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第4曲:ORIGINAL PLANKSTER

俺が性悪女の去蝶と契約をした次の日の朝、いつもより早く起きた俺は座禅を組んでいた。



―いつもそうだ。小さい頃からそうだった。落ち着かないとき、どうしても不安のとき。座禅を組んで、目を閉じるとまるで自分に流れる時の流れがものすごく遅くなった気がして。


俺はそんな時間を過ごすのが好きで、そこに自分しかいないという感覚が好きだった。

多分小さい頃から母親に相手にしてもらえなかった自分がどうしようもなく、漠然とした虚無感があって不安だった。だから座禅をしていたのだ。心が落ち着いた。

だがまったく一人というわけじゃなかった。いつも加奈が一人の俺によってきてくれた。俺にとって心を開けた相手は親父と加奈だけだ。


(そういや、加奈のやつどうしてっかなぁ…悪いな、ムショに入れられるような兄貴で…。加奈のやつ、心配してんだろうなぁ…)


俺は座禅を組みながらそう思った。本来何も考えないのが座禅なのだが…。

そう考えていたとき後ろで西園が目を覚ました。俺はその状態で身体を少しも動かさず目を開けた。俺は西園に挨拶をした。


「おはようございます。西園さん。時間どうりに起きましたね。そろそろ看守が来る頃ですよ。」


俺はそういうと再び目を閉じた。西園は大きくあくびをした後布団をたたんだ。そしていつものようにたたんだ布団を枕代わりにして寝転がった。ホモ野郎はまだ寝ている。

俺は静かに座禅を組んでいた。後ろで西園が見ている気配を感じながら、看守の足音が近づいてくるのを感じながらその状態で微動だにしなかった。

看守の足音が俺の房の前で止まった。俺はゆっくりと目を開けた。看守は俺を見下ろしていた。


「なんすか?」


俺は看守と目を合わせなかった。目を合わせるということは身体を動かさなければならない。

この状態でいたい俺はわざわざ顔を上げて目を合わせるなんて事はしたくなかった。


「出ろ。御守地、お前を今から移送をする。お前のような問題児は他の刑務所に移すことになった。」


そういって房の鍵を開けた。


(移送…か、これで俺を組織に引き渡すんだな。まぁこいつは知らないだろうが。)


俺はそう思いながら荷支度をして、房を出た。


「西園さん、短い間でしたがお世話になりました。」


俺はそう言って頭を下げた後、そして看守の後についていった。



俺は外に出る前に更衣室で着替えを許された。LeeのGパンに黒のハイネックのインナー、その上に白のカッターシャツのようなものを着た。ボタンは2、3個空けておくのが俺流のポイントだ。髪の毛はだいぶ伸びている。ストレートではなく、先のほうが少しくねくねしている俺の癖毛だ。


そのまま護送車、に乗るふりをして駐車場の裏に連れて行かれた。そこには去蝶とここの刑務所の所長らしき男がいた。男は去蝶にぺこぺこ頭を下げていた。


「お〜い去蝶さんよ、来たぜぇ〜。思ったより早い出所だったよ。一体いくら使ったんだ?」


俺は歩きながら去蝶に挨拶をした。去蝶は相変わらず静かに微笑んでいた。


「ふふ。早くあなたにこちらに来て欲しかったから。ふふふふ。」


去蝶はにっこりと更に微笑んだ。


「それじゃ行きましょ。さ、乗って。運転手さん、お願いね。」


運転手は女の子だ。浴衣のようなものを着て黒のスパッツをはいている。首には赤い毛糸生地のマフラーのようなものが巻かれている。黒い髪は後ろで結んでいる。ほどくと胸らへんまでありそうだった。顔は去蝶に似ていたが、少し幼く去蝶に似た美しさというよりもかわいらしい感じがした。


「は〜い。でも金は取るよ。」


「ちょっ、送迎って普通リムジンとかじゃん?ワゴン車って、え、ギャグ?」


俺はそう文句を言った。去蝶はふふっと笑った。


「あら、それじゃ護送車でもいいわよ。息詰まるような釈放ね。ふふふふふ。」


「…っこれでいいですー。」


俺はふてくされながら車に乗り込んだ。去蝶も後に続いて乗る。そして車はそのまま裏口から出て行った。

しばらく走って車は高速に乗った。俺は後ろの席で外の景色を見ていた。何本も高層ビル建っている。去蝶はその隣で本を読んでいた。俺は去蝶に話しかけた。


「車に乗ってるとさ、酔うんだよねぇ…。特に本とか読んでると。気持ち悪くなって吐いちまわないか?あんた大丈夫なのかよ?」


去蝶は本を開いたまま俺のほうを向いた。


「まぁ私はまだ大丈夫のほうよ。こーゆーのには強いの。でももし気持ち悪くなったら吐くかもね、あなたのほうに。ってのはうそようそ!!ふふふふ、パーキングに停まるわ。のども渇いたしね。繭、そこのパーキングに入って。」


「あいよぉ。」


ここで初めて俺はこの女の子の名前が繭ということを知った。繭はウィンンカーを点灯させパーキングへと入っていった。

適当なところで車を止めて去蝶は飲み物を買いに行った。俺は繭と二人きりになった。繭はこちらを見ている。俺はその場の空気に耐え切れず、繭に話しかけた。


「あのさ、繭って言ったよな?繭もさ、やっぱ組織の人間なのか?」


俺はとりあえずその場を取り繕うとした。


「ん〜違う…かな。全然関係ないってわけじゃないけど、まぁちょっと関係ある程度。私さ、組織で働いてるわけじゃなくて、自営業なんだ。」


「へ〜自営業かぁ。すげぇなぁ…。うん…すげぇ。……………………………あんた歳いくつよ?」


俺は質問は半ばツッコミだった。繭は俺の質問に正直に答えた。


「18だよ。高校は中退しちゃったけど。」


一応俺より年上だ。俺は更に質問する。


「自営業ってなにやってんの?服とかデザインしてんの?」


繭は笑いながら、だがテレもせずに答える


「ちがうちがう。あたしね、賭博場経営してんの。違法だけどね。まぁ店の資金はおねえちゃんに出してもらったし。お客も金持ってるからさ、結構うまくいってるよ。しかもバックにはおねえちゃんの組織でしょ?警察も介入できないのよこれが。」


繭はしてやったりというような笑みを浮かべる。俺はこのとき改めてこの組織の大きさを認識した。


「でもさ、18っつったら免許とりたてじゃん?それにしちゃ運転上手いよなぁ。」


「あ〜やっぱそう思う?そうかぁ〜やっぱ免許とろうかなぁ…。」


繭はため息をついて空を見ていた。俺は繭を見ていた。驚愕の眼で……。

突然繭が話しかけた。


「ねぇねぇ、ポーカーしようよ。一回でいいからさ。」


俺はいきなりの挑戦を承諾した。一回だけならいいか。


「じゃあさ、掛け金は1000円で。いい?」


そういって繭は懐からトランプを取り出した。カードをよく切っている。繭がディーラーだ。

一枚づつ交互にカードが配られる。俺の役はキングの1ペアだけだったので三枚チェンジした来た、キングが来た。俺の役は3カードだ。繭はカードを1枚代えただけだった。


「オープン。」


繭のカードはジャックの3カードにエースが一枚、それにジョーカーが入ったフルハウスだった。


「私の勝ちぃぃぃ。はい、千円ちょーだい!!」


繭は元気よく手を突き出した。俺はしぶしぶ千円を払う。千円を受け取りながら繭は大胆発言を言った。


「あんたさ、かなりイケメンだよね〜。刑務所で掘られたりしなかったの?」


「ウン…掘られそうになったよ…やばかったねあれは。ダメかと思った…てかよぉ負けっぱなしはムカつくからよぉぉ。もう一回勝負しようぜ。」


その時後ろから声がした。振り向くと去蝶がいた。


「ふふふ。繭とポーカーをしても勝てないわよ。イカサマが上手いから。」


去蝶はにっこりと微笑んだ。繭は去蝶の買ってきた飲み物を受け取り、飲みながら去蝶に怒った。


「ダメだよぉ。イカサマ使ったって言っちゃあ。」


しかし俺にはいつイカサマを使ったのか、全然分からなかった。それを察したのか去蝶はイカサマの説明をしだした。


「さっきのはね、あなたがカードをチェンジしたとき、あらかじめ一番下にあったジョーカーを人差し指と中指ではさんでね、あなたに渡した後、一番上に持ってきたの。あなたはカードをもらった瞬間、カードがそろってないか、それに目がいってしまったでしょう?その隙にカ

ードを移動させたってワケ。ふふふふ。」


去蝶はびっくり箱に驚かされた子供を見るように笑った。

俺は繭にキレた。もちろん思いっきりキレたわけではない。


「おいおいおい。きたねぇぞ!!繭。運で勝負すんのがポーカーだろぉぉ!?」


だが俺の言葉を去蝶はさえぎった。


「でもね、あなたがこれから足を踏み入れる世界もこんなことが日常茶飯事で行われているの。もっと複雑で、醜い騙し合いが…ね。勝つためになんでもするセカイ……。私もそうなのよね……。」


そう言う去蝶の顔はどこか悲しみがあった。俺は口を閉じた。いつもとは違う、まじめな去蝶だ。


「でもよぉ、俺がいつも見ている世界も醜いぜ。政治家とか上の人間とかなんかはよぉ。」

俺もいつになくまじめに話した。去蝶を慰めるように。去蝶はこちらを振り向き微笑んだ。


「ふふ、アリガト。やっぱりこんな醜い世界、リセットしたほうがいいと思うわ。」

去蝶は遠くを見るような顔だった。繭はこの苦しいような空気をぶち壊した。


「はいはい。暗い顔しな〜いの!!さ、車に乗って!!もうすぐ着くんだから。陽介も、早く乗った乗った!!」


「なんだ、やけにハイテンションだな。」


俺は少し驚いた。いきなり現実に引き戻された気がした。


「う〜んまぁね、ちょっとお酒入ってるから。」


今日の空は蒼かった…天国が近くに感じられた……気がする。





「あのさぁ、繭ってなんで組織に入らないわけ?」


車の中で俺は去蝶に質問をした。去蝶は読んでいた本を閉じた。運転していた繭もこちらを向きはしなかったが話しに食いついた。


「あのさ、私ってさっきポーカーしてたようにけっこーギャンブル好きなんだ。それでさ、よく学校で友達囲んでポーカーとかブラックジャックとかやってたんだ〜。お金賭けてね。そいでバレないようにやってたんだけど、人間って負けるの嫌じゃん?お金とかかかってるとほんとマジになるよね。そいでさ、友達の一人がチクッちゃってさ〜。私学校退学になっちゃったんだ〜。なんかさ〜ギャンブルで負けたやつ等が盗みとか恐喝とかやらかして、諸悪の根源の

私の首が飛んじゃったの。」


繭はそう言いながら自分の首を掻っ切るまねをした。話はまだ続く。


「んで、退学になった後、おねえちゃんが組織をバックに賭博所開いてね。イカサマ使える私はそこの経営任されたの。店に損害でないしね。」


繭はここまで話し、黙って聞いていた去蝶が続きを語った。


「人にはその人に合った才能があるの。料理人には料理人の才能。画家には画家の才能。そしてこの娘にはギャンブラーとしての才能がね。裏で経営してれば必ずどこかの上役が来るの。そこで商談をすることもできる。この娘がやってる店は組織と客のパイプ役にもなってるの。

それにね、繭には人を見抜く才能もあるから。」


「才能?」


俺は去蝶に聞き返した。


「ええ、組織にとって利益になりうる人物か。また、あなたのような素敵な”力”の持ち主かどうか、をね。ふふ。」


力……?俺の頭にある疑問が芽生えた。


「あのさぁ、その力って何なんだ?俺が樋口を半殺しにしたときのあれか?」


「いいえ、それもあるけど、もう一つの、自分特有の”力”のことよ。人それぞれにある力。」


「なぁ、それって俺にもあるんだよな?引き出すことって出来るんか?」


俺は去蝶に聞いてみた。


「さぁ…本人次第だけど、まずは繭に聞いてみたら?」


「はいはい。もう着くから。後で見てあげるよ。」


そう言って車はある大きなビルの地下駐車場へと入っていった。大企業などが構えるようなおおきなビルだ。


「なぁ俺よぉ、社会の表に出ないような仕事するからてっきり路地裏にあるような小さな事務所考えてたんだけどよぉぉ、いくらなんでもこんなに堂々と建ってるってやばくない?」


俺は去蝶に疑わしく聞いてみた。


「ばかね〜。いくらなんでも「殺し請け負います。」なんて看板立てるわけないでしょ。表向きは貿易会社ってことにしてあるの。」


「ふ〜んじゃそのうちどっかのライバル会社の飛行機突っ込んでくる可能性もあるかもね。」


俺は笑いながら冗談を言った。


「笑えない冗談ね。でもありえないとはいいきれないなぁ。」


去蝶は怒り笑いをしている。繭はそうなったらまた面白いかもと冗談を言った。とりあえず俺は社長室へ連れて行かれることになった。繭とは社内の途中で分かれた。社長室にたどり着いた俺は中へ通された。


「うお!!?外は企業のビル!!でも中は!?」


社長室はとてつもなく広かった。まるで高級感あふれる日本の庭が臨める茶室のようだ。鹿威脅しや波石もある。


「ごめんなさいね〜。普通の社長室だったんだけど落ち着かなくて…。んで改装して日本庭園風にしてもらったの。どう落ち着くでしょ?」


「お偉方の考えてることはわかんねぇけどでもなんか落ち着く。」


俺は素直な感想を言った。去蝶は茶室のような場所に案内した。


「さ、座って。正座でもあぐらでもヤンキー座りでもいいけど、立ってるのはダメよ。いちいち見上げて話すのは疲れるから。」


そう言われて俺はあぐらをかいた。去蝶はお茶を入れた。


「あ、ども。」


俺は湯飲みを受け取ると一口飲んだ。熱い…。


「さて、今から会社事項及び、契約、それと陽介、あなたの質問を受け付けるわ。」


去蝶はそういって一枚の契約書と書類を取り出した。文字がびっしりとある。


「……これ読めってか?重要なとこだけ話してくれよ。」


「別に私が説明してもいいけど、私目が悪いからあなたにとって都合の悪いことが書かれてても見落としちゃうかも…ね。ふふふふ。」


仕方がないので自分で読むしかない。任せたら仕事で戦地に飛ばされるかもしれん。


「…殉職した場合、当社は一切の責任を負いかねます。この負いかねますってさぁぁ、結局どっちだよ。回りくどいんだよ。んでさ、どっちなの?これ?」


「…責任を取るってことよ。心配しないで。」


「わかった、つまり責任は取らないってことだな。オッケオッケ。」


「……なんかムカつくわね。早く全部読んでね。」


去蝶はパシリにされた中学生みたいな顔をした。俺はざっと目を通した。こう見えても読むのは得意だ。ところどころ怪しい一文(当社の任務に失敗し、自白を強要される場合、自害すること。また、捕虜となった場合は当社の使者が責任を負わせます。)などもあったが、一応すべて承諾することにした。


「いいよ。全部読んだ。契約書は?」


俺は書類を置いて代わりに契約書を受け取った。俺は一つの質問をした。


「あのさ、これって一度入ったら抜けることってできたりする?」


「脱獄及び殺人の罪状がついて、刑期がうんと重くなって刑務所に帰ることならできるけど?」


「わかった。やめない。つかやめれない。」


サインした契約書を去蝶に渡しながら俺は言う。去蝶はそれを受け取り契約書に目を通した。


「ん、オッケ。これであなたは正式にここの構成い……社員よ。何か質問は?」


「んじゃまずあんたの本名教えて。」


「だめ。次。」


去蝶はばっさりと切った。俺は次の質問に移る。


「…この組織の名前は?一応あるっしょ?」


「ん、組織の名前はね、{日輪}よ。この国を照らす存在という意味をこめてね。それじゃ次の質問。」


「あ、そういやさ、ここに化け物退治ってあるけどなにそれ?なんなのそれ?」


「あ、それね。うん。その通りよ。化け物退治。ついでだから能力についても説明するけど、


あなたみたいに肉体的な力が引き出されるのともう一つ、”力”が存在するの。」


「はぁ?わけわかんねぇぇ!つまり?」


「超能力とかでそういう系のやつ見たことあるでしょ?あれみたいなものよ。一人ひとり違う”力”があるの。実際見せましょうか。龍兵!!出てきて!!」


りょうへい?出てきて?忍者みたいに天井にでもいるのか?と俺がそう思っていると自分の眼を疑うようなことが起きた。なにもないところから人が現れたのだ。まるで身体に塗っていた保護色が溶けて流れるように姿を現した。


「へいへ〜い。どうも〜。ないすとぅ〜み〜とぅ〜。御守地陽介。」


そういって姿を現した男は赤い帽子を被り、更に黒い帽子を被っていてつばを安全ピン二つで留めている。髪は左側が黄色で右側が黒だ。服装はB系のダボダボな服で手首にミサンガを着けていた。


「これが”力”よ。彼の力は透明になる、透明にすることができる、ていう能力よ。あなたにもこんなような力が備わっているわ。繭はそれを見抜いたのね。」


これが…”力”?俺にもある…?どんな?


「あ、のよぉ。いきなりでなんか信じられねぇ。けど信じるしかないんだよな?どうやってこの”力”が発現するんだ?」


俺はもうとにかく聞くしかなかった。聞いてこの力を身につけたい。


「それはお前次第だよ。素質ときっかけで発現する。風呂場で滑って頭打ったりセックスした後ってのもあるな。ま、きっかけはさまざまだけどね。」


龍兵はそういうと去蝶に話しかける。なにやら仕事の話らしい。龍兵は書類を受け取るとそれに目を通し一言だけ去蝶に質問した。


「この仕事、遂行させるにあたってなんかルールはあるか?」


その質問にい対し去蝶も一言で質問の答えをだす。


「バーリ・トゥード。」


それだけ聞いて龍兵はまた去蝶に質問をする。


「あのよ、御守地連れてってもいいか?素質がありゃ今回の任務で発現するんじゃあねぇか?大丈夫だよ。死にゃしねぇ。俺がついていくんだからよ。」


「えぇ、もちろん。ちゃんと見てやってね。」


そう言って龍兵は俺のほうを振り向いた。


「つーわけでだ。今日からお前は俺のパートナーだ。ヨロシクな。19歳でお前より年上だけどさ、俺に話しかけるときはタメ口でいいよ。」


そう言って部屋を出て行った。俺もそれについていく。


「頑張ってねぇ〜。」


去蝶は間延びした声で応援する。所詮他人事だしな…。

俺は歩いている龍兵に追いついた。どうやら地下の駐車場へ向かうようだ。エレベーターに乗って駐車場へと降りてゆく。


「お前さ、信じてる宗教とかあるか?」


エレベーターの中で唐突に龍兵は俺に質問した。いきなりいわれても…


「あ…、う…。ない、かな…?」


「へぇぇぇぇぇぇ!?ないのか?じゃあよ、これから先とりあえず信じれる宗教とか見つけとけよ。俺等の仕事は人殺したりするんだ。お祈りとかしとかねぇと地獄に落ちちまうぜ。俺は毎日お祈りしてっからよぉぉ、地獄に落ちねぇぜ。」


「おいおいおいおい、自信満々やね?必ずしも地獄落ちないとは限らんぜ?」


そういって俺と龍兵は二人で他愛もない話し合いをしていた。

駐車場につくと、龍兵は自分の車の鍵を開けた。ブルーメタルのコルベットだ。


「かっけぇぇぇぇぇ!あんたの車かよ!?やっぱこの仕事給料いいんだなぁ!?」


「傷つけるなよ?俺の魂だ。」


誇らしげにそういうと、車に乗り込んだ。俺は助手席に乗る。内装もかなり金をかけてあった。龍兵はエンジンをかける。駐車場に内にけたたましいエンジン音が鳴り響く。


「シートベルト着けろよ。俺ゴールド免許ねらってっから。お前のせいでパーカーに捕まったらお前3代先まで恨むぜ。」


「そういやよ、さっき去蝶がバーリ・トゥードとか言ってたけどあれどーいう意味?」


俺はシートベルトを着けながら質問をする。龍兵はにっと笑いながら答えた。


「あれか?あれはな”なんでもアリ”って意味だよ。だから暴れても爆弾使っても殺してもい

ーんだよ。あとさ、途中でコンビニ寄っていこう。」


「あーそうだな。うん。これを忘れちゃいけないわな。おやつの時間だ。」


そういって龍兵は車を発進させた。時計は3時を回っていた。






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