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異世界に出戻りしました  作者: ころぽっくる
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噂は怖いもの

順調に暗殺者見習いの道を進んでますね。

『禍の森』の地下3階、その一角を徘徊しているゴブリンの集団。通常のゴブリンより一回り大きな体格のゴブリンジェネラルに率いられた30匹近い集団は全員が武器を持ち、まるで軍隊のように足並みを揃えて移動している。

実際、上位種であるゴブリンジェネラルに率いられたゴブリン達の戦力は人の軍隊ほどではないが、決して油断していいものでもない。上位種とはいえ所詮ゴブリン、もしくはたかがゴブリンの集まりと侮った新米冒険者が返り討ちにされて命を落とすのはこの迷宮では珍しくないのだ。


得物を求めて進むゴブリン達、そのゴブリン目掛けて何かが飛んできた。それに気づいて慌て出すゴブリンを一声で黙らせ、ジェネラルが手に持つ剣を振るって叩き切った瞬間。パァンという軽い音共に内部に満たされていた紫色の液体が周囲へと降り注いだ。

「グギャアァァァ!!!」

その液体を浴びたジェネラルと周りに居たゴブリン達が顔を抑えて絶叫を上げて悶え苦しむ。その光景に混乱するゴブリン達目掛けて更に何かが投げつけられる。あるものは刺激臭のする煙を撒き散らして吸い込んだゴブリンの動きを鈍らせ、またあるものは灰を撒き散らして視界を奪う。

最早右往左往するだけの烏合の衆と化したゴブリン達の間を、黒い影のようなものが風のような速さで幾度となく駆け抜けていく。その度にゴブリンの首が一つ、また一つと地に転がり1分も立たぬ内にゴブリン達は全滅する事となった。


ゴブリン達が全員こと切れたのを確認し、木陰から姿を現す。あたりには首を断ち切られたゴブリンの死体がゴロゴロしているが、正直この光景は何度も見ているので今更どうということはない。

「獣とかが寄ってこないうちにさっさと素材をとっちまうか。」

そう独りごちて歩き出そうとした時、背後からガサリと音がしたので振り向くと冒険者らしき5人組がいた。


(多分冒険者になって間もない新米かな)

そう判断したのは彼らの防具に傷がほとんどなく、たたずまいも街でたむろしている若者とあまり変わらなかったからだ。顔色が随分悪いのが気になるがそれはゴブリンの死体が散乱しているせいだろう、多分。ともあれこうして出会ったのも縁というやつだろう、挨拶をすべく右手を上げて笑顔を・・・。

「「「「「ひええぇぇっ!」」」」」

つくろうとした途端悲鳴をあげて逃げていった・・・。

・・・・・うん、分かってたよゴブリンじゃなくて俺に怯えてたってことは。悲しいことにね。

何故分かったのかって?そんなのこれが初めてじゃないからに決まってる。だから逃げられるのはまあいい(本当は良くないけど)、けれど悲鳴を上げるのはやめてほしい。聞きつけた獣が集まってくるし、なにより心が傷つくから。

「噂を甘く見るんじゃなかった。」

2ヶ月ほど前のあの出来事を思い出しながらそうつぶやくのだった。


アンナさんの修行を受け始めて1ヶ月ほど経ち、調合スキルを無事に習得して試作品もいくつか出来た頃。

ギルドの掲示板の前である依頼を受けようか悩んでいたらとあるパーティに声をかけられたのだ。

狼の獣人2人と人族の男女というその4人パーティもその依頼を受けるつもりだということで、一緒にやらないかと誘ってくれたのだ。

願ってもない事だったので了承し、『ゴブリンジェネラルの討伐』に挑むこととなった。


ゴブリンジェネラルが出現する地下3階までの道すがら、お互いの自己紹介を済ませておく。

リーダーを勤めているのは剣と風魔法が得意だという狼の獣人ダンガさん、もう一人はダンガさんの双子の弟で斧と火魔法が得意なザックさん。人族の方は手甲と脚甲を身につけた筋骨隆々の格闘家ゴードンさんに

弓と矢筒を背負った女性のミリーさん。

地下2階までは調合に使う薬草類を取りに来た際に探索をして地図も大雑把にではあるが完成しているためかなり気楽な道のりだった。

そのためメンバー同士の気心のおけない会話も多く、それを聞きながら俺も早く仲間を見つけてパーティを組んでみたいと思うのだった。


そして地下3階にたどり着く。景色自体は今までと変わらないが、ここに未だ出会ったことがない敵がいると思うとやはり緊張で体が震える。

ザックさんがそれに気づき、俺達がついてるから心配すんなと人懐っこい笑顔で励ましてくれたおかげでとりあえず落ち着けた。そうしてしばらく進むとついにゴブリンジェネラルに率いられた30匹近いゴブリン達と遭遇した。


「行くぞ!」

ダンガさんの号令とともにザックさんとゴードンさんが飛び出す。斧と拳が振るわれるたびにゴブリンが紙屑のように引き裂かれ、吹き飛んでいく。ジェネラルの指揮を受けて2人の隙を突こうとするゴブリン達だが、あるものはダンガさんの剣と風に両断され、またあるものはミリーさんの放つ矢を首や目といった急所に受けて倒れていく。4人の連携はゴブリンに付け入る隙を見せぬまま、あっさりと全てのゴブリンを討伐してしまった。

ベテランの冒険者の連携は俺が想像していたものよりずっと凄かった。


あれから何度かゴブリンに遭遇したものの、それら全ては4人の手で全滅させられた。はっきり言って俺が居る意味がない。このまま何もせず手柄だけ山分けなどということになってはあまりに情けないので、次のゴブリン達は自分に倒させて欲しいと頼んでみた。

ダンガさんは危険だと渋っていたが、ザックさんのいざという時は自分達が助ければいいという後押しもあり渋々だが認めてくれた。


その後は(気配探知)で見つけた一番数が少ない群に(忍び足)で音を消しながら近寄る。直ぐに駆けつけられる距離に4人がいるのを確認してから、毒塗りの短剣をジェネラル目掛けて投げつける!

命中はしたものの傷自体は小さいものなので、しばらくは周りのゴブリンに指示を出して周囲を探らせていたが徐々に苦しみ出す。その様子にゴブリン達が狼狽うろたえだした瞬間、試作品の手榴弾モドキを投げつけて混乱を加速させる。

頃合と見て一気に木陰から飛び出し、刀を振るう!(瞬歩)で常に動き回り、隙を見せた相手を瞬時に切り伏せる事を繰り返す。

気が付けばゴブリン達は皆倒れていたので、様子を見ていた4人に終わったと声をかけた。

この時、4人の連携とジェネラルの初討伐に興奮していた俺は気づいていなかったのだ。4人の顔が微妙に引きつっている事を。


その後、4人は俺の討伐の様子を他の冒険者達に話し、それに尾ひれがついて俺が暗殺者じゃないかという噂がギルド中に流れてしまったのだ。慌てて否定したものの時すでに遅し。

新米にもベテランにも敬遠され、未だパーティを組んでくれる者がいない状態というわけである。

ちくしょうめ。


次話は仲間登場の予定

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