?
何かすっごく、こう、来る! ぎゅいーんって……!
「光が!」
にょわあああああああああああああああああっ。
「……主様? っ! いない!? どういうこと……?」
「初めまして、スライムさん」
え? あれ? ここどこー? 雲の上? この露骨に天界チックな……
「そうですね、ですが分かりやすいと思いますよ?」
あ、はい、そうですね。ところで、あなたはだあれ? いや、何となく予想は出来ていますけども。
「はい、私は神様……と言うと少し語弊があるのかもしれませんが、この世界のスキルの管理をつかさどる役目を担う、神格存在の一つ……まあ、種としては神に近しい天使、世界運営を担う側の天使ですね。スキル管理神、かっこ天使と言う感じです」
はあ、そうなのですか………………スキル管理? もしかして、アナウンスいつもしてくれた人です?
「はい! スライムさんの活躍は、始めから終わりまで……いえ、終わりと言うか、これまでの全部を見させていただきました!」
ふええ……全部見られてたとかすっげー恥ずいんだけど。
「そんなことありません、立派な活躍でした。歴戦の冒険者でもできないような戦闘を数多くこなして……とてもすごかったですよ?」
そう? なんか褒められて悪い気はしないんだけども。
「とても、とても、とても、あなたがここに来るのを心待ちにしてました……ようやく、あの子に託けてここに来てくれたんですね……」
おおう……まあ、別に持ちやすいから良いんだけど、なんかこう、神様だからか圧力が……頭に? 頭に当たるでかいのではなく。
しかしまあ…………まじで神様かー。とんでもねえ話だぜ……