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異世界に出戻りしました  作者: ころぽっくる
25/33

ユウナとシェリル

女性キャラの心理描写や口調には気を使います

シェリルさんと別れた私は、穴熊亭という宿屋さんを目指して歩いています。

人通りはそれなりに多いものの、誰かとぶつかったりガラの悪い人に絡まれたりといったトラブルはなく道のりは順調ですけれど。

(見られてますよね)

やはり革鎧やメイスで武装した女が男の子を背負って歩いているのは目立つようで、あちらこちらから視線を向けられています。まあ、これくらいの視線なら男の人が向けてくるあの欲望に濁った視線に比べればどうということはありません。

他人より発育の良かった私は昔からそういう視線を向けられる事が多く、あの視線が嫌で仕方ないんです。

(そういう視線が少ないのはこの子のおかげでしょうか)

首を曲げて、背負った男の子の顔を見てみると治療が効いているようで穏やかな顔で寝ています。

(親切に道を教えてくれたのに悪いことしちゃいましたよね)

目を覚ましたら改めてお礼と謝罪をしないと、そんな事を考えながら私は歩き続けます。


それから10分ほど経った頃でしょうか、それらしき建物にたどり着きました。

入口の扉の上を見ると、木彫りのクマの看板が有り穴熊亭と書かれていたので多分ここで間違いないでしょう。そのついでに外観も観察してみると、大きさはそこそこですが花壇や窓、壁に至るまで手入れが行き届いていて経営している方の人柄が伺えます。機会があれば泊まってみたいものです。

そんな事を考えていると背中で男の子が身じろぎしたので、起きたのかと思い顔を覗き込んで見ましたがまだ目は覚めないようです。ともあれ観察はここまでにして中へと入ることにします。


「いらっしゃいませ、お泊りでしょうか?」

扉を開けるとカウンターにいた赤い髪をした獣人の少女が挨拶してくれました。

「いえ、この子がここでお世話になっていると聞いて連れてきたんですが。」

そう言って体の向きを変えて男の子の顔が見えるようにすると、女の子は一瞬驚いた顔をした後心配そうに尋ねてきました。

「確かにその子は家で面倒を見ているノブユキさんですけど、一体何があったのでしょうか?」

あ、この子はノブユキっていう名前なんですね。聞くのをすっかり忘れていました。

しかし、何があったかですか。説明はするつもりですけどはたして信じてもらうことはできるんでしょうか。


とりあえず、困っている様子だったので買い物を手伝ったところからお礼を言おうといた際にメイスの柄が当たって気絶させてしまったところまで包み隠さずに話したのですが。

(間違いなく疑われてますよね、これ)

本人は精一杯隠そうとしているのでしょうが、疑わしいという気持ちが目に浮かんでいます。

私だって自分がやったのでなければとても信じられないので気持ちは分かりますが、事実なのでどうにか信じてもらえないと困ります。

シェリルさんがいればこういう時あっさりと相手を納得させてくれるんでしょうけれど。・・・いえ、多分いても変わらないですね。あの人結構イジワルなところがありますし、今回だと「あなたがやった事なんだからあなたが説明するのが筋でしょう?」とか言って傍観しそうな気がします。

「カシェル、何やってんだい?」

そんな事を考えていたら奥の方からカシェルと呼ばれた子の母親らしい女性がやってきました。

そしてカシェルちゃんはその人に駆け寄って先ほど私がした説明を話し始めました。今は口を挟むべきではないと思ったので、大人しく話が終わるのを待つことにしました。

話しを聞き終えた女性は私に向き直り、目を合わせるように視線を向けてきました。

「家の娘から話は聞いたけど、その内容に間違いはないね?」

いい加減な答えは許さないと言わんばかりの強い視線でした。けれど私にやましいことはありません、だから真っ直ぐに目を合わせて頷きました。


その後、女将さんは私の話を信じてくれただけでなく運んできてくれたお礼といってお茶を一杯振舞ってくれました。疑っていたカシェルちゃんも女将さんがそう言うならとあっさり信じてくれたのは意外でしたが、それだけ女将さんの人を見る目を信用しているということなのでしょう。

カシェルちゃんによって寝室へと運ばれたノブユキくんは結局目を覚まさず、私は女将さんにお礼と謝罪を伝えてくれるように頼んで冒険者ギルドへと向かうことにしました。



シェリル


「油断してたわ。」

ここのところユウナがトラブルを起こさなくなっていたので、ドジ具合もマシになったと思っていた矢先にやらかしてくれた。

勝手に期待していた以上怒るのは筋違いだが、やはり面白くない。なので相手が貴族のような厄介な相手ではなかったのを幸いに、謝罪と説明はユウナに押し付けておいた。

これで少しは懲りてくれればいいし、そうでなくても泣きそうになっていたユウナの顔が見られたのでまあいいか。

「戻ってきたらどうなったかも聞き出さないと。」

あの口下手なユウナがどうやったのか聞くのが楽しみだ。


「いらっしゃいませ、冒険者ギルドリュシオン支部へようこそ。」

受付嬢に会釈を返しながら中を見回すと冒険者は遅めの昼食をとっている数人だけだった。ユウナが来るまで時間がかかるだろうし、それまで情報収集をすることにした。

とりあえず受付嬢に頼んでモンスター図鑑と迷宮の本を読ませてもらう。人から話を聞くのが苦手というわけではないが、最初は本から知識を得ようとするのは学者である家の家系の影響だろうか。


渡された本は読み終えたがユウナはまだやってこない。まあ、私が読む速さのせいもあるんだけど。

次の本を借りようかと思ったとき。

「あんた、依頼に来たのかい?」

先ほど食事を取っていた男の一人が話しかけてきた。少々鼻の下が伸びているがこの反応はいつものことだ。

ちょうどいい、ユウナが来るまでの暇つぶしにこの男から情報を集めることにしよう。








二人の家族構成なんかも一応は考えてありますが今の所出す予定はないです

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