130 指示の伝言
ところでさ。
「はい、なんですか?」
自分ら聖国とやらに突撃かまして思いっきりぶん殴ってきたわけで。
それ自体はクルシェさんの頼みだったわけだけど。
「ええ、そうですね……今回手伝っていただいたこと、主様にはとても感謝しております」
まあ、それはいいのよ。別に暇だしやることないし迷宮内で大暴れしたのも今は昔の話。
時々昔みたいなことをやってみたいなーって思う時はあるから、今回はその機会って感じで別にいいっちゃいいの。
いやいや、そもそも今回の話はそういうことではなくてね?
「はい」
確か、クルシェさんの頼み自体は、えーっと、なんか、神託?
それを話す前にやってくれないかって内容だったよね。
つまりさ、今回その頼みも終わったわけだし、神託とやらを教えてくれないでしょうか?
「…………ああ、そういう話でしたね」
忘れてたの? この従者忘れてたの?
自分で言い出して主まで動かしてやってたことの大本が何だったか忘れてたの?
ねえ? 追及するよ? 自分しつこく追及するよ? 人動かして何やっとんねんって追及するよ?
「ご、ごめんなさい! 主様に合えた事とか、一緒に戦えたこととか、聖国に逆襲できてすっきりしてたというのもありまして……」
だからって忘れちゃダメでしょー。まあ、そもそも神様からの神託とやらを何故クルシェさんが受け取ってるのかーとか疑問あるんだけど。
それ以外にもなんでスライムの自分にーって感じでも……
いや、まあ、スラさんに伝えたいことがあるってのはわからなくもないんだけど。
「そうなんですか。主様は神様にも覚えがいいのですね」
いやいや、そういうんじゃないんだけどー?
まあ、理由は無理に言わないでもいいよ。そうだよね?
「それ、私が言うことじゃないですか? 主様が言いたくないのなら、私は聞きませんけど。興味はありますが」
まあ、神様にもスラさんにわざわざ聞きたいことがあるのか頼みたいことがあるのかやらせたいことがあるのかは知らんけど。
でも、それなんでスラさんに直接じゃダメだったんだろ?
「それは主様が眠りについていたから、ではないでしょうか?」
起きた直後にでも話しかけてこりゃいいねん。
そうすればいいものを、なんでクルシェさんに言付けんのよ……
だいたい、クルシェさんのところに行くとも限らないわけだし?
「そうですね。でも、神様は主様がいつ起きられるかわからなかったのでは? いつ起きるかはわからなくとも、主様が私の下に向かうのはわかっていた。だから私に伝言を残した可能性はあると思いますよ?」
むう? そういうものかなあ……なーんか、すっごく怪しく感じるのよなあ……
大体吸血鬼は普通神様の敵じゃないの?
まあ、創作や伝承、民話で宗教的権威とか都合のいいあれこれが付随して宗教的な敵扱いになった感じではあるっぽいけど。
「意外と普通の女性でしたけど……」
そうなの? っていうか、神様女性なんだ。ってことは女神なんかな。
「ええっと、名前は知りませんが……担当が云々とか言っていましたし、他にもいらっしゃるのでは?」
そうかー。多神教系かー。っていうか、何の神様なんだ。用があるの。
もしかして転生系か? 今更スライムに転生してごめんねーとか?
それか、あれか、お前は邪魔だからこの世から消し去ってやるーとか。
もしかしたらそういうものでもなく、何か頼むとかそういうの?
魔王とか出てきて世界が滅ぶから止めてくれーとか。そういうのだったらやだなー。
「魔王なら、主様がそれですよ? 魔王級と呼ばれる魔物として主様が扱われていますし」
やだやだ! 魔王やだ!
「別に迷宮の主になるような魔物が魔王級と呼ばれる魔物になるだけのようなので、そういうことが問題じゃないと思いますが……」
そうなの?
「はい……話が完全に脱線していますので元に戻します。そもそも、今回のことに関しては私が別の話を持ち出したので方向性がずれたのが原因ですが、今話している時点でのことは完全に主様が脱線させていませんか?」
それ、乗ってるのはクルシェさんよね? クルシェさんも案外ノリいいよね?
「そういうものではありません。主様に合わせているだけです」
まあ、スラさんはノリがいいのか悪いのかもようわからんのだけども。
「はい、話が脱線しますので! えっと、神様からの伝言は……確か……」
忘れたとか言い出さない?
「忘れてはいません、そこまで長い話でもなかったので。余分な話が多いのですが、伝言自体はあまり長めではなかったです。確か、"神山に存在する神降ろしの儀式場まで来てください"、だったと思います」
まさかここで神山が話に出てくるかー。
っていうか、エルフさん所から登るルートから外したと思ったら、後から登る結果になったわけ?
っていうか、神降ろしの儀式場? どこやねん、と言いたい感じではある。まあ予測はつくけど……
「とりあえずどうします?」
このままいこうよ。今蝙蝠に乗って元の街に移動中じゃん。
場所的にこのルートだとエルフの里近く、神山近くも通るし。
エルフの里に行かないんだから山登っても文句言われないもんね!
言われても神様から直々だから登るけどね! ふはは!
「では、そのように」