第23節:I RUN TO YOU!!
更新遅れてましたね〜。スミマセン!!
兄弟ケンカ勃発です。
「ン〜…目立つな…こりゃあ。」
今俺と天浪琴那は高速のとあるパーキングエリアで無残な姿になった車を止めていた。
俺は屋根が吹っ飛びフロントガラスの割れた車を眺めた。
元は美しいブルーメタルのコルベットだったが今は見る影も無い。
全損までとはいかないが、ほぼソレに近い。
「まぁ…いい…か?いや、よかねぇよなぁぁ。マジでどうしようか…。」
この車で走り続ければ絶対警察に職質されるだろう。
時分の身の上を話せない俺は必ず連行されてしまう。
それどころか天浪琴那に至っては警察に保護を求めるかもしれない。いや求めるだろう。
それだけは避けなくてならない。
「ねぇ…あの…あなたって…あの…えっと…間違ってたらすみません…、御守地陽介…さん?ですか?」
これからのことを思案していた俺にいきなり天浪が質問してきた。
何でこの女は俺の名前を知っている?
「…そうだよ。つかなんで知って…あぁぁ〜、あれか?俺がヤンキーブッ殺したから有名なンか?」
「はい…。あ、あと同じクラス…でした。」
天浪は恐る恐る頷き俯いた。
俺はん〜…と頷き天浪の顔を下から覗き込んだ。
「ひゃッ!?」
「あんまよぉ、怖がンなや。傷つくぜ。俺はお前を護るって言ってンだし。あとさ、タメなら俺に敬語で話すのやめてくれ。」
「はい…あ、うん…。」
天浪は顔を紅潮させ再度頷いた。
俺も「うん。」と頷いて微笑むと天浪も微笑んでくれた。
「なんかさ……私…あなたのこと前から知ってた気がする。」
「『陽介』だ。陽介って呼んでくれりゃあいい。あなたとか君とか、そんな風に呼ぶんじゃなくてよ。」
「あ…うん。わかった。」
天浪はバツの悪そうに頷いた。
俺はその時丁度パーキングエリアに入ってきたバイクを見つけた。
「ちょっと待ってろ。」
俺は天浪をその場に待たせバイクの持ち主に近づいた。
バイクの持ち主は180cmは有りそうな男性で、かなりがっしりした体格の筋肉質な男だった。
俺はにこやかな気のいい青年のような素振りを装い、何気なくその男に話しかけた。
「いいバイクっスね。」
「あぁ、速ぇぞ。」
男は機嫌よく笑うとバイクの座席をぽんぽんと叩いた。
バイクの種類はホーク2だ。
「なぁ…アンタさ、悪いンだけどこのバイク貸してくんねぇかなぁ?」
俺はそう言いながらおもむろに腰に差していた『サイレントマジョリティ』を取り出しバイクに手を付いた。
「はぁぁぁ!?ザケたこと言ってンじゃねぇぞテメ…」
タンッ!
『サイレントマジョリティ』は乾いた火薬音を立て地面に穴を開けた。
そして火薬音とは時間差で薬きょうが地面に落ちた軽い金属音が聞こえた。
男はというと腰を抜かし、しりもちをついてただただ俺を見上げている。
そしてその男の足元には爆ぜた様な弾痕が付いていた。
「ま、…マジ…かよアンタ……!?」
「ホントにさぁぁ〜悪いと思ってンだよ?でもまぁ運が…悪かったと思って、な?諦めてくれや。ヘルメットは…お?二つあんじゃん。彼女居ンの?」
バイクに跨りグリップを回してエンジンをかけた。
軽い二発の音が響いた。
「ンじゃ、あんがとな。後で返すから。多分。」
俺はそのままバイクを走らせその場を去った。
天浪の元へ戻ると天浪は俺のやり取りを見ていたのか微妙な顔をしていた。
「あなたって…結構無茶するね。」
「ン…?まぁな。それにな、今回はお前を護るのに手段は選らばねぇぞ?くどいけどヨ、お前を必ず護るから。」
「なんか…恥ずかしいよ。」
天浪は顔を赤らめ、ぎこちなく微笑んだ。
正直今のは俺もかなりクサイと思った。だが本心だからしょうがない。
そしてその本心を打ち明けるほど俺は天浪を護りたかった。
「なぁ…俺は正直お前が何で狙われてンのか分かんねぇ。でもさ、その髪の毛と瞳の色見る限り俺と似ている。色違いっつーだけでな。なぁ…お前ってあれか?自分に不思議な力とかあったりする?」
そう。この疑問はこの天浪を初めて見たときから抱いていたことだ。
なんでこんな高校生がタイラントに拉致られかけていたのか?
そして瞳の色と髪の色…。
高校生で、いや、一般人でこの容姿はありえねぇ。
天浪は無言でゆっくりと頷いた。
「…やっぱりか。ンでどんな”力”ヨ?」
「えっ……と。私ね…」
そのとき、天浪の遠い背後の異変に初めて気がついた。
『それ』はこちらにどんどん近付き、近付くにつれその姿をはっきりとさせていた。
本来なら町で傍迷惑な爆音を流している右翼の車。
今それが他の車を意に介さぬかのように真っ直ぐにこちらへと暴走してきた。
「ッ!!天浪ぃ!!バイクに乗れぇぇぇぇ!!逃げンぞッ!!ヘルメ被れぇ!!」
「え!!えぇっ!?」
さっき強奪したヘルメットを天浪にパスした。
天浪は言われるままに急いでヘルメットを被り、訳の分からぬままバイクの後ろに跨った。
俺は天浪が乗ったのを確認するとバイクのハンドルを握りスロットルを回しバイクを走らせた。
「ちょっ…!?な、なにあれ!!何で右翼の車が!?」
「ヤバいぜ…どーやって俺らの場所が分かったンか知らねぇけど誠也の野朗、もう何が何でも勢いだ。逃げ切るしかねぇぇぇ!!」
後ろからは他の車を押しのけて誠也の乗った右翼の車が迫ってきていた。
右翼の車の中でジェイデッドは助手席でふんぞり返って座り、陽介たちを後ろから見ていた。
「事故るンじゃあねぇぞ…?必ずあのバイクに追いつけ。じゃねぇとテメェ、その首トバすからな。」
抜き身の刀の切っ先を運転している男の喉下に突きつけた。
男は蒼白な顔色でただただ前を失踪するバイクに追いつこうと必死にアクセルを踏んで運転をしていた。
「俺の弟ながらマジでイカレてやがンぜ!!道交法上等で逃げ切ってやるヨ!!」
車間をバイクで縫うように走り、俺は車との距離僅か数センチの所を走行した。
「キャアァァァァァッ!!!」
「天浪、しっかり捕まってろ!!ンで口閉じてろ!!舌吹っ飛んじまうぞ!!」
バイクを傾け大きなカーブを曲がった。
途中オービス(高速道路の監視カメラ)に写るのを避けるために『フール』でそれら全てを撃ち落とした。俺もフルヘルで顔を隠しているわけだが面倒なことになるのはいやだったのだ。
「しつけぇ!!!マジでしつけぇし!!クソウゼェ!!!」
俺は悪態をつきながら今しがた撃ち落したオービスを避けて走行する。
後ろのほうでは急に現れた障害物にハンドルを取られ事故が起こっているようだが俺には関係がない。
時速は110キロ。一歩間違えれば即天国逝きのこの状況で俺の集中力は最善の選択を取って身体を動かしていた。そして俺はその自分の異常とまで言われるような集中力に驚いていた。
風圧が自分の体を押してくるような感覚が絶えず走行中の俺のバランスを奪おうとしている。
イレギュラーに動く車を簡単に避けられる。
そんな中でさえ頭の中は冴え渡り、感覚は研ぎ澄まされ身体は軽く感じる。
それでも逃げ切れる自信はあまり無かった。
なぜならば、今は銃が使えない。
人間の眼が前についているのは前を見るためであって決して後ろを見るためではない。
ならば後ろを向いて銃を撃つなんてことは不可能だ。必ず事故る。
そして俺の頭が導き出した答えは一つ。この集中力を保ちつつ逃げ切るしかない。
だがダメ元で、俺は不意に後ろで俺にがっしりとしがみついている天浪に聞いてみた。
「天浪、銃撃てるか?」
「無理!!ムリムリムリムリムリ!!絶対無理!!」
必死に銃を拒む天浪。ま、ダメ元だったので気にはしない。
時速は120キロに達した。僅かな判断ミスと寸分計算の狂いが大惨事になりうる。
「ギリギリだな…。逃げ切れる…か?」
後ろでは右翼の車が更にスピードを上げて迫ってくる。
一般車は避け、避けそこなった車ははじかれ廃車となっていた。
「チクショウ早ぇ…!!…降りるか!」
目の前には分離帯があり、降りるかこのまま高速道路を走り続けるか頭の中をよぎった。
だが降りれば下の道路の状況にもよるが十中八九、追い付かれる。かといって高速が渋滞ではないとは限らないし、このまま集中力が続く保障などビタイチない。
「どっちだ!?どっちが…」
「降りた方がいい。」
「ア?」
後ろからボソリと、天浪が俺の背中に埋まった状態で囁いたのが聞こえた。
「今…なンつった?」
「ウ……陽介…このまま高速を走ったら…死ぬ。」
なんか様子がオカシイ。
なんとなくだが、苦しそうな感じもする。
「……じゃ、下行ってみっかぁ!!」
迷ったら第三者の意見を採用する。
どちらにせよ今ウダウダ考えるより天浪が下に行こうと言っているなら行くしかないんじゃないかと思えてきた。
天浪は振り落とされまいとさらに腕に力を入れ体を密着させていた。
小刻に天浪から震えが伝わる。俺は気を持ち直し
ハンドルを握った。
料金所を突っ切り、普通の一般道路に下りた路肩にバイクを止め俺は後ろを振り向いた。
「天浪…大丈夫か?」
「頭が…痛い…。」
「ツライか?」
「ううん…大丈夫…。」
力なく天浪は囁いた。
天浪は相変わらず顔を背中に埋めて力を緩める気配もなく俺に抱きついている。
「頑張れよ。日輪に着くまで…あと、あの野郎をまくまでな。」
後ろの料金所を暴走した右翼車が無理矢理突っ込んで破壊して俺に向かってきた。
「逃げ切るか。どちらにせよ急がなきゃなんねぇしな。」
バイクのスタンドを払いアクセルを回して再びバイクを走らせた。
後ろからはピッタリと誠也の乗った右翼車が追ってきている。
何回かぶつけたせいで車体はボロボロになっていた。
「先ず謎はどーしてあいつに『俺の居場所が分かったのか』ってことだ。何かの力を使ってンのは分かるんだがそれを突き止めなきゃ逃げ切れねぇ。」
バイクを走らせながら色々と頭の中で思案するが何も誠也の能力に結び付くものはなかった。
「謎を解かなきゃまた追い付かれるな。」
俺は目立つ公道から工場地帯の荒れた道路を走ることにした。
信号を無視し、次の角を曲がり一本道をしばらく走ったあとバイクを止めた。
「ど…うしたの……?」
「悪ぃな天浪。やっぱ戦うわ。逃げ切れるとは限らねぇし。……ちょっと我慢しといてくれるか?」
俺は腰に差してあった『フール』と『サイレントマジョリティ』を抜き出し、今しがた通ってきた道路の真ん中に立って振り向いた。
距離にしておよそ4、50m程先に暴走する右翼車が見えた。
「そういやぁよぉぉ〜、昔ガキの頃に右翼の悪口言ったらよぉぉ、夜家に突っ込んで来るっつー迷信があったっけ。それ以来俺ぁ右翼の車が怖くて仕方がなかったぜぇ〜。ま、今は怖かないけどさぁぁ。」
一人事を言っている家にどんどん右翼車は距離を近付けてきた。
俺はフールとサイレントマジョリティを構え、狙いをフロントガラスに合わせた。
「ブッ飛びやが、れ!!」
俺はとにかくフロントガラスに弾丸を撃ち込んだ。
一発でいい。
とにかく当たりゃあいい。
車が止まりゃあいい。
そしてあわよくば誠也のカスがくたばりゃあいい。
「ウォォラアアァァァッ!!」
俺の雄叫びとともに銃の連射音がなり響いた。
すぐに二挺はカチカチと弾切れをし、俺はすぐさま新しいマガジンを取り出して装着して撃ち始めた。
右翼車のフロントガラスには弾痕がつき、見える限りではかなりの弾丸が車についている。
俺はサイレントマジョリティをしまい、フールを両手で構えて狙いを定めた。
狙うは左前輪タイヤ。
サイレントマジョリティの数段破壊力のあるフールでタイヤを撃ち抜こうと考えた。
「コケてろ。」
ドン!!ドン!!
左前輪タイヤを撃ち抜かれた右翼車はコントロールを失い、工場の塀の壁に車体をガリガリと擦り付け倒れた。
俺は銃を構えたまま倒れた右翼車に近付いていった。
目の前の車はフロントガラスに細かくヒビが入り車の中の様子は見られない。
「生きてンだろーがよ。出てこいや。」
ジリジリと、ゆっくりと確実に近付く。車は助手席を上にして横転していた。上向きになった助手席のドアに神経を集中させる。
あの野朗は絶対生きている。それはもう確信できるくらいに何か感じる。メチャクチャ胸クソ悪い何かの感覚が。
突然勢いよく助手席のドアが吹っ飛び誠也がのっそりと出てきた。
頭からは血を流し、だが相変わらず無表情で上半身だけ姿を見せた。
「ウゼェ。さっさと死ねや。」
ドゥゥー…ン!!
遠くから聞こえる工場の機械音やら車の音の中に『フール』の銃声が一発響いた。
有無を言わさず発砲した俺の弾丸は誠也の左胸周辺を吹き飛ばし、向こう側が見えるくらいぽっかりと大きな穴を開けた。
天浪のほうを振り向くと天浪は震えながら事の顛末を見守っている。
俺は再度誠也のほうへと向き直り、銃を構えながら車へと近づいた。
死体は口から血を流し、眼は見開いたまま。
全くピクリとも動かず、俺が誠也の死を決定的な確信にさせたのは胸に開いた大きな穴があった。
ぐったりとのけ反るような形で車にもたれかかって倒れている
「死んだか。」
髪を掴み顔を見る。
ズグッ
「…ハァ?」
突然俺の左太ももに激痛が走った。
見ると刀がフロントガラスを貫いてそのまま深々と俺の太ももに刺さり、そこから流れ出る血がGパンを紅く染めていった。
「ッグアアァアアァァ!!あ、足が ぁ!!」
俺はその場に倒れこみ、足の傷口を押さえながら後ずさりをした。
刀は俺の足からゆっくりと抜け、血を滴らせながら刀身の根元へと伝っていた。
「ぎゃあぎゃあ騒ぐんじゃねぇよ。たかが足の一本で。」
バリバリとフロントガラスを割りながら誠也が姿を現した。
頭からは血を流し、ふらふらとおぼつかない足取りではあるがしっかりと立っている。
「テメェなんで…生きてやがんだ……!?」
「生きてちゃワリィかよ。悪いが俺の死因にお前に殺されるっていうのは絶対に無いんだよ。」
誠也は刀を杖の代わりに俺を見下ろしている。
俺は見下ろされるのにたまらなく激しいムカツキを覚え足に力を入れて立ち上がった。
出血と痛みが激しいがそんなもの見下ろされる屈辱に比べれば耐えられないものではない。
「無理すんなよ?テメェはおとなしく俺に見下ろされながら殺されりゃあいいンだよ。イテェンだろ?クソムカつくから立たなくていいよ。クズ。」
「カッカッカッ!!嘗めるなよ中坊が。俺ぁお前と違って何回も死線を潜り抜けてきたんだ。テメェとは格が違うんだよボケッ!!フザケたこと言ってっと泣かすゾカスが。」
自分よりこの世界について知らないガキがいきがっているのを見ると無性に腹が立つ。
俺はサイレントマジョリティを構え、反撃はおろか避ける間も与えずに発砲した。
弾丸は胸の真ん中に着弾し、傷跡からは噴水のように血が出ている。
「それで?」
胸から血を流している誠也はそのまま消え、そのすぐ後ろに誠也が変わらぬ姿で立っていた。
「チクショウ。そういうことかよ。そーいう”力”かよ。」
俺は誠也の謎を解き明かしクククッと笑った。
「そう、お前が今撃った俺は本体じゃあない。言うなれば『過去の俺』だ。そして俺の”力”は…」
誠也はそういいながら手をかざすと見覚えのある人物が目の前に現れた。
黒いハイネックの服、紅い髪、紅い瞳、そして俺に向けられたサイレントマジョリティ。
「『過去を再生すること』」
なんてこった…。チクショウ。
工場の敷地内に乾いた火薬音が鳴り響いた。
もっと早く更新できるようにします!!ハイ!!頑張ります!!