実力の差を見せられました
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シェリルさんの提案を受けて3人で迷宮へと向かうことになった。一時的なものとは言えやはり人数が増えるのは心強い。といっても相手が自分より年上の女性だとか、上手く連携できるのかとか不安要素もある。
なのでその不安を少しでも解消すべく迷宮に着くまでお互いの自己紹介を始めたわけだ。
「なるほど、それで迷宮に行くようになったのね。」
「しっかりしてますね。」
カシェルちゃんの方がよっぽどしっかりしてると思うけどな。まあ、この2人はカシェルちゃんの事を知らないだろうし、言っても意味はないだろう。
「とりあえず俺の話はこれぐらいです。で、次は・・・。」
どっちから聞けばいいのかね。立場的にシェリルさんを先にしたほうがいいのか?
俺が悩んでいるのを察したのか、シェリルさんが話しだした。
「次は私ね。冒険者になったのは様々な国に出入りできるからよ。」
「旅が好きなんですか?」
「そういうこと。様々な国に行ってそこにしかない物を見聞きするのが楽しいの。」
旅か・・・。いつか俺もこの街を離れて旅に出たりするんだろうか。正直想像できないな。
「で、武器はコレと体術。もう一つあるけどそっちは秘密ね。」
そう言って腰のあたりに下げられた鞭を軽くたたく。秘密の武器か、気になるけど俺も調合とかは黙ってるし詮索はするべきじゃないよな。
「じゃあ、次は私ですね。私は成人してしばらくした頃にお父さんが病気になっちゃって、その治療費を稼ぐためです。」
「?それだと冒険者にならなくても良かったんじゃ。」
「最初はお店とかに奉公してたんですけど、馬鹿力な上にドジだからよく物を壊したりしてクビになっちゃったんです。そこをシェリルさんに拾われて冒険者になったんです。」
「それからはずっと2人で旅してるんですか?」
「はい。最初は恩返しのつもりだったんですけど、いつの間にかシェリルさんと旅をするのが楽しくなって。」
「お父さんの具合はいいんですか?」
「冒険者になって3年ぐらい経った頃に完治して、その頃には妹や弟たちも立派になってて私がいなくても大丈夫なくらいだってお母さんに言われました。」
『旅の様子を話してるアンタはすごく楽しそうだったよ。ウチはもう心配いらないから行っといで。』
「それでシェリルさんと旅を続けることにしたんです。」
ユウナさんは嬉しそうな顔でそう締めくくった。
そうしてお互いの紹介が終わってしばらく経った頃、迷宮の入口へとたどり着いた。
「ここが迷宮の入口?」
シェリルさんは首をかしげているが、見た目はただの洞窟だし無理もない。
「とりあえず入りましょう。」
「待って。」
入ろうとした俺をシェリルさんが呼び止めた。
「ユウナを先頭、最後尾が私という順番にしたいけどいいかしら?」
防御の厚いユウナさんを先頭に、気配感知のある俺が真ん中で警戒、最後尾をシェリルさんが固めるってかんじかな?特に異論は無いので頷いて同意を示し、3人で迷宮へと入っていった。
「うわぁ~。」
「本当に地上と変わらない景色なのね。」
初めて見る禍の森の景色はユウナさんとシェリルさんにも珍しいものだったようで、感嘆の声を漏らしている。とりあえず2人の邪魔にならないように黙りながら、気配感知で周囲を警戒しておく。
そうしていると5つの気配がゆっくりとだが近づいて来るのが分かり、2人に警告しようとしたが。
「何か近づいてきてるわね。」
「あ、本当ですね。だいぶ離れてますけど。」
俺が知らせる前に2人ともあっさり気づいてしまった。
「今ならやり過ごせると思いますけど、どうします?」
そう尋ねると、シェリルさんは少し考え込んでから口を開いた。
「お互いの力も見ておいたほうがいいし、迎え撃ちましょう。」
この階だと大した相手はまず出ないし、力を見せられるのか疑問ではあったがシェリルさん達の実力を知りたいのは確かなので頷いた。
話が決まり、気配のする方へ歩き出して少し経つと敵の姿が見えてきた。
「あら、サイミンチョウね。」
人の頭ほどの大きさがある黒地に青の斑模様の蝶が飛んでいた。こいつは羽から睡眠効果のある鱗粉を撒き散らして相手を眠らせ、その間に血を吸う生き物(虚獣ではない)だ。
吸血の量自体は大したことはないが、眠ってる間に他の獣に襲われたりすることもあるので意外と嫌われている。
「じゃ、さっさと片付けましょうか。」
刀を抜こうとする俺の横をすり抜けてシェリルさんが前に出ていく。どういうことかとユウナさんを見ると大丈夫とでもいうように頷いている。
(実力を見せるってことなのか?)
流石にサイミンチョウに遅れを取ったりはしないだろうし黙って見ていることにした。
結論から言えば圧勝。取り囲むように向かってきたサイミンチョウはシェリルさんの振るった鞭であっさりと全員叩き落とされた。しかも討伐部位の羽を傷つけずに胴体部分だけを吹き飛ばすなんて器用な真似を披露してくれた。
体術や隠し玉もあることを考えるとシェリルさんは間違いなく俺より強いだろう。
その後は特に敵と出くわすこともなく地下2階へと進めた。
そして地下2階では中型犬程の大きさで前足と後ろ足の間に皮膜を持つ猫、クロスパンサー2匹と遭遇した。こいつは俊敏な動きと皮膜を使った滑空で相手を攪乱して仕留める結構厄介な獣、のはずなんだが。
コイツの相手をしたユウナさんは、爪も牙も掲げた盾によって尽く弾き返し、体勢を崩した瞬間メイス(全長1メートルを優に超えるようなでかいの)を軽々と振るって2匹の頭を豆腐のように粉砕してしまった。
一応俺もシックルテールという尾の部分が鎌のように鋭くなった毒蛇を倒してはいるんだが、2人の戦いを見たあとではどうしてもかすむ。
実力を考えるとこうして組めるのは今回限りかも知れない。等と考えていた俺は自分の戦い方を二人にじっくりと見られていた事にも気づいてはいなかった。
戦闘描写があっさり




