謎の老人
4話目、投稿が少し遅れました。
何かの鳴き声が聞こえる、それに気づいた事で意識が覚醒し始めた。
そして目を開くと、自分が小部屋のベッドに寝かされている事が分かった。
(ここ、どこだろう?)
寝起きのぼんやりとした頭で部屋の中を眺めながら考えるものの、答えは浮かんでこない。
頭を振って眠気を振り払いとりあえずベッドから降りようとした時、自分の体の変化に気づいた。
(ちょっと高いなこのベッド・・・いや、俺が縮んでるのか?)
ベッドから降り、改めて部屋の中を見回すと天井が随分と高く見える。
「手足も細くなってる、やっぱり若返ったって考えるべきかな。」
そう呟いていると、部屋の外に誰かの気配を感じた。
(この小屋の持ち主かな?状況からして俺は助けてもらったみたいだし、確認してお礼をいうべきだよな。)
考えがまとまると同時に扉が開き、一人の老人が食事の乗ったお盆を手に持って入ってきた。
そして俺が目を覚ましていることに気づき、
「目が覚めたのか、良かった。」
笑顔で口にした。
言葉も分かったので俺が自分を助けてくれた人か確認するために口を開こうとした瞬間、
「グギュルルゥ」
盛大に腹が鳴りやがった・・・。
(なんでよりによってこのタイミングで腹が鳴るんだよぉぉ!)
確かにいい匂いがするとは思ったけど今じゃなくたっていいだろうが!じいさんも目を丸くしてるし、余計に恥ずかしいよ!
「食欲はあるようだし、まずは食べようか。話はそれからでもいいじゃろう。」
「・・・アリガトウゴザイマス。」
じいさんが用意してくれた食事は、パンに肉と野菜の炒め物(種類は不明)、野菜入りのスープというシンプルな物だったが空腹だったこともあって非常に美味しく感じられた。
おかげで心も落ち着き、食事の合間にじいさんの様子を観察する余裕も出来た。
服装は黒で統一された丈夫そうなズボンとゆったりとしたシャツで、髪は全て白く染まっているからかなりの高齢に見えるが、姿勢は一本芯が通ったように真っ直ぐだ。そして一番の特徴は、左腕がない事だろう。
(見た目だとかなりの高齢、でも姿勢はいいし武術の経験があるのかな。左腕に関しては・・・聞かないほうがいいかも知れない。)
そんな風に考えているうちに食事も終わった。
食事を終え、一息ついたあたりでじいさんが自己紹介を始めた。
「まず初めまして、ワシはゼギル。見ての通りこの小屋で暮らしとるジジイじゃ。」
「こちらこそ初めまして、ノブユキといいます。あの、俺をここまで運んでくれたのは貴方ですよね?その上食事まで用意して頂いて・・・本当にありがとうございます。」
「そう畏まらんでくれ、ワシは当然の事をしただけじゃ。」
そこで一旦言葉を切ったゼギルさんは僅かに目つきを鋭くし、
「しかしお前さんのような子供が一人でここに来るのはいただけんの、その上無防備に眠りこけるなんぞ獣の餌になるようなもんじゃぞ。」
と言い聞かせてきた。
「すみません。」
それだけ俺が置かれていた状態は危険だったことが、ゼギルさんの厳しい口調からは感じられたので素直に頭を下げる。
「分かってくれればそれでいいんじゃ。もうすぐ日も暮れるから今日の所は止まっていくといい、明日になったらワシが街まで送っていこう。」
「街があるんですか?」
思わずそう尋ねると、
「お前さん、てっきり街から来たのかと思ったが違うのかの?」
と不審そうな目で見られた。
(まずいな、これは下手すると不審者と思われるんじゃないか。かと言って異世界から来ましたなんてバカ正直に言うわけにはいかないし。どう答えればいいんだろう。)
先ほどまでとは違う難題に頭を悩ます俺だった。
大まかな流れは頭にあるけれど細部を煮詰めるのがけっこう骨ですね。




