第1幕 変化(へんげ)
え~、°Noteといいます。
童話とは何か・・・、よく判りません!(笑)
まあそんな中で書いてしまいましたが、皆さんに楽しんで頂けたら幸いです。
不十分なところも多々あるとは思いますが、広い心で読んでもらえることを祈っております(笑)ではどうぞ・・・。
バサバサバサ・・・
薄暗い闇のなかで、鳥の羽ばたく音が聞こえています。
空には大きな満月が顔をのぞかせ、やわらかい月明かりが、辺りをわずかに照らしていました。
バサバサバサ・・・
なおも暗闇で音のする方を見てみると、豚のぬいぐるみを足につかんだカラスが、森の上を飛んでいるではありませんか。
豚のぬいぐるみが、カラスに向かって叫びました。
「ブゥブゥ、そっちじゃないって言ってるだろ!イチロージ」
カラスは羽ばたく翼を休めずに、イヤイヤそうに答えます。
「カァカァ・・・。うるせーな、俺は鳥目で暗い中では前がよく見えないんだよ」
「ヘン!周りが明るくてもお前の目は節穴じゃねーか」
カラスは豚のぬいぐるみに向かって言い返しました。
「だったら歩けばいいだろ、ジローザ」
「オレは豚のぬいぐるみなんだよ!歩いて行けるわけがないだろ」
「だったら黙ってろよ、ブタ!」
「誰がブタだ!ブゥブゥ!ってオイ、サブローゼ俺をかじるな。中のアンが出ちまうだろ!」
豚のぬいぐるみが自分の着ているオーバーオールのポケットに向かって叫ぶと、中から小さなネズミが顔を出します。
「チュウ?」
かぼちゃの魔女と三人の王子
第1幕 変化
むかしむかしの遠い世界・・・
ある小さな国に、三人の王子がいました。
意地悪でイタズラ好きな三兄弟の王子はお城の嫌われ者で、三人の王子に毎日イタズラをされているお城の人達は、王子たちの姿を見かけたら逃げ出しています。
お城の誰もが王子たちには、ほとほと困り果てておりました。
そんなある日のことでした・・・
今日もお城の兵士をいじめて、上機嫌の王子たち。
お城の中庭でひと休みしていると、見知らぬ女の子がベンチに座っています。
女の子は黒いミニのワンピースを着て、一人寂しく泣いていました。
「オイ、あれは誰だ?」
次男のジローザが他のふたりにたずねます。
「知らないな」
「だな」
今までに三人がお城の中で見かけたことのなかった女の子は、いつも「だな」しか喋らない三男のサブローゼと同じくらいの年頃で、大きなパンツがスカートからはみ出しています。
「それにしてもデカパンだな」
「だな」
長男のイチロージは女の子に話しかけることにしました。
「おい、お前は誰だ?」
シクシクシク・・・
女の子は泣きじゃくったまま、何も答えません。
「おい、お前。何で泣いているのだ?」
シクシクシク・・・
何度話しかけても女の子は泣き止みそうにありません。
「オイ、どうする?泣いたままだぞ」
「だな」
三人の王子は顔を見合わせ、ヒソヒソと相談を始めました。
「そうだ!からかってやろう!」
「だな」
「どうやって、からかってやろうか?」
イチロージの問いかけにジローザが答えます。
「パンツ丸見えの歌だな」
「だな」
三人の王子たちは、女の子の前に立つと合唱を始めました。
♪パンツ~パンツ~丸見えパンツ~
♪丸見えパンツはいいパンツ~
♪だな
「・・・やめてぇ」
女の子は泣くのをやめて、小さく言いましたが三人は止まりません。
「なんでそんな事をするのぉ!?」
「楽しいからだよ」
「だな」
そう言うと三人は、また合唱を始めます。
♪パンツ~パンツ~丸見えパンツ~
♪丸見えパンツはいいパンツ~
♪だな
三人は女の子を囲んで、踊りながら歌い続けています。
♪パンツ~パンツ~丸見えブゥ~
♪丸見えカァカァいいブゥブゥ~
♪チュウ
「あれ!?」
その時イチロージが異変に気づきます。
目の前で歌っているジローザの鼻が、ブタの形になっているではありませんか。
「プププっ・・・。おい、ジローザ。お前の鼻ブタになっているぞカァ」
「何言ってるんだ。そう言うお前の口はクチバシになっているぞ」
「チュウ」
「なにぃ~!?」
それぞれが異変に気付いたころには、お互いの姿がみるみる間に変化していきます。
長男のイチロージはカラス
次男のジローザはオーバーオールを着たブタのぬいぐるみ
三男のサブローゼはネズミ
気が付くと三人は、人間ではない別のものに変身させられていました。
イチロージは女の子に向かって叫びます。
「カァカァ、何だこれは!?お前の仕業か?」
「クスクスクス、そうでしゅ」
女の子は笑いながら答えます。
「なんでこんな事するんだブゥ!?」
「決まっているじゃない、楽しいからだよ」
「カァカァ。楽しいからって、こんな事してもいいと思っているのか!?」
「それは君たちが、一番よく知っているんじゃないのぉ?」
「うぅっ・・・」
いつも楽しんでイタズラをしていた三人は何も言い返せません。
「お前はいったい何者だブゥ!」
女の子はジローザの問いかけにニヤリと笑うと、人差し指をつきだして答えました。
「アタチは人呼んで、かぼちゃ(パンツ)の魔女でしゅ!」
ドーン!!
「なにぃ~!?」
三人はビックリ驚きます。
かぼちゃの魔女といえば北のはずれのお化け屋敷に住んでいる、凶悪な魔女という噂を知っていたからです。
「悪者の成敗は、これにて落着でし!」
「何でオレたちが悪者なんだよ。悪いのはお前のほうだろ」
「自分たちが悪い人間だということも分からないとは、救いようがないですねぇ」
そう言いながら魔女は、茂みの中をガサゴソと探りだしました。
「今度は、何をする気だブゥ?」
「疲れたから帰るぅ」
小さな魔女はそう言いながら茂みの中からトンガリ帽子とホウキを取り出します。
そして帽子をかぶり、ホウキにまたがりました。
「へっ、オレたちはどうなるんだブゥ?」
「知らな~い」
「なに~!?オレたちを元に戻せブゥ」
「それはできないんだなぁ」
「なんでだカァ!」
「だって・・・、疲れたんだも~ん」
「なに~!?」
そう言うと魔女は、フワフワとホウキにまたがったまま空に浮かび上がります。
「それじゃあ、またねぇ~」
ドヒューン!キラッ☆
「はやっ!」
王子たちが呼び止める暇もなく、魔女はあっという間にどこかへと飛んでいきました。
「いや、ちょっと待て!オレたちはどうなるんだブゥ・・・」
取り残された王子たちは途方にくれます。
「そうだ!城の者たちに助けてもらおうだブゥ!」
「そうだカァ!」
「チュウ!」
ジローザの提案で、カラスとブタのぬいぐるみとネズミがトボトボと城の中へ入っていきます。
しかし助けを求められたお城の人たちの態度は、とても冷たいものでした。
「誰か助けてくれだカァ!」
「うわっ、なんだこのバケモノめ!」
しゃべるカラスやブタのぬいぐるみを見てお城の人たちは驚きます。
「待て!オレたちは王子なんだブゥ。悪い魔女に魔法をかけられてしまったんだブゥ・・・」
いつもイタズラをされて苦しめられていたお城の人たちは、自分たちが王子なんだと言っても誰も耳を傾けてはくれません。
しかもあげくの果てには、お城の外へと追い出されてしまいました。
外は夕暮れ、もうじき寒い夜になろうとしています。
「オレたちはどうすればいいんだ、カァ・・・」
「チュウ・・・」
どこからかおいしい食べ物の匂いと子供たちの笑い声がしてきますが、三人は腹ペコでおなかがグーグー鳴っています。
ジローザが意を決したように立ち上がります。
「魔女の屋敷に行こう!そして魔法を解いてもらうんだブゥ」
「魔女の屋敷は、お化け屋敷だぞ!もうすぐ夜になるのに、怖くて近づけないカァ・・・」
「チュウ・・・」
しょぼくれて意気消沈しているイチロージとサブローゼに、ジローザが声を張り上げます。
「だまらっしゃい!だブゥ!」
「ひ~!?」
「このままでは腹ペコのまま、ここで倒れるのを待つだけなんだブゥ!」
「仕方がないカァ・・・」
「チュウ・・・」
夜のお化け屋敷はとても怖かったけれど、そう言われてイチロージもサブローゼも納得します。
「そうと決まれば、イチロージ・・・。後は頼むだブゥ!」
「カァ?」
「オレたちを魔女の屋敷まで運んでくれだブゥ!」
「カァ!?カァカァ!」
イチロージはビックリして叫びます。
「仕方がないブゥ!オレたちの足で魔女の屋敷まで歩いて行ったら、五日はかかるんだブゥ。だからオレたちを抱えて飛んでくれだブゥ」
「わかったカァ・・・」
しぶしぶイチロージが承諾して、ネズミのサブローゼをポケットに入れたジローザを抱え、うっすら星の瞬きだした空に向かって飛び立ちます。
こうしてカラスとブタのぬいぐるみとネズミの三人組は、魔女が住んでいるお化け屋敷に向かうことになったのでした・・・。