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スラさんの転生先こつこつ生活記  作者: 蒼和考雪
再来旅路神成活
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109 スライムの逃亡

ふーむ、ここはどうやら魔物を取り扱っている店かー。昔はなかったのよなー。

っていうか、魔物をペット扱いにすること自体どうなのかと思う所だけど。

竜とか飼いたいのだろうか。まあ残念ながら竜とか全然居ねーし。

っていうか、結構な数のスライムがいるなあ。

スライムってまあ、確かに買いやすくはあるかもしれん。

触れると危ないけど、制御できるなら安全。

それ以上にまずスライム自体の危険性が低い。

上位のスライムは知らんがスライム自体は弱いから倒しやすい。

そして探しやすい集めやすい。そこら中にいるし、迷宮に行けばどこにでもいるし。

餌も楽だよね。何でも食べる。まあ何でも食べるから買いにくいと言う側面はあるのかも?

っていうか、スライムを飼うならペットとしての癒し系よりはゴミ処理とかの実務系のほうがいいのでは?

街にスライムを通過させて路上のごみをばさーっと一掃する。そう言うことができるのやもしれぬ。

……あれ? もしかしてスライムって魔物を従える場合結構いい魔物だったりする?

いやいや、それはどうだろう? そもそも魔物は魔物なんだから、あまり飼わない方がいいよね。

しっかしこんな店があったのか。以前は見た覚えがないんだけど、寝ている間に新しくできたとか?

それとも単に自分の知っている所には存在しないだけの店だったとか? この街特有のとか。

まあ、そもそもいわゆる全国チェーン店とかそういうのがこの世界にあるとは思えんな。

基本的にここの世界観なら店ってのは個人経営だよね。まあ、同じような店ってのはあるかも?

ある店舗ができれば、それがそれなりに繁盛していれば、真似する人もいるかもしれん。

もっともそういうのは実際どうなのかは俺知らねーですけどねー。


さて、観察しているのも別に構わないんだけども。残念ながらそろそろおさらばした方がいいな。

何やら人の動きが怪しいぜ。擬態しているのばれちゃったかな?

片方は見張りで片方は捕まえようとしている感じか?

ふうむ、擬態スキルがうまく機能しなかったか、それとも擬態しているのを見破られたか。

もしかしたらスキルでそういうスキルがあるかも。

看過、もしくは看破、真実視? まあ、なんでもいいか。

おっと、動いたぜ! 残念ながら、捕まえられるわけにはいかないのよ!

逃げさせていただきますね!






「っ!」


 スライムが跳躍して男性の行動を回避する。跳躍すると言うだけで男性にとっては驚きだ。スライムはずりずりと地を這って移動する者という常識が強い。もっとも、男性はスライムが擬態スキルを使っていることを知っていたのだから他のスキルを持っている可能性も考慮するべきだっただろう。少なくともスキルをまともに使用してこんなところにいる時点でそれなりに知能、知性があるとわかっているはずだった。

 そのあたりはスライムを相手にすると言う事に対する人間側の傲慢さゆえだろう。スライムは最弱、人間よりもはるかに弱い。そういう考えがあるゆえに、他のスキルを持っていることやその使用は考慮されなかった。もしくは持っていても跳躍、回避できるようなスキルとは思わなかったか。まあ、スライムに跳躍とは合いにくいスキルだろう。


「えっ!? ちょ、何か床が跳んでる!?」

「違う! 擬態したスライムだ! 逃げるぞ、捕まえろ! 珍しいスライムだ!」

「え、あ、はいっ!」


 もう一人の男性が参加してスライムを捕まえようとする。しかしスライムは跳躍だけでなく空中跳躍も交え、うまく逃げる。しかも店の中という狭く移動箇所の少ない空間をうまく移動しつつ、他の魔物の入っている籠や檻などに被害が出ないようにうまく移動場所を調整しながら。


「くっ!」

「危ないです! ちょ、そこ、スライム入ってるとこ!」

「っと!」


 スライムはうまく移動場所を調整して気を使っているが、スライムを捕まえることに気が向いている男性側、特にスライムの擬態を看破した男性はかなり焦っている感じで酷い。周囲に被害を出しかねないところを後から参加したほうの男性が注意してなんとか抑えこんでいる。


「あ!」

「逃げられたっ!」


 そしてスライムはそのまま店の外へと抜け出る。男性二人は外に出るが、見失ってしまった。


「……くそ」

「店の中のスライム……じゃないですよね?」

「ああ。恐らく外から紛れ込んだんだろう。それも、あれは多分意思のあるスライムだ」

「そういうのいるんですか?」


 スライムは本能で生きる無生物に近い魔物、と言うのが一般的な認識である。そもそもその生き方がまるで意思のある生物の行動のようには見えない。ゆえにスライムに意思があると言われても困惑する内容だ得る。


「一つだけ、一度だけ。この店を作り上げた創立者が出会ったことがあったらしい。寄生樹のとりついたトライホーンジャイアントベアーと戦って勝ったスライムに。っていうか、それを飼っていたらしいな。少しだけだが」

「……冗談ですよね?」


 スライムは最弱、そして寄生樹のとりついたトライホーンジャイアントベアー、強さ基準は後者をダメージ無視、本来出せる力よりも強い力を出せると言う条件が追加されるので本来の強さよりも強い魔物となる。恐らくは冒険者の上位級。それに勝つスライムなんてありえない存在である。普通は。


「冗談かどうかはわからんが、意思のあるスライムは実在する……ということだ。さっきの、見たろ」

「ええ、まあ。あれ、意思のあるスライムですか……」


 スライムの出て行った先を見る。少なくとも意志あるスライムに危険はない……のだろう、と思う。何故ならあのスライムによる被害は今のところ街中に広がっていない。もちろん隠れて何かをしている可能性はあるが、少なくとも大暴れをする様子ではないようだ。


「大丈夫だといいんだが……」


 スライム、人間側に何も起きないことを願う男性だった。

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