116 里帰り即戻り
なんとか近くの街を根性で見つけました!
なんかいろいろ思い出してきたようなそうでないような。
ここは確か竜迷宮の、竜王さんのところの近くなんだよなー。
なんか戻るのもあれだけど、近くに来たなら寄りたいぜ。
わっちは一応あそこ出身のスライムさんだからね。こう、故郷つーかなんつーか?
まあスライムとしては故郷でも中の人的には故郷とは言いづらいやもしれんけどね。
そのあたりはどうでもいいのです。人間の街も住みづらいわけではないのだけど……
いや、そもそもずっとここにいるわけにもいかんぜよ?
旅の途中なのです。そもそも居つくならあそこスラさん迷宮でもいいし。
まあ、そういうことなので……近場だよね? 竜の迷宮。
多分そちらに出向く馬車があると思うのよ。
それを何とか探してみるのです。まあ、今のスラさんは人間の言葉が分かる高性能なのよ!
しかし、この国前に見た時よりも……国? 多分国? 多分国だよね? 国っぽいから国だよね?
大きくても街でしかないとかそんなこと言わない? いや、そもそもこの世界の国基準は何処?
国境は何処に? 全然わかんなーい。スラさん常識ないからわかんなーい。
スラさんは間違いを訂正しないよ!
ごめんなさい。訂正するときはします。ただ、まあ、スラさん感覚で言っているだけですから。
そもそもスラさん心の俳句、俳句じゃないけど時々誰に言っているの、って思う時があるのよね。
いや、まあ、心で思ったことを誰かに行っている風に思うこともあるけども?
ちょっと頻度が多いような。
まあ、私の場合アナウンスさんもいるので。そうそう、アナウンスさんがいるからかな?
思えばアナウンスさん……そういえば今はもうアナウンスさんと話す機会ないなー。
進化ももうしない可能性がある。どれくらい進化したのか。これ以上進化するのか。
スキルもなー。確かあの時念話とったしこれ以上はスキル獲得の機会はないよなー。
まあ現実的に必要ないけど。
うう、アナウンスさんのアナウンスは当時あるだけで癒しだったでよ。
まあ、人恋しでも人には関われんものね。
今なら……今なら、あの吸血鬼のクルシェさんあたりなら、まだ色々話せる?
まあ、戻るにしてもかなり遠そうだなあって感じだけど。
でも場所はわかってる、いや、場所はわかんない。
場所の名前、街の名前は一応分かっているのよね。
ならそちらに行く商人やら何やらでも探せばいいか。
観光ついでに、行きたくなった行くことにしましょ。
今はとりあえず竜王さんのところにいきますか。
やってきました竜王さんの迷宮! まあ、ここに来るのも久々です! そして冒険者多いッス!
いや、まあ、そうだよね。ここっていまだに残っている活発な迷宮みたいだし。
そうそう、よく生き残っているもんだとは思うけど。
そうねヒュドラ倒せるレベルの冒険者いないと無理だものね。
仮にヒュドラ倒してもそのあと竜王さんが相手だもの、きついわよねー。私でも無理でしたので。
いや、まあ、倒す気はなかったけどさあ……あれ、相手にすると……今でも多分きついよなー。
とりあえず中に入るには夜まで待とうホトトギス。ホトトギスは夜に鳴く? いや、鳴かないよね。
流石に夜は冒険者も迷宮の中と外の行き来は減るでしょ。
と、いうことで夜です! 月の昇る綺麗な星空の夜です!
思えばこういう夜空に思いを馳せたことはあっただろうか。
蒼空に思いを馳せたことはあるけど。外出た時に。
そういえば迷宮、スラさん迷宮から出た時は曇りだったっけ。
まあ、そんなことは今はどうでもいいでしょう! レッツ里帰りー!
なにこのアウェイ感。アウェイであってる? アイウェイとかじゃない?
とりあえず疎外感パネェっス。
なんというかひしひしと歓迎されていない空気と言うか。
すっげー敵対的な感覚がびりびり来るんだけど。
なんか魔物も執拗にこっち襲ってくるし。スラさんも襲ってくるし。
これはあれか、別の迷宮を出身地にしたからか。
そうそう、スラさんは別の迷宮の一番下、竜王さんのところみたいな一番奥にいたんだよね。
つまりこれはスラさんがあの迷宮の主であることを示しているのではないでしょうか?
そのあたり検証とか記憶とか考えとかいろいろしたような気もしないけど、覚えてないからまあどうでもいいとして。
多分スラさんはこの迷宮とは別の迷宮の存在なので侵略者認定されているとかありえそうですよね。
うん、ごめんなさい、さっさと出ていきます! せっかくの里帰りなのにー!
国籍移したから別の国の人間になった気分とか!?
はあ……残念ながら竜迷宮には戻れないようです。
残念至極残念とっても残念。まあ、別にいいんですけども。
故郷は故郷だけど、根本的な故郷に帰れないのだから別にいいんです。
人間でなくなったから別にもう色々いいんです。
スラさんは孤独に頑張っていきますよーだ!
しかし、どうしよう? いや、旅を続けるんだったな。
そうそう、そもそもここには旅のついでに寄っただけよ。懐郷気分。
うん、まあなんでもいいけどさ。
やっぱり旅を続けよう。例の吸血鬼のクルシェさんのところに行ってみるのもありか。
でもまだ生きてるのかな? 吸血鬼の寿命とかは多分ないと思うんだけど、確実でもないしなー。
それにとっくの昔に殺られてる可能性もある。
それは少し残念だけど、まあ生きている以上、魔物である以上、そういうこともあってしかるべし。
生きてればいいな、でも人間支配していたりしたらどうしよう?
教育的指導でもしてみる? 勝てるかはわかんないけどね。




