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第2幕 お化け屋敷

第2幕 お化け屋敷


「ここだ、ここに間違いないブゥ・・・」

北のはずれにあるお化け屋敷に着いた三人は、大きな扉の前にいました。

「よし行くぞカァ!」

「チュウ!」


コンコンコン・・・


ブタのジローザが扉をノックすると、やがて扉がギギギと音を立てて開き始めました。

しかしそこには誰もおらず、ランタンが宙に浮いています。

「ヒヒヒ・・・、どちら様ですかな?」


どこからか声は聞こえてくるけれど姿は見えず。おもわずジローザが悲鳴を上げました。

「ひ~っ、でたブゥ!」

「チュウ!」

「おっとこれは、失礼いたしました・・・」

そう言う声が聞こえてきたかと思うと、タキシードを着た小さなヒゲの幽霊が浮かび上がってきます。


「申し遅れました、ワタクシ執事のゴスジィと申します」

突然の出来事に三人はビックリしましたが、小さなカワイイ幽霊の出現でちょっと安心しました。


「本日はどういったご用件でしょう?」

ゴスジィは三人の周りをフワフワと漂いながら、それぞれを品定めするかのように眺めています。

「そうだ!かぼちゃの魔女に会いに来たんだカァ!」

「おぉ!お嬢様にご用でしたか」

とたんにフワフワ漂っていたゴスジィの動きが、ピタッと止まります。


「お嬢様の部屋は、この屋敷の別館になります」

「へっ、じゃあこっちの屋敷じゃなかったブゥ?」

「いえいえ、別館にはこちらの屋敷からつながっておりますので問題はないのですが・・・。困りましたねぇ」

「どうしたブゥ?」

困った様子のゴスジィにジローザがたずねます。


「別館へのカギを昨日無くしてしまいまして」

「えぇ~!?」

「ご自分たちで、カギを探して頂きますかな?」

「えっ!?このお化け・・・オホン。屋敷の中をカァ?」

「さようでございます。幸い屋敷の皆もそろそろ目覚めるころです、全員で皆さんを歓迎しましょう」

「そんな歓迎はいらんだブゥ!」

「チュウ!」

「なにか申されましたか?」

「アワワワ、なんでもないブゥ!」

慌ててジローザが訂正します。


「でも広い屋敷の中のどこを探していいのか、見当もつかないカァ」

「それなら心配には及びません、本日朝方まで地下室のミイラ男とドラキュラとワタクシの三人で、トマトジュースで乾杯しておりましたので、恐らくはそこに忘れてきたかと・・・」


「・・・分かっただブゥ。じゃあ、そこに行ってカギを取ってくるブゥ」

「そうですか、それは助かります」

そう言うとゴスジィは三人を屋敷の中へ招き入れました。

「さぁ、どうぞ!ワタクシたちの屋敷に歓迎いたしますよ。ヒヒヒ・・・」


屋敷の中へと一歩足を踏み入れた三人を、冷たい空気が包みます。

わずかなロウソクの光が室内を照らしていましたが、中はそれでも暗くてよく見えません。

「足元にお気をつけて、ヒヒヒ・・・」

「そんな事はわかってるんだカァ」


「おやおや・・・、これはカワイイ三人組だねぇ」

ふと三人が声のする方に顔を向けると、壁にかけられた絵の中の婦人がこちらを見つめています。


「げ、絵がしゃべったブゥ!」

「チッ、つまらないリアクションだねぇ・・・」

「別にウケを狙ってる訳じゃないブゥ」

「あぁ、そうかい。まあいいよ。アンタたち地下室へ行くんだろ?」

「げっ、何で知っているんだカァ」

「・・・目の前で言っていたじゃないか」

「そうだったのか!ブゥ」


「・・・まあいい、じゃあ要件を言おう。あの二人には気をつけなよ」

「と言うと!?カァ」

「あの二人・・・。ドラキュラとミイラちゃんはアブナイ男だからね。フフフ、アハハ、ヒヒヒ」

「・・・あんたが一番、アブナイんだブゥ」

「・・・チュウ」

ジローザはそう言いながら絵の中の婦人を放って、三人は地下室へと向かいました。


「なんだかジメジメして、気持ちの悪いところなんだブゥ・・・」

狭い洞窟のような通路を進むと、突然目の前に扉があらわれました。

扉にはドラキュラとミイラ男の部屋と書かれています。

「ここだ、ここに違いないカァ」


「よし飛び込むブゥ」

「チュウ」

三人は勢いよく部屋の中に飛び込みます。

すると中では黒いマントのドラキュラと、全身ホウタイのミイラ男がテーブルに座っていました。


「別館のカギを渡すんだブゥ!」

「お前達はだれだ!?」

ドラキュラがたずねます。


「ゴスジィに言われてカギを取りにきたんだカァ」

「チュウ」

「ゴスジィに?いいだろう・・・。だがタダでは渡せないな」

「なんだと!?どうすればいいんだブゥ」


話に乗ってきたジローザに、ドラキュラはニヤリと答えます。

「トマトジュースの早飲みで、我々に勝てたら渡してやってもいいぞ」

「そんなの簡単だブゥ!って、イチロージが言ってた」

「カァ!?」

突然の無茶振りに、イチロージはおどろきます。


「自信満々だな。いいだろうミイラ男、勝負してやれ!」

「え!?ボクはトマトジュースはもう飽きたから、栄養バランスも考えて野菜ジュースのほうがいいんだな・・・」

「ばかもん!そんなミーハーなものはジュースではない!」

「ひっ、わかったんだな。勝負するんだな・・・」


まもなくイチロージとミイラ男の前に、トマトジュースの入ったグラスが準備されました。

「仕方がないんだな・・・」

「カァ・・・」


ドラキュラの合図で、いっせいにトマトジュースを飲み始めた二人。

しかしカラスになったイチロージは、くちばしで上手にジュースが飲めません。

「勝負あった!」

そうこうするうちにミイラ男は、トマトジュースを一気に飲み干してしまいました。


「残念だったな、おとなしく帰ってもらおうか」

「まだだブゥ!」

「なに!?」

「サブローゼが、トマトジュースは三度の飯よりも好きだと・・・」

「チュウ!?」

「あ、待て!サブローゼ」

ネズミのサブローゼは、慌ててどこかへ消え去ってしまいました。


「困ったブゥ・・・」

ジローザがつぶやきながらミイラ男を見ると、彼のホウタイが赤くなっています。

「そうか、わかったブゥ!ドラキュラ、今度はオレが勝負だブゥ」

「この私に勝負を挑むとは、バカなことを。いいだろう、コテンパンにやっつけてやる」

そしてジローザとドラキュラの前に、トマトジュースの入ったグラスが準備されました。


「まだだブゥ」

「なに!?」

「あと三杯、持ってくるブゥ」

「・・・いいだろう」


二人の前に8杯のトマトジュースが準備されて、ミイラ男が合図します。

「始め、なんだな」


ジローザはすばやくグラスを手に取ると、口の中に流し込みます。

「つぎ!」

次々にグラスを手にとっては流し込むジローザ。

ドラキュラは3杯目からスピードが落ちていきますが、ジローザのスピードは落ちません。

そして一気に4杯のトマトジュースを飲み干してしまいました。

「すごいんだカァ!」


「ま、負けた。この私が・・・」

「約束だブゥ。カギは渡してもらうんだブゥ!」

「むむむ、仕方ない。これが約束のカギだ」

ジローザはカギを受け取ると、イチロージとともに部屋を後にします。


「すごいカァ、いつの間に、あんな特技を身に付けたんだカァ?」

「後ろを見るブゥ」

「カァ?」

イチロージが振り返ると、ポツンポツンと赤い足跡ができています。

そしてよく見てみると、肌色のブタだったジローザが、ピンクのブタになっています。


「そういうことだブゥ」

そうです、ぬいぐるみのジローザの体がトマトジュースを吸い込んでいたのでした。


「チュウ!」

「あっ、サブローゼどこへ行ってたんだブゥ!勝手のいいヤツなんだブゥ」

三人はゴスジィのいる、屋敷の入り口へ向かって歩き始めるのでした。



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