010 スキルを利用しよう
擬態スキル……その但し書きが正しいとするならば、擬態できると言うことだ。
しかしだね。ここ迷宮には鏡というものはない。
水場も探してなかなか見つからないし、そもそも迷宮内は明るかったり暗かったり。
そういうこともあって水場があったからといって鏡のように物を見られるわけじゃない。
そしてスライムの知覚は、自分の視点は元の人間っぽい視点だけど、本当の意味でそうじゃない。
そんなこともあってどうやれば擬態できているかは謎だったりする。
擬態スキル使えてるかわかんなくね?
これが魔力を使っているとかそういう明確に基準としてわかるものがあればいいんだけど。
そうじゃないとなー。
天井に張り付いて、擬態して急襲ということをしたいんだけどうまくいくものなのか。
ちなみに普段からやんないのって思うかもしれないけど、迷宮の天井はそれなりに見えるのでスライムがいたらわかる。
スライムと迷宮の壁とか天井とか床って明確にスライムと色が違うから、かなり暗い状態でもなきゃわかる。
だから擬態スキルがいるのさー。なくてやれればよかったんだけど。
まあ、魔物相手なら? 急襲とまではいかなくとも上から襲うくらいはできるかも。頭悪ければ。
人間相手は無理だねー。ま、人間は襲うつもりはないけど。
ひとまず、道端、通路のちょっと暗めな部分を探してそこで擬態してみる。穴が近い場所で。
仮に擬態が効いていなければ襲ってくるから分かる……かな?
何でもやってみるのが一番。色々やって、こんな感じってのがわかればそれなりにいける! 多分。
あ、でも人が来そうなら逃げる。怖すぎ。
ん、まあいくらか魔物相手ならば効くっぽい……? 人間相手もまあそれなり?
人間はなー。スライム一匹狙いは損だから意図的に無視してる可能性もあり得るのよなー。
ま、ほんとに擬態でばれていないって可能性もあるけど……
過信は禁物。過信した時が死ぬときさ。
とりあえず魔物相手はあれなんか違うみたいな風には思うようだけど、そこまで自身はないみたい。
魔物って頭悪いのかな。ま、その辺の魔物は程度が低い可能性はある。
スライムとか本能の生き物だもの。え。自分スライムちゃうんかって?
スライムですよ。自分はちょっと例外ッスわ。
さて、今自分は天井にいるのです。天井で擬態して……いや、まんま天井にいるわけじゃないのよ?
天井といっても、通路の曲がり角の端のところ。ここならバレにくいかも、と思った感じで。
普通は通路が直角なので角が変だとおかしいなと思われるかもしれないが……
床は割と何かあったり積もったりはしてる。
そういうところは餌場でスライムが寄ってたりするけどね。それを狙う人間が来たりもするけどね。
ま、上には全く注目されないわけだけど。
擬態だからそのあたりもなんとかしてくれるかもって思いもある。
なお、魔物相手には効果覿面で全く気にされない。おかげで魔物は狙いやすいのよなー。
ま、一体で来てくれなければ狙えないし、周りに魔物以外の……人間とかがいたらまず無理。
音の可聴範囲みたいのは意外と広い。
音で聞くのではなく振動を感知しているからか? まあおかげで感知しやすくていい。
そして、それは今、一人で通路を歩くゴブリンの存在を映し出しているのです!
さあ、襲えわがビッグスライムの体よ!
頭に乗っかって目を、口を、鼻を。呼吸を殺す。
ぎゃふん! ええい、武器を取り落としたのはいいが手で叩かれる!
まあ、核には当たってないし痛くもないからいいけどさ!
叩くだけだとそれほどばちゃばちゃしないからいいけどさ!
さあ、呼吸がいつきれるかな。いっそ肺に入り込んでやろうか。
それとも目を潰す? 抉り出す? 脳を焼いてみるか?
何でもやってやるぞ! いよし、口の中で圧縮を解除だ!
ソウみたいにパーンってやってやらあ!
できた。いや、ちょっとひどくないこれ?
体が分断されるかと思ったわ。全身入り込んでからやれってことですね。
しかし、どうしよう。これだけでかい獲物がとれるだなんて。いや、まあ、いいんだけどさ。
問題は食事時間なのよ。消化能力は高くなっても、消化時間がそこまで変わるわけではないの。
だってさ、表面積的な問題だからね。
あ、でも今の自分はビッグだからそれなりに包める? いや、それはいい。
大きくなった場合の問題は動きの問題。
大きいとその分動きが重くなると言うか、細かい動きがしにくくなると言うか。
速くできる部分もあるんだけど、やはりネックとなる部分も結構大きい。
それに食べている間に他のスライムも寄ってくる。
こっちにどうにかされる危険はあるとしてもやはりこれだけの餌は魅力的なのだろう。
別に幾分か譲ってやっても良いが。
いや、重要なのはどれだけ食べるかではなくて、安全の確保なの。
できるだけ餌を手に入れた上で安全に食べきること。
うーんどうしよう。小さい状態だと食べれる量が減るし大きい状態になると逃げ足が遅くなる感じ。
なんとか小さい状態で食べれる量を増やせないものか。いや、無理か。ん? いや、待てよ?
今の小さいサイズは圧縮で小さくなってるのよね。
なら、自分の中に物を包み込んだ状態で圧縮をすれば?
……ちょっと頭だけ、首までのところで。ちょっと大きくなって包み込んでー圧縮!
できたー!!!!
と、言うわけで今は穴の中。
小さくなった状態でそのサイズまで包み込んだ時の比率的圧縮されている餌を食べています。
やっぱり安全の確保が一番よね。安全安心でこつこつちまちま。
うん、まあ積極的に大きな餌を狩れるのはおいしい。
これからも魔物を積極的に狙っていこう。
まあ、やばくなりそうになったらしばらくずっとは隠れて過ごすけどなー。




