登録だけで日は暮れて
ペースが上がらない。
穴熊亭の中庭に新しい墓を作ってから数日後、俺は冒険者ギルドの前にいた。といってもただ単に冒険者登録をするだけなのだが。
あの日からの数日感、俺は今後どうするかをじいちゃんやガラムさんと話し合った、その結果冒険者登録を済まして金を稼ぐことと、穴熊亭で手伝いをすることが決まった。
なぜそうなったかというと、左腕に続いて左足まで失ったじいちゃんが今までのように獣を仕留めて金を稼ぐのは厳しいということで、ガラムさん達が俺とじいちゃんの面倒を見てくれることになった。
とはいえ穴熊亭は常連こそ多いがそこまで儲かっているわけではない。なので少しでも負担が減るならと思い穴熊亭の手伝いを申し出たわけである。これに関してはアンナさんもそのつもりだったらしくあっさりと話は通った。
逆に難色を示されたのが冒険者ギルドへの登録だった。冒険者ギルドへの登録は確かに多くの利点がある、まず身分証明となるので様々な国に出入りしやすくなる、そして持ち込んだ素材の買取金額の上昇、魔獣や国の情勢といった様々な情報の入手等。しかし引き換えに色々と義務も生じるのだ。
その義務の一つに防衛参加というものがある。これは滞在している街が何らかの脅威(例えば魔獣の群れ)に晒された時防衛に強制的に参加させられるというもので、虚獣によるリュシオン襲撃もこの防衛参加の対象になる。
数日前にその脅威を知ったばかりの俺が再び虚獣の前に立てるのか、それを心配されたらしい。
(まあ、心配されるのも当然か)
あの時の事を思い出すだけで体は震えるし、何度か夢に見て眠れなくなった事もある。アンナさんやガラムさんがそれに気づいていても不思議はない。
だが、このままではいけないのも事実だ。リュシオンが虚獣の襲撃を受けるのはそう珍しいことではない、その時またじいちゃん達が傷つくような事があれば俺は絶対に後悔する。だから最低限それを跳ね返せる位強くなりたいのだ。
そう何度も伝え、決して無理はしないことを条件にどうにか許可をもらうことができた。
「すいませーん、登録をしたいんですが。」
「はい、でしたらこちらの用紙に必要な事を記入していただけますか。代筆が必要でしたら承りますが。」
「いえ、自分で書けますので大丈夫です。」
もらった紙に名前、種族、年齢等を記入していく。じいちゃんから習ったので慣れたものだ。
書き終えたので提出すると、金属製の小さなカードと針を渡された。
「内容に問題はありませんでしたので、こちらのカードに血を一滴垂らしてください。それで登録は終了となります。」
言われたとおりに針で指を刺して、カードに血を垂らすとカードが光り俺が記入した内容が一部浮かび上がる。詳しい内容はギルドにある魔道具か(鑑定)を使わないと分からないらしいのでその点は安心できそうだ。
その後はランクや規則について色々と説明を受けたのだが
(知ってることばっかりだな)
ランクはF、E、D、C、B、A、Sの7つで依頼達成等のギルドへの貢献によって上がる等丁寧に教えてくれている所悪いのだが、どれもじいちゃんやガラムさんに教えてもらった事ばかりだった。
とは言えせっかく教えてくれているのを無下にするのも気が進まないので大人しく聞いているが。
「規則に関しては以上になります。何か分からないことは御座いますか?」
あ、終わったか。ついでだし聞いてみるか。
「魔獣と迷宮について書かれた本はありますか?」
「はい、迷宮関係の本は1冊、魔獣に関する本は20冊ほど御座います。」
20冊・・・流石に全部読むのは無理だよな。
「迷宮に出現する奴を扱ったものが読みたいんですが。」
「それでしたら2冊ですね。貸出は致しておりませんので閲覧はあちらのスペースでお願いします。」
お礼を言ってから、持ってきてくれた本を抱えて移動する。
リスクは出来るだけ減らしたいし、しっかり覚えるようにしないとな。
そしてこの日は本の内容に夢中になったせいで気がついたら既に日は落ちかけていて、依頼を受けられずに帰る羽目になりました。
今後は2,3日に1度の更新ペースになりそうです。




