誘われた理由
2話目となります。
「あの、今異世界に来て欲しいって言いました?」
「うむ、君の場合は転生という形になるがね。」
念のため確認してみたのだが、どうやら聞き間違いではなかったらしい。
だからといって素直に頷く事はできそうにないが。
「あまり嬉しそうには見えないね。もしかして異世界とか魔法には興味がないのかい?」
「いえ、興味はあります。ありますけど・・・」
心配そうな顔で尋ねてくるアステリオ様に咄嗟に言葉を返すものの、それ以上言っていいのかわからず口ごもってしまう。
そんな俺を見かねたのかソフィーティア様が穏やかな声で話しかけてきた。
「そう緊張しないで。これはあくまで頼み事。命令ではないから断ってくれても一向に構わないわ。」
穏やかな声とその言葉で少しだけど落ち着くことが出来たので、疑問に思った事を聞いてみることにした。
「返事をする前に聞かせて下さい。何故俺にその話を持ちかけたんですか?そして俺に何をさせたいのですか?」
そう聞いた途端二人の顔が曇ったので聞いてはいけない事だったのかと不安になるが、そうではなかったらしい。
「向こうに行ってしてもらいたい事は特にはない。強いて言えば向こうで普通に生きてもらいたい、かな。」
なるほど、それなら大した取り柄のない俺でもできなくはないだろう。
「特にするべき事がないのは分かりました。でも、それなら誰でもいいはずです。」
一旦言葉をきり、ソフィーティア様の方に向き直る。
「最初に顔をあわせた時、ソフィーティア様は俺が真田信之だと確認した。つまり俺でなければいけない理由がある。それは一体何ですか。」
真っ直ぐに目を合わせて問いかける。
そしてしばし俺と目線を合わせたソフィーティア様は
「分かりました、お話しましょう。」
溜息とともにそう答えた。
アステリオが何か言いたそうだったので、彼には少し待ってくれるように言って距離をとった。
「本当に話すのか、ソフィーティア?」
若干咎めるような口調でアステリオが聞いてくるが私の答えは決まっている。
「ええ、彼には聞く権利があるわ。」
「だが・・・」
「貴方が言いたくない気持ちは私にも分かる。けれど、これは私達がやらなければいけない事。貴方もわかっているでしょう。」
「その通りだ、分かってはいる。分かってはいるが」
「納得は出来ない、でしょう?」
言い当てられたアステリオが驚いているが、私は構わず言葉を続ける。
「私だって納得できてはいないわ。正直に告げたら彼が転生を断る可能性だってあるでしょうし。」
「それでも話すのか。」
「それが私達の果たすべき責任だと思うから。仮に断られたとしても私達の負担が少々増えるだけと思えば大したことではないでしょう。」
「君という奴は・・・。分かった、だが説明は君がしてくれよ。」
アステリオの言葉に頷いて、私は彼の方へ向き直った。
「待たせてごめんなさい。」
アステリオ様との話が終わったソフィーティア様は開口一番に謝罪してきたが、俺は気にしていない事を告げ、理由教えてくれるよう促した。
するとソフィーティア様は軽く深呼吸した後に
「貴方が転生者だからです。」
そう告げてきた。
転生者?俺が?冗談を言っているのかと思ったが、あの真剣な顔はとても冗談を言っているようには見えない。混乱する頭をどうにか落ち着けようとする俺に、ソフィーティア様は更に驚愕の事実を告げてきた。
「100年程前に私とアステリオ、其々が管理している世界が衝突するというあってはならない事態が起こってしまった事。それが全ての始まりでした。」
区切りがいいと思ったので少し短くしました。