父危篤。その時、息子は何を思うのか
自分の家じゃないのに、何故か村長の家の中に自室がある少年レイタです。
ぼーっと今日手に入れた石を見つめること1時間。
(これって金に変えたらたぶん細々と生活すれば一生働く必要ないよな・・)
人間のクラスの取得パターンは3つある。
・生まれつきクラスを持って生まれてくること。
・神や精霊などの次元の違う存在から加護が与えられたと同時にクラスも与えられるケース
・クラス持ちの魔物を倒した際に稀に作られるクラスストーンに魔力を込めることによって適正のある者がそのクラスを取得するケース。
レイタの持つ生霊使いと言うクラスは前世で持っていた生霊を作り出す能力を元に地球の神が調整して作り出した与えたものだ。
言わば生霊使いとは現時点でこの世界にレイタ一人しかいないというユニーククラスである。
戦えるクラスのある無しは大きい。
簡単な根拠を上げるならばレイタの住む村で魔物とまともに戦える者は3人しかいない。
領主が派遣している剣士の二人。
そして8歳のレイタである。
この村の住人の大半は農民である。例え大人であっても農民は農民である。残念ながら彼らの戦闘能力は低い。畑を荒らす動物相手ならともかく農民が魔物と戦えば必ず大怪我を負うことになるだろう。
もしレイタがクラスを持たないただの子供であったならば。迷うことなく今日手に入れたクラスストーンに魔力を注ごうとしただろう。
既に戦う力を持つ者ゆえにレイタは悩んでいたのである。
「レイタ!レイタ!ちょっとレイタ!」
従姉のミゥ(9歳)である。
「ああ、ごめん。どうしたの?」
「お母さんがタモサクおじさんのとこに猪の肉を届けてだってさ」
「ああ、あいつのとこか。悪いけど代わりに行ってきてくれる」
「ちょ!嫌よ。タモサクおじさん気持ち悪いし、あんたの父親なんだからあんたが行きなさいよ」
「ああ、でもミゥのおじさんだし、ミゥが行った方がいいような」
「そうよね。私のおじさんなんだし私が行くべきよね。って違うわボケ!」
―――
ガラガラガラガラ
何日ぶりだろう。本来の自分の家のドアを開ける。
中に入ってみたが本当に人が住んでるのかと思うほどに人の気配を感じない。
タモサクはまだ畑仕事でもしているのだろうか。それならそれでいいや。
別に顔とか見たくないし、このまま肉だけ置いて帰ってしまおうかと思った時、俺は只ならぬ気配を感じてしまった。
「ドッペルゲンガー!」
条件反射的に生霊を発現させ、俺に突然悪寒を感じさせたあたりを見させる。
肉眼では気付かなかったが、夫婦の部屋(今はタモサク専用)だったところから黒いモヤのようなものが溢れ出していた。
「タモサク、大丈夫か?返事をしろ!」
俺は部屋のドアを開けて中を覗く。そこには布団で寝ているタモサクとタモサクの枕元に立つ黒い人影があった。この黒い人影はやばいぞ!
俺は迷わずポケットから石を取り出す。
「この石に宿れ!ドッペルゲンガー!ぶちかませ!」
俺は躊躇なく石を黒い影にぶつける。
黒い影は爆散し壁に大きな穴を開けた。
「やったか?」
俺の全力の攻撃を受けたのにも関わらず、黒いモヤが集まりだし、再び黒い人影となってしまった。くそなんなんだこいつは。
「ドッペルゲンガー、黒い影の識別情報をパターンBで表示しろ!」
種族:病魔
クラス:呪術師
HP:0/0
MP:0/0
状態:死のカウントダウン(47:56:12)
技能:呪いⅤ
なんだ病魔って?この世界にはそんなもんが本当に存在するのかよ!分けがわからん。しかもこいつHPもMPも0だ。どうすんだこれ。どうやって倒せばいいんだ。しかも死のカウントダウンが残り2日切ってやがるこのままだとタモサクが死んじまうだろ。考えろ俺!
「ドッペルゲンガー、タモサクの識別情報をパターンAで表示しろ!」
名前:タモサク(農民・27歳)
クラス:なし
HP:1/22
MP:0/4
状態:諦めの境地
技能:なし
くっそ、なんだよこれ。お前まだ27歳だろ。てか何諦めてやがるんだ!このままだと前世の俺より早く死んじまうじゃねーか。諦めんな!