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第17節:束縛の中で生きる辛さ

他の作家様と合作するオムニバスとかゆうやつやってみたいな〜。

でもあれってどうやって人様のキャラを動かせばいいんでしょうかね?

 暗い病院内に、病院には似合わない鎖の擦れる音がする。


 龍兵はウァラウァラの振り回す鎖を紙一重で、あぶなっかしく避ける。


 「う ぉ!あぶねぇ!!ブンブン振り回しやがってぇ!!」


 屈んだ龍兵の頭の上をウァラウァラの鎖がよぎる。

 鎖はそのまま頭の上を通り過ぎ壁に叩きつけられた。


 「はっははぁ!!どうしたよ?さっきから避けてばっかじゃねぇか!?」


 「うるせぇよハゲ!!くっ!?」


 真上から2本目の鎖が襲いかかり、横に跳んだ龍兵はこれも紙一重でかわす。


 「…鎖の攻撃がこれほど厄介…だとは。武器の軌道が全くわかんねぇ。」


 前回戦ったことのある”力”。奴の鎖には触っては、いやかすってもいけないということは既に理解していた。


 奴の触れたもの、触れているものに触れば触った箇所と溶接されたようにくっついてしまう。

 ソレは”力”によるものなので決してはがれるものではない。

 防御はない。あるのは完全な回避だけ。触れば逃げることが出来ない。まことに厄介な”力”である。


 「うっぜぇぇ!!畜生!!近づけやしねぇ!!」


 二本の鎖を自由に操るウァラウァラに死角はなかった。


 「ははははぁ!!無駄だっての!!お前が俺に勝つことは決してない!!」


 片方の鎖を円を描くように振り回しカウボーイのように正確に龍兵めがけて投げる。

 龍兵はソレをしゃがんでかわす。

 しかし顔を上げた目の前にウァラウァラの姿は既になかった。


 「な…どこ行きやがったぁ!!」


 「ここだよ。」


 消えたと思っていたウァラウァラは壁を蹴って大きく跳躍し空中で身体を捻って”力”で天井に張り付き、龍兵の背後に回りこんだのだ。

 すぐ背後にウァラウァラの気配を感じ慌てて振り向いた瞬間、鎖をぐるぐる巻きにした拳が左頬に痛烈に入る。


 「ブホぁっ!!」


 そのまま勢いで床にたたきつけられ、さらにウァラウァラの蹴りが龍兵の腹に重く入れられる。


 「…〜〜っぐほぁ!」


 腹を抱えてよろよろと立ち上がる。

 口をもごもごとさせ、「べっ!」っと口から吐いたものは歯だった。奥歯が二本イカレたのだ。


 「う〜!!クソ!!っあ〜〜いってぇぇ!!」


 龍兵はふらつきながらも立ち上がり懐からナイフを取り出してウァラウァラを見据える。


 しかしウァラウァラは構えもせず龍兵が立ち上がるのを待っていた。

 ふっと鼻で笑い腕組みをしながら口を開いた。


 「……お前よぉぉ、組織に忠誠を誓っているか?」


 「…?言っている意味がよく分かんねぇ。いきなり何言い出すんだ?」


 荒立った息を落ち着かせながら龍兵は質問を返す。


 「お前が好き好んでっ!!日輪に忠誠誓って人殺すのが好きなのかって聞いてんだよっ!!めんどくせぇなぁ、聞き返すんじゃねぇっ!!」


 ウァラウァラは半分キレたようにもう一度聞く。

 暗い病院内に声が響くが誰一人として病室から出てくる様子はない。


 「ははっ…忠誠…?お世辞にもあまり熱心なほうとは言えませんなぁ!人殺しは人としての重罪だからな。だがな、俺は忠誠で日輪にはいない。思想に、去蝶の『信念』に惹かれたとでも言っておく。お前もハルフォード・エヴァネッセンスの思想に惹かれたクチか?」


 「思想?…ははっ……はははははっ!!誰があんな野朗についていくかっ!!俺はな、忠誠でいるわけじゃねぇ、束縛で繋がれているんだ!!」


 ウァラウァラは壁を叩き怒りを表した。

 病院の壁はバゴンと音を立て拳面積分の穴があいている。

 ウァラウァラの拳からは皮が裂け血が滴っていたが、そんなことを気にも留めずウァラウァラは続きを喋り出す。


 「『タイラント』に使役され、この”力”の発現の代償で眠ることも出来ず、夢の中へ行くことも出来ずこの腐った現し世に縛られ続ける俺には自由が無ぇ!!”力”までもが『束縛』させる”力”だ!そんな俺につけられた二つ名が『塀の(ウァラウァラ)』だった。笑えるだろ?俺は運命にも縛られているんだ…。自由じゃねぇんだ。」


 顔を覆いくくくっと皮肉った笑いで話を終えた。

 龍兵は鼻でふっと息を吐き、帽子を被り直して今度は龍兵のほうから質問をする。


 「なら何故にタイラントに居る?お前にとっちゃタイラントは、ハルフォード・エヴァネッセンスは邪魔なんだろぉがよぉ。」


 「俺はな、逃げて逃げての生活はゴメンなんだ。けどよぉぉ、俺は絶対ぇぇぇにあいつを殺して自由になってやる!!その為なら頭を垂れてやる!靴も舐めてやる!ケツにキスをしてやってもいい!付き従って生き残って、耐えて忍んでいつかしたらあの野朗の喉もとを掻っ切ってやる!!」


 「ならなんで行動しねぇ!?それ以外にも有るんだろ?お前がタイラントに居続ける理由がよぉぉ!?」


 「…ふん。時期じゃねぇンだ。そして俺は自由じゃねぇ。でもな、俺はせめて犯りたいように犯る。『塀の中』という名を背負った俺にとってのせめてもの自由だ。誰にも邪魔させねぇぇぇ!」


 龍兵の問いかけに不服そうにウァラウァラは答えた。

 龍兵もこの答えに呆れたように叫ぶ。


 「なんだ結局お前、タイラントに属しているのを理由にやりたいことやってるだけじゃねぇかっ!!タイラントをバックに女犯してるだけじゃねぇのかっ!?お前のご都合主義じゃねぇか!!あぁ!?」


 「ははっ!そうだ。そうだよ?だから?それがどうしたっ!!?自由の無い俺には、腐った現実で生かされている俺には他人を苦しめるしか俺の苦しみは癒えねぇ!!いや、癒えることはない!!ただ俺は俺の苦しみを和らげればそれでいいっ!!!さぁおしゃべりは終わりだ!!飽きたからな!!お前も俺の苦しみを和らげる存在になってくれよっ!!!」


 喋り終えるとウァラウァラは鎖を一本の棒のように固まらせる。鎖の輪を一つ一つ繋げたのだろう。

 そのまま一気に振り下ろした。鎖の長さは十分龍兵を射程距離内に入れていた。


 「鎖を…棒状に!そんなことも出来るのかよ!!」


 龍兵は横に飛んで壁に足をつき透明になった。

 ウァラウァラは”力”を解除し元の鎖の状態に戻すとソレを引き寄せる。


 「ちぃっ!!消えやがったか!!上等だ!!」


 透明になった龍兵はすかさずウァラウァラの背後に回りこんだ。

 足音を立てず、限りなく気配を消してナイフを背中に突き立てるつもりなのだ。


 だが完全に見えないはずの龍兵にウァラウァラは振り向き鎖を振り回した。


 「なっ…!?」


 完全に攻撃のことしか考えていなかった龍兵には鎖をかわす余裕などなかった。

 顔面、右頬にジャラジャラと音を立てた鎖が叩き付けられた。


 「ブァッ!!」


 「……グゥッ!!」


 ウァラウァラも声を漏らす。

 龍兵のカウンターのナイフが左下腹部に刺さっていたのだ。


 「鎖がよけきれなくてもよぉぉぉ!!ナイフはお前に刺してやったぞ!!」


 透明状態だった龍兵は姿を現す。

 それと同時に龍兵は自分の服に付いていた細いワイヤーの存在に気が付いた。


 「な〜る。これで透明になっていた俺の場所がわかったンか。ま、もっとも大まかな位置しか分かんなかったようだけど。俺の背後に回りこんだときに付けたんだな。」


 ワイヤーを取り出したナイフで切断する。

 ウァラウァラは腹を押さえてゆっくりと立ち上がる。


 「でももう…お前が姿を消しても無駄だ。鎖は…お前の頬にくっついたぜぇ!!」


 龍兵の頬には鎖が溶接されたように引っ付いていた。

 額からタラリと汗が流れ出る。


 「もう逃げることは出来ねぇ。お前を捕まえた!!」


 ウァラウァラは口から血を流しながらも思いっきり鎖を引く。


 頬の皮膚が持っていかれそうな感覚がする。

 龍兵は抵抗することも出来ずにウァラウァラに引き寄せられ、ウァラウァラは回し蹴りを放つ。龍兵はそれを腕でガードするがそのまま吹き飛ばされずまたもやウァラウァラは龍兵を自分の下へと引き寄せた。


 「はははっ!!ぎゃははははっははっ!!」


 高笑いをし拳を放つが、龍兵はそれをよけウァラウァラの顔面に合わせざまのけりを放つ。


 「うらぁ!!どーだ!!」


 蹴りは正確にウァラウァラの鼻に叩き込まれた。

 ウァラウァラは怯むこともなく龍兵の足を掴み、鎖を巻いて龍兵の身体を振り回す。


 「何つー怪力だよっ!!?」


 「いいぞ。反応は上々だ。スピードも申し分ない。あとは力だったな。」


 ウァラウァラはそのまま龍兵を壁に叩きつける。


 「ぐふっ!!」


 壁に叩きつけられた龍兵はなんとか頭だけを保護するが身体全体にかかった衝撃は凄まじく、そのまま床に倒れこんだ。

 ウァラウァラは龍兵の頬に付いている鎖の端を病院の床にくっつける。


 「もうお前はその場から動けねぇ。番犬にぴったりだなぁ?え?おい!ぎゃっははは!!もういいよ、お前は頑張った。これから馬頭殺すからよ、『龍兵は頑張ったよ』って伝えといてやるよ。」


 「ぐっ!!待ちやがれっ!!くっそがぁぁぁぁっっ!!」


 ウァラウァラは馬頭の病室に足を進める。


 「ん〜、ここか。いい女殺すのは忍びないな。ハルフォードのクズが俺にこんな仕事押し付けやがって。」


 ドジュッ!!


 「おっ?」


 ドアに手をかけた瞬間ウァラウァラの手の甲にナイフが突き刺さった。

 手に刺さったナイフを抜いてゆっくりとナイフが飛んできた方向、龍兵のほうに目をやると龍兵が立っていた。

 鎖は床に無造作に落ちていて、代わりに龍兵の頬の皮膚は剥ぎ取られるように鎖に引っ付いている。

 龍兵の右頬には皮膚がなく、肉が見え、血が滴っている。


 「こら…テメッ…まだ俺との勝負終わってねぇだろぉがよっ…!!」


 「え?何お前自分で皮膚剥ぎ取ったの?よくやるねぇぇ。」


 ウァラウァラはナイフに鎖を巻いて”力”で固定し、ぶんぶんと振り回す。


 「そらっ!!」


 ナイフが一直線に龍兵めがけて飛んできた。

 ソレを避け透明になり、ウァラウァラの懐に入り込んで鳩尾(みぞおち)におもいっきりストレートを入れる。


 「ぶふっ!」


 なす術もなく、吹き飛ばされたウァラウァラは受身を取りすばやく立ち上がる。龍兵は”力”を解除し無言でウァラウァラの様子を見ている。

 ウァラウァラは上着から何本もの鎖と鎖鎌を取り出すと無言で軽く振りながら龍兵に近づいていく。


 「…本気っつぅー…ことか?」


 「まだ。でも使う武器は本気…だっ!!」


 狭い病院の廊下にもかかわらず自由自在に、己の手足のように鎖鎌を操る。

斜め上から襲い掛かってきた鎌を後ろに引いて避けるも龍兵を追うように二本の鎖が迫ってくる。

 鎖は棒状に固定されていて避けるのは容易かったが避けたところにもう一本の鎖が壁に叩きつけられ固定され、反動で龍兵のほうへと向きを変えた。


 「うほぅ!!!あぶねっ!!」


 かがんでソレを避けるがウァラウァラは既に龍兵のすぐ近くまで近づいていた。


 「あぶねぇ?何が?」


 龍兵は避けることは考えていなかった。

 昔からケンカばかりしていた龍兵にとってビビッて下手に引けばダメージはデカイと分かっていた。ならばと、あえて相手の懐に入り込み不意を付いて攻撃をする。


 蹴りを繰り出そうとしたウァラウァラは龍兵の攻撃をモロに喰らった。

 顎に頭突きが入ったのだ。


 「いってぇ!!チッ!!ッッソがぁあぁ!!」


 ウァラウァラは何本もの鎖を腕につけた。まるで何本もの触手が生えたようだ。鎖は互いにぶつかり合いチャラチャラと音を立てている。


 「やっぱお前は完全に殺しとかなきゃいけねぇンだな。つなぐだけじゃあなくってよぉぉ!!」


 そういってウァラウァラは何本もの鎖の付いた腕を振り回す。


 ―厄介だな。


 龍兵は避けながらそう感じた。


 (アレだけの鎖だ。至近距離での攻撃範囲は広い。しかも不規則(イレギュラー)な攻撃の軌道。近づくのは無理…か。)


 龍兵は大きく後ろに跳躍しナイフを投げる。

 だがウァラウァラは腕に垂れ下がっている鎖すべてを棒状にし、難なくナイフを弾いた。

 そしてそのまま射程距離の広がった『鎖の腕』で龍兵を殴った。


 「ぎゃっははははっ!!どうしたよ?なぁ?早くかかって来い!」


 「うるせぇなぁ…。つかあれだ、お前バカ力なんだよっ!クソが。大量に鎖使いやがってこのドS野朗が!!」


 ウァラウァラは『鎖の腕』で龍兵をもう一度殴る。

 しかし龍兵も二度も同じ技でやられるような間抜けではない。

 龍兵が腕を見極め後ろに下がったとき、ウァラウァラは”力”を解除した。


 「いっ!?」


 バラバラの、ただの鎖となった鎖は龍兵の身体に絡まるように巻きつき、身体の自由を奪い龍兵を束縛した。


 「さて…終わりだ。お前はもう動くことは出来ねぇ。」


 「はっ…確かに。俺はもう動けんな…。でもよ、まだ俺は負けじゃねぇよ。もちろんお前の勝ちでもねぇ。」


 「ぎゃっははは!ナニ言って…」


 ウァラウァラは言葉を途中で区切り身体を捻りながら後ろを振り向いた。

 振り向いた瞬間、ウァラウァラの左腿には鎖鎌が深々と突き刺さった。



 そこにいたのは馬頭だった。



 「あんたさぁぁぁ、夜中の病院でバカ騒ぎしてたら誰だって目ぇ覚ますって。もちっと静かにできない?」


 馬頭は身動きの取れない龍兵に笑いながら怒る。


 「しょうがないっスよ。つかさ、俺馬頭さん助けにきてンだから!!ちったぁ多めに見るもんでしょう?」


 「ま、そりゃそうだ。でもあんた今私に助けられてンじゃん?ならヒフティーヒフティーっしょ?」


 そういって今度はウァラウァラのほうに向きなおった。


 「さてさてさて。どうする?今2対1で私達とやる?見たとこあんたも満身創痍みたいだけどさ。」


 ウァラウァラは腿に刺さった鎌を引き抜くとゆっくりと立ち上がった。

 顔は笑い、もう殺意は失せている表情をしている。


 「はっはは!分が悪い…?お互い様だろ。でもまぁ今回は引いてやる。もうじき牛頭たちも来るだろうしなぁぁ。それと龍兵!お前、陽介に『事件』のことを教えたか?」


 「『事件』?」


 龍兵は何を言っているのか分からないような顔をする。

 しかしウァラウァラは龍兵の態度を見て話をやめてしまった。


 「…そうか、まだ公表されてねぇのか。まぁいい。陽介に伝えとけ、『日本に帰ったらサプライズがある』ってなぁぁ!!じゃあな!!」


 ウァラウァラはそれだけ言い残し窓から飛び降りて消えた。

 病院内には鎖が数本、無造作に捨てられている。


 「…なんとか、ってとこね。あんたがあいつを追い払ったのは。」


 鎖が解けた龍兵に馬頭はナイフを渡しながら言う。


 「あぁ、うん。だけどあいつが言っていた『事件』ってなんだ?スッゲェェェ気になるな。」


 「べっつに日本に帰れば分かることじゃん。ンン〜〜ッ…ッアァ。私寝るから。じゃ、あと適当にヨロシク。」


 馬頭は大きく伸びをして病室に戻っていった。








 ―翌日。



 「へぇ。牛頭さんたち病院で戦ってたんだ?」


 俺はホテルで退院した馬頭も含めて全員で昼食をとっていた。


 「まぁ、辛い戦いだった。つか多分俺恩羅が居なけりゃ全員死んでンな。」


 牛頭はココアに角砂糖を飽和寸前まで入れながら言う。

 この人は近い将来死ぬんじゃなかろうか?


 「でもウァラウァラの野朗、前戦ったときの傷はもうなかったっすよ?あいつ等も治療できる奴とか居るんすかね?」


 龍兵はピザをかじりながら馬頭に質問をする。


 「さぁ?そうなんじゃないの?でもさ、あのウァラウァラって野朗かなり強いよね?」


 馬頭は紅茶を飲んで龍兵の質問に曖昧に答える。

 その時、ホテルの部屋の電話が鳴り響いた。

 電話の近くに居た阿防は受話器をとる。


 「はい…えぇ。…はぁ。わかりました。ありがとう。陽介、フロントから。なんかあんた宛の荷物が届いてるって。今こっちに持ってきてもらってるけど。」


 阿防は受話器を置きながら俺に話しかける。


 「は?俺宛?誰から?」


 俺がそう言うや否やドアをノックする音が聞こえた。

 俺はドアを開け、荷物を受け取りボーイにチップを渡すと小さな包みを机の上に置いた。


 「爆弾とかじゃ…ねぇよな?」


 俺は半分冗談交じりで言う。


 「大丈夫だ。別に火薬の臭いとかはしねぇ。」


 のとは包みのにおいを嗅ぎながら俺に言う。

 皆が見守る中俺は包装紙を破り箱のふたを開ける。

 中には銃が入っていた。


 「…銃?差出人は…ケイティ・R・ウィンチェスター?」


 牛頭は中に入っていたカードに書かれている名前を読み上げそれを俺に渡した。


 『―親愛なる日輪の皆さんへ―

今回は私の依頼を遂行していただきまことに感謝しております。地位の出来た私にはどうしてもゴブ・ディーヴォとの接触が困難だったのでこのような形で皆さんに私の私事を引き受けてもらう形となりました。重症を負わせてしまうような危険な仕事を任せて申し訳ありませんでした。手短ですが最後に改めて御礼を言わせてもらいます。ありがとうございました。

追伸―この銃は我が社の試作品です。威力はあなたの銃に及びませんが即射精と貫通力、反動の少なさ及びサイレンサーは我が社一です。陽介さんに使ってもらおうと思いお届けしましたが名もまだありません。あなたが命名してくださいませ。ケイティ・R・ウィンチェスター。』


 「だとよ。俺宛の銃か…。」


 そういって俺は銃を手に取る。それは以外に軽く、シンプルなデザインに見合った軽さだった。


 「で、どんな名前をつけるのかしら?」


 恩羅は期待をこめて俺に質問する。

 俺はしばらく思案した後おもむろに口を開いて単語を口にする。



 「『サイレントマジョリティー』…物言わぬ大衆…。」


 「ナニソレ?」


 「いや、ただなんとなく…っすよ。」


 俺は銃を机の上において席を立った。

 皆席を立ち、日本に帰る準備をし始める。




 ホテルでチェックアウトを済ませ、俺達は空港で自家用小型旅客機で日本に帰ることになっている。


 「また…来てみたいっすね。」


 俺は牛頭そういうと牛頭もふふっと笑って頷いた。


 「そうだな。今度は普通に仕事抜きでな。」


 そういって俺は旅客機に乗り込んだ。

 最初は日本に帰りたいと思ってもやはりアメリカから離れるのは名残惜しいというか少しさびしい気もした。


 だがやっと日本に帰れる―



 俺はそう思うと安堵していた。




 これから帰る日本に悲劇が待ち構え、俺の人生を大きく変える人物と出会うことになろうとは俺にはまだ知る由もなかった……。












今回でアメリカ編は終わりです!!つぎからは物語が大きく動きますよ!!期待していてください!!

ここまで読んでいただきありがとうございました!!

それでは!!

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