仲間と目指す場所
更新が大幅に遅くなって申し訳ありません。この話でこのシリーズは完結とさせていただきます。
パーティ結成のお祝いがあった次の日の朝。俺はいつも通りに宿の手伝いと修練を済ませ、そのまま休憩しながら昨日の事を思い出していた。
シェリルさんが自分の正体を告げた後も特に皆の態度が変わることはなかった。ユウナさんは既にシェリルさんがサキュバスだと知っていたのだろうし、俺もゴブリンギガントとの戦いで魔法を使うところを見ているから予想は出来ていた。
けれどじいちゃんをはじめとした3人は予備知識もないままそれを聞かされたにも関わらず、全くと言っていいほど態度を変えなかった。なぜそんなに落ち着いてるのか聞いてみると3人とも「なんとなく分かった」ということだった。なんだそりゃ。
ガラムさんの「匂いでなんとなく」はまだ分かる。獣人であるガラムさんの五感は人族よりずっと鋭いから、匂いで人族かどうかを判別するくらい朝飯前だろうし。でも人族のじいちゃんやアンナさんまで分かるなんて予想外もいいところだ。本人たちはこれまでの生活で培った観察眼だと言っていたが、俺もそのうち出来たりするんだろうか?そんな事をつらつらと考えている内にパーティはお開きとなり、皆それぞれの部屋へと引き上げて行った。
そしてじいちゃんと一緒に部屋へ戻る途中、じいちゃんから色々聞かされた。人族の大半が淫魔や吸血鬼といった魔人族に対して偏見を持っていること、シェリルさんが自分たちに正体を教えたことの意味などを。偏見の内容こそ教えてもらえなかったが、信用できる相手でない限り正体を明かさないというのだから碌でもないものだということは予想できた。
「信頼を失うような真似をしちゃいかんぞ。」
そうじいちゃんは締めくくった。
「おーい、ノブユキ。聞いてる?」
「え、うわっ!」
気が付くとシェリルさんが俺の顔を覗き込んでいた。ほぼ目の前といっていいような距離にシェリルさんの顔があったため思わず声を上げて後ずさってしまった。
「その様子だと私が話しかけてた事にも気づいてなかったわね。それにしたって驚きすぎよ。」
無茶を言わないで欲しい、いきなり視界一杯にだれかの顔があったら普通は驚く。俺の場合シェリルさんみたいな美人と顔を合わせるのに慣れてないのもあるが。
「すいません、ちょっと考え事してました。」
「ふーん?まあいいわ。で、今日はどうするか決まった?」
「いえ、というか今日はゴブリンギガントと戦ったばかりだから探索は休むはずじゃあ。」
「探索は休むけど買い物とか武器の手入れとか出来ることはあるでしょう。まあ、考え事に夢中で何も考えてなかったみたいだけど。」
「・・・すみません。」
昨日部屋に引き上げる前に言われてはいたのだが、その後聞かされた偏見等に気を取られてすっかり忘れていた。
「どうせ私の一族に対する偏見について考えてたんでしょう?」
容易く見抜かれてしまった。じいちゃん達も大概だと思うがシェリルさんはそれ以上なんじゃないか?
「考えるのが悪いとは言わないけど、どうせなら聞いたほうが早いと思うわよ?」
「・・・聞いても大丈夫なんですか?」
正直聞いたら気を悪くするだろうと思っていたから、聞かずにいるつもりだった。なのにシェリルさんからは気にしている様子が見られない。
「興味本位や悪意があるようならお断りだけど、そうじゃないのは分かるから構わないわ。何より仲間だしね。」
仲間、か。ここまで来たらもう迷うこともないよな。
「シェリルさん。改めて言います。至らない所も多いと思いますが、これからもよろしくお願いします。」
少しでも決意が伝わるようにシェリルさんの顔を真っ直ぐに見て、右手を差し出しながら告げる。
シェリルさんは笑顔で頷くと、
「ええ、こちらこそ。」
そう言って俺の手を握り返してくれた。
こうして一人で迷宮に挑む日々は終わりを告げ、仲間と共に迷宮の最深部を目指す日々が始まった。一人の頃とは比べ物にならない程騒がしく、危険と隣り合わせなのにどうしようもなく心躍る日々。
こんな日々がいつまで続くかは分からない。最深部にたどり着くことは出来ないかもしれないし、たどり着けたとしても途中で誰かが命を失っているかもしれない。そしてその後もパーティを組み続けられるかと不安も多い。それでも俺はこの二人と一緒に歩いていく、迷宮の最深部、そしてその先にある未知の世界を目指して。
まず、ブックマークしてくださった方々にお礼を申し上げたいと思います。
初投稿の拙い作品に注目して下さり、誠にありがとうございます。
本来この話は第2章の最終話という位置づけで、構想の段階ではもう少し続くはずでした。それがこの話で完結という形になったのは私の構想が不十分だったためです。
設定、中盤のあらすじ等色々な部分があやふやな状態であることに気づかぬまま投稿し、第2章に入ったあたりでようやく気づくという体たらくでした。このままどうにか設定を練りながら続けるか、すっぱり諦めて完結させるか悩んだ結果この話で完結することに決めました。
正直中途半端な終わり方だとは思いますが、このままズルズルと続けても面白いと思える物になるとは思えませんでした。なので誠に勝手ではありますがこの話でこのシリーズは完結といたします。
一応構想している話が他にいくつかあるので、設定などがしっかり固まれば新しいシリーズを投稿することもあるとは思います。
それではこれまで読んでいただき誠にありがとうございました。




