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ブラッドプリズン  作者: 桜花琉里
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プロローグ

「やだっ、触んないで!」


少女の声が響く実験室。

全てが白で統一され、中央にあるベッドに 縛り付けられた少女を淡々と照らす光。部屋と同じくらい真っ白な白衣を着た研究者達が、少女に長時間の手術を施していく。

少女が目を覚ました時には実験室のベッドを上ではなく、実験体S932に分け与えられた薄暗い檻の冷たい床の上だった。


「…どうしてなんだ。こんな事、やる意味あるのかよ…」

少女の檻の前にある檻では、少年実験体S028が口の端から流れる血を見ていた。S932と対称となった青と黄色のオッドアイには赤が映っているだけではなかった。微かに希望の光を灯していた。


「で、どこにいるのー?その特別な実験体」

実験体とは程遠い装いの少年が、研究者に詰め寄る。その研究者の言動から、研究者達よりは少年の方が上だとわかる。

赤い目が怪しく光った瞬間、檻の外で立っていたのは少年ただ1人。バチバチと音の鳴るスタンガンを持つ少年は、何事もなかったかのように足取り軽くSランクの実験体がいる檻へ。


「S028…じゃなかった、神代久遠(かみしろくおん)。ここから出るよ、着いて来てー」

檻を乱暴に開け、いつの間にか盗んだ鍵で手枷と足枷を外す。

神代久遠、それが実験体になる前のS028の名前だった。


久遠のいた檻の前にいるもう1人のSランク、S932の檻を開け、手枷と足枷を器用に外す赤目の少年は怯える少女の頭を優しく撫でた。

不破鈴音(ふわりんね)、それが今日からお前の名前だよ、鈴音」

生まれた時から実験体だったS932は名前がなかった。不破鈴音、そう呟いた少女はもう、怯えていなかった。


赤目の少年は弱っている鈴音を抱きかかえると走り出す。まるで勝手がわかっているかのように出口へと久遠を導く少年は、とても楽しそうに笑っていた。


外へ出て、案内されるがまま走る。ふと振り返ると夕焼けが実験場を焼いているように赤く染めていく。

ねぇ、と裾を引っ張る鈴音を見て、名前言ってなかったっけ、と少年は呟いた。


篝世良(かがりせら)。これからよろしくねー、久遠、鈴音」


遠くでサイレンが鳴り響いていたーー。


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