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そう言えばこの主人公は猫を飼っていた気がする

名前:アズール(109612歳)

クラス:竜戦士・空間使い・錬金術師

HP:1214076/1214076

MP:840153/939924

状態:なし

技能:槍術ⅩⅩ 体術ⅩⅩ 投擲ⅩⅥ 竜気ⅩⅨ 竜魔法Ⅺ 空間魔法XⅥ 転移魔法ⅩⅢ 錬金術Ⅳ 調合Ⅱ 不老-



なんかすごい人来ちゃった・・


「お前がレイタだな、さぁ行くぞ」


「ま、待ってください。その件ならもう大丈夫なんです。せっかくおいで頂いたのに申し訳ありませんが先祖帰りについては無事収まりました」


「どういうことだ?」


「つまり教えて頂く筈だった前世帰りの制御する方法を教えていただく必要が無くなったという事です」


「それは駄目だ。もう神より報酬である財宝は貰ってある。あの財宝は返さない。だからお前には最低でもⅠ年は修行をしてもらう。さっさと来い!」


「ええ!?」


「安心しろ。修行ならすぐに終わる。これからお前が行くところは時間の流れが異なるところだ。そこに1年ほどいたとしても、こっち側では1日しか時間が立っていないだろう。だから行くぞ」


ん?この世界には重力と時の部屋みたいなところがあるのか?

あ、超行ってみたいかも。


「わかりました。せめて家族に1日出かけると伝えさせてください」


「早く伝えてこい」


―――


「なるほど、ここが重力と時の部屋ですか・・」


アズールさんの転移魔法で一瞬にして知らないところへ飛ばされました。森があり山があり野原の中にどんと神殿があるようなところです。昼間ほどの明るさはあったものの空を見上げると太陽がないのはやっぱり特殊な空間だからなんだろうと思いました。


「重力と時の部屋?なんだそれは?ここは賢者の石の箱庭だぞ」


「僕の知ってる修行方法で似たようなところがあるのですよ。人間を殺しまくる人造人間を倒すために、ここみたく時間の流れが異なるところでかつ重力が通常よりも10倍になっていて、そこで1年ほど修行することによって強くなった戦士のお話があるんですよ」


「ほー、それは面白いな。いいだろ。ちょっとこの空間の重力を10倍にしてみよう」


「え?できるんですか」


ひゃっほー!異世界に来てよかったよ。ここに1年もいれば、俺、スーパー日本人になっちゃうんじゃね。よーしパパ、スーパー日本人Ⅲくらいにがんばってなっちゃうぞー!


「よし、これで重力10倍だ」


ボキ、ボキボキ、ドタ、プシャァ。俺は地面に突っ伏して意識を失った。


―――


意識が戻ると知らない所にいた。


「やぁやぁ、レイタ君。やっとお目覚めだね。体の具合はどうだい?」


なんか知らない人がいた。


「えっと、アルベルトさんでしたっけ?僕はどうなっちゃったんでしょう」


え?なんで俺この人の名前知ってるんだろう。確かこの人って錬金術師だよね。


「そうだね。どこから説明すればいいかな。まずはうちの相棒のアズールは馬鹿なんだ。本当に申し訳ない」


「はぁ」


「で、アズールがこの箱庭の重力値を10倍に変更した結果。人間である君の体はそれに耐えられなくなってところどころ骨折し、地面に倒れた際に首の神経も損傷、急増した血圧に耐えられなくなって全身の血管が破裂した」


なるほど、人間て10倍の重力には耐えられないんだな、なんか、がっかりだよ。やっぱり漫画は漫画だよね。


「そんなになって僕、よく生きてましたね」


「ほぼ死んでたよ。仕方が無いんで竜の血と君の体を錬成した。」


「え?竜の血って。それって大丈夫なんですか。確かおとぎ話に不老不死が手に入ると魔術師に騙された王様が数千人もの兵を犠牲にして手に入れた竜の血飲んで結局スライムになってしまって、最後は勇者に焼かれて死んだという話がありましたけど・・」


「うん、それっておとぎ話じゃなくて実話だね。竜という種族はね。財宝を集めるのがとても好きなんだ。だから財宝を無くすこと、奪われることに対して最も嫌悪感を持つ種族なんだよ。だから人間が竜の血や鱗、肉などを価値あるものと認識した段階で無理やりそれらを手に入れた場合呪いを受けることになるんだよ。だからそういう手段で手に入れた鱗を加工して作った鎧なんかを身につけてると多数の魔物をおびき寄せて力尽きるまで戦うはめになったり、その王様みたくスライムに変えられたりするんだよ」


「はぁ」


「でも、君の場合は大丈夫だよ。君の体に錬成した竜の血はアズールによって与えられた物(・・・・・・)だからね。つまり呪われてはいないよ」


「え?それって、僕、不老不死になっちゃったってことですか?」


「ああ、ソレはないよ。アズールがせいぜい不老程度なのにその血を錬成した君が不老不死になるわけないじゃないか。せいぜい寿命が1000年くらいになって普通の人間より再生能力が高くなった程度だよ。あとは本の少しだけ魂に影響を受けたかもしれないって感じだと思うよ」


「あ、あの寿命が1000年って・・それ人間辞めてるんじゃ?」


「ん?別にその程度生きる生物は結構いるし、人間の中にも魔力制御の長けたものが普通にそれくらい生きることもあるし、僕に言わせれば1000年なんてあっという間だよ」


名前:アルベルト(賢者の石の精霊・146025歳)

クラス:錬金術師

HP:73891/1214076

MP:310923/939924

状態:なし

技能:錬金術ⅩⅩ 調合ⅩⅩ 竜気ⅩⅠ


あかん、この人。よくみたら人外だ。絶対言葉を鵜呑みにしちゃあかんタイプの人だ。

というか、もう手遅れだ。俺、たぶん、人間辞めちゃったよ・・

さっさと修行終えてここを出ていこう。


「あのー、ところでアズールさんはどこに?僕、ここには前世帰りを制御する修行しにやってきたのですが」


「ああ、アズールなら体内の血を半分ほど抜いちゃったからね。(うち20分の19が錬金術の素材用)2,3日は動けないと思うから、君もゆっくりしていくといいよ。ところで君・・」



―――


「よし、改めて。修行を行うぞ。まず、これが竜人モードだ。ふんっ」


アズールの皮膚は全身黒い鱗で覆われ体も一回り大きくなり顔つきも変形し頭に立派な竜の角が生えていた。


「そして、これが暗黒竜だ。はあああああああああああああ!」


今度はもう人間の原型がなくなるほど変形し、そして20mくらいの大きさになった。初めて見る竜に恐怖は感じなかったものの蛇に睨まれたカエルのごとく体が動かなかった。

アズールは人間の姿に戻ると俺にこう言った。


「よし、やってみろ」


「へ?」


「どうした、さっさとやれ」


「あのーどうすれば?」


「見ればわかるだろう」


あ・・この人、まじで馬鹿だ。見て覚えれとか言うキチガイ職人系だよ。


―――


どうみても神様の人選ミス。別に前世帰りの修行をする必要なんかもう無いんだけど、なんか残りの時間ここでぼーっと暮らすのもアレなのでアルベルトさんにどうすればいいか聞いてみた。


「ああ、実を言うとだね僕は賢者の石に取り込まれた存在なんだ、それでその賢者の石をアズールの体に取り込んでる関係で僕は彼の感覚的なものがわかるんだけど。魂をまずは起こして、今度はそれを肉体に接続する感じかな。具体的に言うと魂から糸みたいなものをだしてへその緒に繋げてやる感じだよ」


「なるほど、ちなみに魂を起こすのってどうやるんでしょう?」


「うーん、それは難しいねー。瞑想ってわかるかな?ともかく何も考えないことだよ。そうすると段々、目に見えているものとか無くなるんだけど、最終的に精神世界的なものが残りそのどこかに魂がある。あとは魂に触れて起こすだけなんだけど。アズールならともかく何も考えないなんてこと難しいよね。あはは。まーがんばりなよ。もし上手く習得できたらアズールが役立たずなお詫びにご褒美用意しとくからさ」


―――


それから数週間。

座禅を組んだり。急遽作ってもらった滝に打たれてみたり。いろいろやってみたけど。結局、眠いだけだった。俺自身に瞑想の才能がないのか。俺が元いた世界の瞑想法というのが全部嘘っぱちだったとしか思えない。なんか、どうでもいいかなと思い始めた時。


俺の生霊使いとしての勘が働いた。


俺は生霊を物体に憑依させて操ることができる。もし、それを生き物に行った場合どうなるか。なんとなくだがアルベルトさんの言っていた精神世界に辿り着けそう気がしていた。

俺は自分の左腕を右腕に握りしめて


「俺の体に宿れ、ドッペルゲン・・」


俺は嘔吐した。そして思い出したのだ。かつて飼っていたマーオという猫のことを・・


―――


3歳の時だったと思う。母ルモモが商人と駆け落ちして出ていったあと、俺はあまりの居心地の良さに村長の家に事実上住んでいた。

俺が実の家を捨てて1ヶ月ほどした頃。村長の家の前でマーオが倒れていた。あまり食事を取っていなかったのだろうマーオはガリガリだった。ソレを見た瞬間、俺は全てを悟った。

タモサクが精神的にかなり病んでいたことは知っていたが、あいつはマーオに餌を与えていなかったのだ。猫なら自力で餌を捕まえられると思うかもしれないが、それは野良猫の場合である。飼い猫であるマーオの首には鈴が付けられていた。ネズミ等の生き物を生で食べることで病気を感染扠せられないように自分で狩れないようにされていたのだ。


俺はパムおばさんに頼んで残飯を出してもらった。

水と残飯を持っていってやるとマーオはぴくっと鼻を動かして、よろよろになりながら残飯を食べ始めた。久しぶりの飯だったのだろう。


「にゃーお」


「お食べ」


「にゃーお」


「いいからお食べ」


「にゃーお」


「うんうん、良かったね」


「にゃーお」


その日を境にマーオも村長の家で暮らすことになった。


6歳になった時のことだった。俺の生霊使いとしての勘が働いた。

クラス持ちの人間には勘が働くことがある。自分の力がどんなものなのかとか自分の力をどう扱えばいいのかとかだ。


俺は読んでいた本を触りながら


「この本に宿れ、ドッペルゲンガー」


そう口にしたら。俺の生霊は本と繋がっていた。そして体を動かすようにページを捲ることが出来たので俺は自分の能力が次の段階に進んだことに歓喜した。


次の日から、外に出て訓練するようになった。石ころを手にとって少し遠くに置いてあるバケツに憑依させた石ころを投げて、バケツの中に上手く誘導する訓練とかをした。俺の憑依能力はあっという間に成長を遂げていった。

動かないものから動くものに訓練の標的は変わる。

何度も何度も飛んでいる小鳥とかに投げて訓練した。動くものに当てるのはとても難しかった。が、一度成功すると面白いように当たるようになった。


ちりん


草むらから俺の落とした小鳥を加えたマーオが出てきた。


「にゃーん」


たぶん、食べて良いって聞いてるんだなと思った。


「いいよ、お食べ」


「にゃーん」


わーい、嬉しい。そんなことを言っている気がした。


俺は美味しそうに小鳥を食べているマーオを撫でながら、考えてしまった。

もし生き物に生霊を憑依させたらどうなるのだろう。と


「マーオに宿れ、ドッペルゲンガー」


新しく繋がった視覚領域には何かもやっとしたものが写しだされていた。やっぱり生き物は違うんだなと思い。そのもやっとした空間を彷徨っていたら、小さな光の塊を見つけた。

俺はその光に侵入させた生霊を触れさせた。


ぱちん


何かが弾けたような音が聞こえた気がしたが、侵入させた生霊はマーオの体に完全に憑依していた。

猫ってこんな感じに周りが見えているんだね。

俺はそのままマーオの体を操りながら家に帰った。


「パムおばさん、ただいま~」


「レイタちゃん、おかえり~、ご飯出来ているから、ちゃんと手を洗うのよ」


俺はマーオを居間のいつもの指定席に寝かせて憑依を解除して手を洗いにいった。

居間にはじっちゃん、ピーマとミゥ、アックスおじさんがいてパムおばさんが食事をテーブルに並べ始めた。

食事を食べ終えた頃にパムおばさんがマーオが食べていないことに気づく。


「あれ?今日はマーオちゃん、どうしたのかしら。いつもならがっついて食べるのにね~」


マーオは憑依を解除した時のままのポーズだった。ただ息はしていたので眠っているだけなんだと思った。


「さっき、小鳥食べてたからお腹いっぱいなのかも」


俺がそう答えるとパムおばさんに「病気になっちゃうから生で食べさせたらダメよ」と怒られた。



次の日、じっちゃんがマーオを庭に埋めた。俺はただ泣いていた。ミゥも泣いていた。



―――


「どうした?レイタ。飯はちゃんと食った方がいいぞ」


「すいません、今日はそんな気分じゃないんです」


「何があった?言ってみろ」


正直、一人になりたい気分だったが、アズールさんは空気を読めるような人じゃなかったので素直に答えた。


「昔、飼っていた猫がいたのですが、その猫、僕が殺してしまったんです。でも僕、その事、忘れていたんです。いえ、忘れようとしていたんです。今日そのことを思い出して自分が嫌になりました」


「なんだ、そんなことか」


「そんなことって・・」


俺はこの人にこんな事を話すこと自体間違っているんだなと思った。


「いいかレイタ。俺は昔、友人を殺されたことがある。だから、殺した奴らを殺してやった。そしたら、友達が帰ってきた。お前がその猫を殺したことについて悪いと思っているのなら、自殺でもすればいい」


「自殺はちょっと・・」


「だったら、忘れろ。それが無理なら新しい猫でも飼って大切にしてやれ。悩むくらいなら行動すればいいんだ」


あまりにも堂々と語るアズールさんを見ていて俺は自分が悩んでいることが馬鹿らしくなった。


―――


「宿れ、ドッペルゲンガー」


マーオに憑依した時同様にもやっとした空間にいた。

俺は魂を探し求め、その空間を彷徨い続けた。時間の感覚が無くなるほどだった。

そして俺は見つけたとても大きな黒いオーラを放つ光の塊を。


確か、触れればいいんだったな。俺はアルベルトさんの言葉を思い出していた。

俺は魂に触れ・・・ることができなかった・・

マーオごめんよ、ごめんよ。


「にゃーん」


どこかから、大丈夫だよ。そんなことを言われている気がした。

俺は妙な安堵感を感じて魂に触れることができた。

俺の霊体に何か膨大な力が流れてきた気がした。

そして本能に身を任せるまま叫んだ。


「出てこい!黒い前世霊(ブラックパースト)!」



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