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息抜き

改はあれから南の城門にもたれかかって手帳に日記をつけていたのだが、次々と街の人がやってきて改に面会を求めた。兵隊に見つかったら捕まるだろうと改が言っても、誰一人として怯む者はいなかった。


一人は背中の曲がった老婆だった。孫が生贄に出される予定だったのだという。頭を下げる老婆に改は優しく微笑んだ。


一人は屈強そうな男だった。俺たちがするべき仕事だったのに、肩代わりさせてしまって申し訳ないと悔しがっていた。これから一緒に戦えばいい、と改は肩をたたいた。


一人はまだ小さな少年だった。いつかは改のように強くなるのだと目を輝かせた。うんと鍛錬を積んで強くなれ、と改は頭を撫でた。


一人は人妻だった。先月、娘を生贄に出されたばかりなのだという。改のおかげで娘が少しは浮かばれただろうとむせび泣いていた。改は婦人の胸の谷間を、穴を開ける勢いで見つめながら、出来る限り神妙な顔をして頷いた。


一人は改と同い年くらいの少女だった。おかげで生贄にならなくて済む。あなたになら何をされても良いと喜んでいた。改は気にするなと笑って控えめにおっぱいを揉んだ後、2時間後にまた来てくれと爽やかに笑った。


改に救出された15人の少女たちもやってきた。少女たちはひざまずいて、何度も何度も礼を述べた。残りのオークを倒したら今度こそイイコトをしよう、と改は全員の尻をなるべく自然に触りながら言った。



改は街の人々の反応を見て、民衆と権力者たちの意識には大きな隔たりがあるように感じた。




ちなみに改は故郷で歩くチンコと呼ばれていた。


***


もう既に日は完全に沈んでおり、街を行き交う人はほとんどいない。

改は人々からもらった食べ物や骨とう品などを風呂敷に包んで背負い、城内に忍び込んでいた。

ウィルマは何度も生贄にならなければならず、とても不安だろう、ひと肌で温めてやる必要がある。

そして街の人から貰った、よく分からないが細長い骨とう品などを駆使して彼女の不安を和らげてあげよう、と

改は下卑た笑みを浮かべながら考えていた。


改は気配を消して歩き、ウィルマの気配を辿って部屋の前までたどり着いた。

部屋の前には見張りの兵がいたが、優しく頸動脈を締め上げて眠ってもらった。


改は心臓の鼓動と股間の高鳴りを体で感じながら大きな扉の取っ手に両手を掛ける。


「こんばんは、改です」と言って一気に扉を開こうとしたとき

ふと、改は手を止める。

中から小さな音が聞こえてくる。

全神経を集中させていなければ聞き取れないような、本当に小さな音だ。

最初はそれが何なのか分からなかった。しかし耳を澄ませて聞いていると、やがてそれが何なのか気づいた。


それは、ウィルマが声を殺して泣く声だった。


ウィルマは人々の前では気丈に振る舞い、決意に満ちた表情で平気なふりをしていた。


だが一人になった今は誰にも悟られぬよう静かに泣いている。これが自ら宿命を背負った彼女の、精一杯の感情表現なのだ。


改は扉に背を向けると、風呂敷を下ろしてドカリと座り込んだ。そして目を閉じ、大きく息を吐く。


改にはウィルマの言った言葉が思い出されていた。

『私が身を捧げることで街のみんなが助かるのなら本望だ』


「嘘つけ馬鹿野郎」

呟いた言葉には改の中に渦巻く、強い、とても強い衝動がにじんでいた。


               続く

ご閲覧いただき、ありがとうございました。

改と街の人々の触れ合いを描くハートフルストーリーでした(嘘)

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