決意と別れ
3話目、転生の準備終わり
(世界が衝突?それと俺の転生がどう関係するんだ?)
正直話のスケールが大きすぎて理解が追いつかなくなっていた俺は口を挟もうとしたのだが
「管理者に成りたての私達はそれを防ぐことが出来ず、衝突によって多くの命が失われ、世界すら崩壊しかけました。」
ソフィーティア様の声から伝わってくる悔恨と悲しみ、そして怒りに思わず口を閉ざした。
(そうだ、理由を聞いたのは俺だろう。今は黙って最後まで聞かなきゃ)
居住まいを正し、話を進めてくれるように目線で伝えた俺に頷き、ソフィーティア様は話を再開した。
「壊れかけた2つの世界は互を吸収する事で、どうにか崩壊を免れました。しかし、その崩壊によって死んだもの達の魂の殆どが衝撃で生まれた裂け目を通って異世界へと流出してしまいました。」
「その魂の1つが俺ということですか。」
「はい。魂は世界の維持になくてはならないもの、魂の流出は人体から血液が失われる事と同様です。それゆえに私達は流出した魂達を探し、回収していたのです。」
「流出した魂だけを回収しているんですか?」
「ええ、それが許容範囲であり、そして罰なのです。」
(許容範囲?罰?一体どういう事だ?)
「それについては私が話そう。」
今まで黙して話をアステリオ様が急に話しかけてきた。
「まず聞きたいが、君は世界の崩壊と聞いてどう思う?」
「大変な事だとは思うけど、正直想像がつきません。」
「人の身ではそうだろう。だが神の立場としては絶対に起きてはならない事なのだ。なにせ1つの世界の崩壊は周囲に存在するいくつもの世界にまで影響を及ぼすのだから。」
「!そんなに危険な事なんですか!?」
思わず叫んだ俺にアステリオ様は重々しく頷いた。
「そんな事態を起こしかけた私達は当然管理者としての能力を疑われ、とある試練を課せられたのだ。」
「試練ですか?」
「私とソフィーティアだけでペルムリディアスを復興する、という試練だ。他の神の助力が得られぬ為、他の世界から魂を送ってもらう事が出来ない。私達が招くことが出来るのはかつて管理下にあった、流出してしまった魂だけなのだ。」
話を聞いた限りだと二人とも相当苦しい状況らしい。
誘われた理由、そして二人が置かれた状況、色々と分かった。
だから、この質問で最後。その答えで俺の答えを決める事にした。
「ソフィーティア様、アステリオ様。」
俺の考えが伝わったのか、二人の顔も険しくなる。
「そんな大変な思いをしてまで世界を復興させようとするのは何故ですか。」
そして二人は
「「この世界が好きだから。」」
微笑んでそう答えた。
(この世界が好きだから・・・か。)
それはとても真っ直ぐで、俺の迷いを消し去る位強い気持ちのこもった言葉だった。
だから俺もありったけの気持ちを込めて
「連れて行ってください、貴方達の世界へ。」
そう告げた。
俺が転生する事を了承した途端、アステリオ様は大はしゃぎし、ソフィーティア様も顔を綻ばせている。
本当にこの人達は自分達の世界が大切なんだと微笑ましい気持ちになったが、このままでは話が進まなそうなので一旦落ち着いてもらうことにした。
「喜んでる所すみませんが、ちょっといいですか。」
声を掛けられたアステリオ様が慌てて取り繕うがどう考えても遅いですよ。
「ごほん。何かな?」
「名前を持ったままの転生はできますか?後、こっちの世界から俺に関する記憶を消したいんですが。」
そう聞いたら何故かアステリオ様が固まってしまったのでソフィーティア様の方を見ると、
「できなくはないわ。名前はある程度成長した状態で送れば済むし、記憶もこちらの神に頼めば可能でしょう。けれど」
1度言葉を切り、
「そうした場合、貴方の存在はこちらの世界から完全に消える。それでもいいの?」
心配そうな顔で聞いてきた。
「いいんです。」
そう、恩もロクに返せないまま死んだ親不孝者なんてさっさと忘れてほしい。その方が幸せだと思うし。
俺の考えが変わりそうもない事は伝わったのだろう、ソフィーティア様は苦笑すると
「アステリオ。」
呼ばれてやってきたアステリオ様とともに俺に向けて手をかざした。
二人が手をかざした途端、俺の中に何かが流れ込むのが感じられた。
「今のは・・・」
「スキルを与えたのだよ。君があちらで生きるための助けとなるように。」
「そして事情を知り、そのうえで転生を選んでくれた貴方への祝福でもある。」
その言葉が終わった途端周囲が暗くなり始める。
「スキルを得た事で君はペルムリディアスの一部と認識された。」
「ようこそ、ペルムリディアスよ。」
その間にも周囲はますます暗くなり、
「貴方の新しき人生に幸多からん事を」
ソフィーティア様のその言葉を最後に、俺は意識を失った。
転生の準備だけで3話、もう少しテンポ上げたほうがいいかな。