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第4幕 時の魔法

第4幕 時の魔法


暗い通路の階段を飛び、そして走る三人組。

「別館っていうけど、まるで塔みたいなんだブゥ」

螺旋階段をよじ登りながらジローザがつぶやきます。


「オレが掴んで飛ぼうかカァ?」

そうイチロージが言いかけたときでした。

「出口が見えたブゥ!」

見ると階段の突き当たりに、小さな踊り場と扉が見えています。


三人は踊り場にたどり着くと、息を整えて扉の前に立ちます。

「もしここに魔女がいたら、どうするんだカァ?」

「もちろんあやまるブゥ。そして魔法を解いてもらうんだブゥ」

「チュウ」

三人はそれでも許してもらえなかったらどうしようと思いましたが、意を決して扉に手をかけます。


「いくぞブゥ!」

「カァ!」

「チュウ!」


ギギギ・・・


扉を開くとそこは、所狭しといろんな物で埋め尽くされた部屋でした。

「誰でしゅ!?」

その部屋の中心で火にかけられた大きな鍋をかき混ぜている、その声の主は紛れもなくあの時の小さな魔女でした。


「あっ、アンタたちは!?こんな所まで追いかけてきてぇ!」

魔女は三人をみつけて大きな声で叫びます。


「待て、待つんだブゥ!」

「なんでしゅ!」

「今日はあやまりに来たんだブゥ・・・」

かぼちゃの魔女はジトーとした目で、三人を観察しています。


「オレたちが・・・。いやボクたちが悪かったんだブゥ・・・」

「・・・それでぇ?」

「これからは人の嫌がることはやめるんだブゥ、だから元の姿に戻して欲しいんだブゥ」

「カァ」

「チュウ」


魔女はじっと目を閉じたまま考え込んでいましたが、やがて目を見開いて言います。

「・・・いいでしゅ。アンタたちを許すです」

「ほんとかブゥ!?」

「でも姿は元に戻りません!」

「ブ!?」

「なぜならば、戻し方を知らないからでしゅ!」

かぼちゃの魔女の言葉に、三人は固まってしまいます。

そしてしばらくすると、ポロポロと涙を流しながら叫びます。


「くそーっ、心を入れかえようと思ったのがバカだったブゥ・・・!」

「どうする?もう間に合わないカァ!」

「チュウ」

いまから元の姿にもどる方法を探していたのでは、火のついたお城に戻ろうとしても間に合いません。


そのときでした、全身を黒い服でおおったお婆さんが部屋の奥から姿をあらわしました。

「・・・なんだいなんだい、騒がしいねぇ」

「あっ、おばあちゃん!」

「お前は何者だカァ」

「ふふふ、人の家に飛び込んできて、お前は何者だとは面白いカラスだねぇ」

物静かな言い方でしたが、お婆さんから感じる恐ろしい雰囲気に、イチロージは固まってしまいます。


ですがお婆さんは、静かにゆっくりと答えます。

「まあいいだろう、私は大魔女バーリン。この子のおばあちゃんだよ」

「大魔女・・・。おばあさん、ごめんなさいだブゥ。話を聞いて欲しいんだブゥ」


勇気を振り絞って話しかけたジローザに、さっきまでの怖い雰囲気が消えたバーリンはたずねました。

「おや、これはかわいいブタのぬいぐるみだこと。一体どうしたんだい?」

「ボクたちはその子の魔法で、この姿になってしまったんだブゥ。でもそれは人をいじめて楽しんでいたボクたちが悪かったんだブゥ。もう二度と人をいじめないと約束するから、どうか元の姿に戻して欲しいんだブゥ・・・」


バーリンはジローザに優しい目を向けて答えます。

「そうだったのかい・・・、でもよくお聞き。その子の魔法ってことは、その魔法はその子の想いなんだよ」

「ブゥ?」

「だからその魔法は、他の誰かが解くことはできない・・・。他の誰かがその想いを解こうとしても、その子の想いは変えられないだろう?」

「ブゥ!?」

ジローザはその言葉の意味、つまりこの魔法は解くことができない。自分たちは元の姿には戻れないんだと知って、目からポロポロと涙がこぼれます。


「・・・と、言いたいところだけど」

「ブゥ?」

「その魔法は満月が出ているあいだだけ、つまり満月が欠ける明日の朝には解けるはずさ。今回はアンタたちがちゃんとあやまって、この子が許すと言ったからね」

「でもなんでだブゥ?」

「時間の魔力には、どんなに偉い王様でも、どんなに凄い魔法使いでも敵わないということさ」

そう言いながらバーリンはジローザにウィンクしながら、ニコリと笑いかけました。


「でもダメだカァ・・・」

「・・・そうだったブゥ。朝じゃ間に合わないブゥ」

そうです、お城は怒った民に火をつけられて、今にも崩れ落ちそうになっているのでした。


「どうしたんだい?」

「ボクたちの城が、怒った人たちに火をつけられて、今にも崩れ落ちそうなんだブゥ・・・」

「城が?」

そう言いながらバーリンが窓を開けると、わずかに空が白み始めた外の景色が見えます。

屋敷の周りに広がる広大な森、そしてその先にあるお城の方角の空をつつむ炎の赤い光・・・。


「・・・ないブゥ」

「森の向こうが赤くなっていないカァ・・・」

「チュウ・・・」

「何かの勘違いだったんじゃないのかい?」

窓辺に並んで外を眺める三人の後ろから、バーリンの声が聞こえてきます。


「・・・そんなはずは・・・」

外を眺める三人を、森の端からわずかに顔を出し始めた太陽の光が包みます。

「・・・ない・・・」





「・・・い」


「・・・おい、ジローザ起きろ!」

「だな」

体をゆすられてジローザは目覚めます。


「・・・ここは?」

「元に戻っているぞ!」

「だな」

弾むようなイチロージとサブローゼの声。


ゆっくりと体を起こすと、どうやら何もない廃墟に倒れこんでいるようでした。

辺りを見渡すと、かぼちゃの魔女もバーリンも姿が見えません。


「屋敷の中を見て回ったんだけど、何もないんだ。かぼちゃの魔女もバーリンもサダキチも王様のゴスジィもいない」

「だな」

不思議そうな顔をしているジローザに、聞いてもいないのにイチローゼが答えます。


三人が改めて屋敷の中を探検してみると、部屋の形やつながりは確かに姿が変わっていたときの記憶のままでした。しかしそこはイチロージの言うとおり、部屋の飾りなどは何もない、そして誰もいない、ただの廃墟となっていました。

しーんと静まり返った屋敷の中は、幽霊達とにぎやかに騒いだ昨夜がまるでウソのようでした。


イチロージが確認するかのようにつぶやきます。

「何だったんだろうな?ただの夢だったのかな?」

「いや違うな・・・」

「ん?」

「いや何でもない、さあ帰ろうか」

「おう!」

「だな!」

三人は部屋を後にして、城へ向かって歩き始めました。

古びたイスの上にポツンと“玉”と書かれた王冠が転がった部屋を後にして・・・。




お城へと戻った三人が見たのは、いつもと変わらないお城でした。

ゴスジィだった王様に見せられた風景はなんだったのでしょうか?

しかし王子たちはそれ以降、誰に意地悪することもなくなりました。

そして大きくなってからは互いに協力し合って民のために働き、国はいつまでも栄えましたとさ。



おしまい


いかがだったでしょうか?

楽しんで頂けたでしょうか?

本当は短編で書くつもりが、書き出したらまとまらず、どんどん長くなり、いじくりまわしている内に連休が・・・(しょーっく!)

涙とともにグッバイマイ連休!

せめて楽しんで頂けたら幸いなのですが・・・。

では、それではまた。


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