ドッペルゲンガー
(まあまあまあ、農民の子供だったのは仕方ない。例えるなら野球の初回で先頭打者ホームランを食らった程度のダメージ、巻き返そうと思えば巻き返せるはず!物語はまだ始まったばかりだからテンション上げて行こう!)
前世では彼女と結婚しようと思い、農家をやっている彼女の実家に挨拶しにいったら「派遣社員がどうやって家族を養っていくつもりだ。子供生まれてもまともに育てることもできねーだろ」なんて事を言われて「農家の子供に生まれて農家を継ぐよりは幸せにできます!」と答えたせいで彼女と別れさせられた俺だけど、農家の子供、全然大丈夫!なんか長男な気がするけどノープレブレム!
どうせ農民だろ、そのうち大量に子供生みまくるだろうから新しく生まれてくる兄弟に農地なんぞ押し付けてやればいいのさガッハハ
それになんと言っても俺には前世から継承した力がある。ええとなんだっけ?そうだ!生霊を作り出す能力、それを使えば脱農家超余裕なはず。
よーしパパ早速能力使っちゃうぞ!ええい!
……
あれ?どうやって使うんだ?
そう思っていたら頭のなかに能力の使い方がどんどんと流れ込んでくる。おお神様ありがとう。一瞬恨みそうになったけどその事は許して!神様すごい!神様すごい!
無事、懺悔のお祈りを済ませたところで改めて能力発動。
「うきゃきゃ『ドッペルゲンガー!』」
頭の中でそう念じたら、なんか体の中からメリメリと音がしてきたような気がする・・・
痛い痛い痛い痛い痛い!これ絶対やばい奴。ブチッと何かが千切れたような感覚の後、僕は意識を失った。
―――
目が覚めた。
うん、これはスゴイ。意識を取り戻した僕は再度神に感謝する。
何がすごいのかと言えば。
まずは通常の視界がドーン!
そして更にその上に生霊の視界がドーン!
例えるなら某携帯用ゲーム機のアレ。スクリーンが2つある奴だよ
片方は肉体の視界、そしてもう片方はさっき作った生霊の視界
特に生霊の体のほうが素晴らしい
まだ生後半年だから肉体のほうがまともに動かせないというのもあるけど、さっき作り出した生霊の体はもう動きまくり、思わず壁抜けしてぼろ小屋の外出てひゃっほいしてやったぜ。
「うーん、レイタの奴。珍しく笑ってやがるな」
その言葉を聞いてマックスだったテンションがだだ下がる。
寄りにも寄って農民の分際で俺を産みやがった父親である。
「いつも笑ってますよ」
「そうか?あいついつも無表情だぞ」
お前の前ではな!
どうも肉体的本能なのか農民とは言え母親のことは嫌いにはなれない。だが父親は別である!
農民であるこいつと血が繋がっているかと思うと実に腹立たしい。
できることなら殺してやりたい。でも今はダメだ。今こいつがいなくなると俺が生きていけない可能性がある。そして跡取りがいないのはまずいせめて弟を産んでからでないと自動的に俺が農民になってしまう。それだけはダメだ。俺は絶対に農民になりたくない!
と、まーイラッと来たので寝たふりをする。
そして脳内の能力マニュアルにある情報の視覚化とやらを試すことにする。
なんか神様と合ったときに千里眼として使えるとか言ってたのはさっきぼろ小屋の外に出てみたのでなんとなくわかった。何気に物体素通りできたりするから某猫型ロボットの出てくる世界ならシズカちゃんの風呂除き放題だぜ。
で、情報の視覚化というのは見たいものを見たい形で表示できるらしい。
本当は声に出したいが寝たふりしてるので念じてみる。
『生物の名前と職業の表示及び生命力と魔力を数値として表示せよ!ドッペルゲンガー』
名前:タモサク(農民)
生命力:21/25
魔力:4/4
名前:ルモモ(主婦)
生命力:17/18
魔力:12/14
名前:マーオ(ペット)
生命力:5/5
魔力:29/36
名前:レイタ(赤ん坊)
生命力:2/2
魔力:8998/10000
おおおおおお、猫なのにマーオの魔力が大人二人より多い。ていうか一日中寝てるようにしか見えないのに一体何に魔力使ってるんだこの猫は。
なんか見ちゃいけないものを見てしまった気がするけど俺は何も見なかった。