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第12曲:IMAGINARY

物語はどんどん複雑に…なってくと思いますよ?

とりあえずアメリカ編のあとはさらに物語りは動きます。お楽しみに!!



「にじゅーごー!!」


馬頭が振り切った刀で敵の頭が宙に舞う。


ゴブ邸の中はほとんど戦場と化していた。

廊下ではゴブ・ディーヴォの配下のマフィア達が、仲間が次々とやられて逝く中、恐慌状態でマシンガンを乱射していた。


「当たれ!当たれ!!クソ!!ファック!!当たって、死にやがれ!!」


しかしいくら撃てど弾は馬頭とガービッジの周りを忙しく動き回る髑髏によって弾かれ、仲間は馬頭によって鮮血を吹き上げながら次々と斬り捨てられていく。


「ア ああぁ アァ アあァアァ!!」


仲間が殺られていく中、死の恐怖と怒りと焦りがマフィア達を駆り立てる。

手に持った重火器を一心不乱に乱射するも、あの髑髏の前ではすべてが無駄になってしまう。



「26!!疲れた!!めんどい!!あんたも手伝えよ!!」


敵の心臓に刀を突き刺し、ソレをすばやく抜いて息を荒立てながら馬頭はガービッジに言う。

ガービッジは馬頭から離れず銃弾が馬頭に当たらないよう髑髏でサポートしていた。


「まぁ出来ないって分けじゃあないんですがね。護り専門の私は戦いというのはあまり得意ではないんですよ。」


そう言いながら自分に飛んできた銃弾を髑髏がはじき落とす。


「じゃあ出来るんなら手伝ってくれ。実際かなりやばいよ私。結構疲れてんだよねェェェ〜!!」


馬頭はそう言いながら刀を左手に持ち変え、払うように振って相手の右腕を切り落とし、そのまま両手に持ち替えて一刀両断する。


ガービッジは一番近くに居た敵の頚椎に鋭い左ハイキックを入れる。ゴキンと相手の首の骨が折れる音がして血をたらしながらその場に倒れこんだ。


「ッヒュゥ〜!ジークンドゥね。やれば出来るじゃん。」


馬頭は笑いながら近くに居た奴の胴を真っ二つにする。


「27!!」


「違う。28です。一個飛ばしましたよ。」


ガービッジはまわし蹴りを的確に相手ののどにヒットさせ、ひるんだ相手の頭を掴んで思いっ切り地面へと叩きつけた。

ゴシャッと顔から叩きつけられた相手は派手に床に血を広げる。


「陽介たち、うまくやってんのかな?」


28人目の敵を殺し、馬頭は一旦身を引いてガービッジと背中合わせに合流する。背後ではガービッジがニコニコと微笑み、首をコキコキと鳴らしながら喋る。


「大丈夫ですよ多分。死ぬことはないでしょう。」


何の根拠もないことを言ってガービッジは拳を降ろす。馬頭も刀を下ろしてその場に立ち尽くし広いこの屋敷の廊下を見回す。


敵はまだ20人近く居るだろうか、しかし全員銃を撃っても絶対に当たらないということは分かっていた。

分かっているだけに目の前の立っている二人の人間を殺せないのが実に腹立だしかった。

ロサンゼルス1のマフィアがたった二人の男女も殺せないなどとは、沽券に関わる。


「畜生が!!クソ!!吹き飛ばしてやる!!」


そういって相手が取り出したのはスティンガー(ロケットランチャー)だった。

馬頭はガービッジに囁く。


「ねぇ、バズーカって防げるの?」


「無理ですね。弾自体は防げますが爆風となるとどうしようもないですね。という訳でどうにかしてください。」


落ち着いた口調でガービッジは返答する。

馬頭ははぁっと小さくため息を吐き、近くにあった死体を片手で掴むとそれを引きずりながら敵に近づいていく。


躊躇なく距離を縮めてくる馬頭に更なる焦りを覚え、敵は慌ててスティンガーを発射した。

馬頭は唸るような音を立て刀を縦に振り下ろしソレを一刀両断すると、死体を爆風の盾にする。


馬頭自体には傷はほとんどない。

代わりに焼け焦げて手足や局部がバラバラに吹っ飛んだ死体を相手に投げそのまま神速の速さで瞬く間に敵を斬り捨てていった。




肉体を活性化させ、常人には超えることのない限界という壁を越える。それにより常軌を逸したその身体能力は近代オリンピックのソレに比べると、比にもならない。


いや、比べること自体が間違っている。



「畜生!!畜生!!逃げろ!!早く!クソクソ!!化けモンだぁ!!逃げろぉぉ!!」


20人近く居た敵は我先にと逃げていく。

馬頭は地を蹴り、逃げ遅れた者数人を片っ端から斬っていく。

逃げ切ったものたちのことは無理に追わず、引き返し刀を鞘に納め、笑いながら呟いた。


「化けモンじゃないっつーの。鬼だってぇーの。」


そう一笑するとツカツカとまた堂々と歩いていった。

ガービッジは早歩きで馬頭に追いつくと一言だけ言葉をかけた。


「強いですね。」


ガービッジは馬頭の後ろをついていく、二人は歩く示威篭城戦(排除しなければならない危険分子にもかかわらずソレに近づけば攻撃され、攻撃をしなければソレは攻撃されることはない。しかし放っておくわけにもいけない、タチの悪い篭城戦のこと。)だった。


馬頭は振り向いて微笑みながら返答する。


「まぁね。信念を持ってやるからね。『鬼と成って、唯の一つの暴力となって、私情もなく刀を振るう。』結構大変なんだよ?」


どこか悲しそうにそうに微笑みまた廊下を歩き出す馬頭に、聞こえない声でガービッジは呟いた。


「凄いな。あなたは。その信念を貫けるからこそあなたは強いのだ。」


変わり果てた血の海の中、ガービッジは馬頭の後を追うように歩いた。













「一体どうしたんだ…?俺の眼は…?」


起き上がり、流れ出てくる鼻血よりもどうしてもこの目の異常を気にしてしまう。


先ほど顔面を襲った重い衝撃は蹴りだったのだろう。


ただ『見えなかった』だけならまだいい。それはそれで対処のしようがあるだろう。


しかし問題はなぜ先ほどの攻撃は蹴りだと『今』気付いたか?その気付いた『理由』の方が問題だった。


「うは、は!!スッゲェ鼻血!ぼたぼた出てんな!!」


目の前に居る男は俺が鼻を押さえているのを腹を抱え、苦しそうに笑っている。

俺は左手で鼻を押さえながら銃を構えようとするが無防備な状態だったみぞおちに蹴りが入った。


「う…!げは…!!」



攻撃が見えない。否、攻撃のタイミングがわからない…!!


先ほどから俺が気付いている目の異常。それは見るより先に攻撃が来ることだった。

つまり攻撃を受けてから相手からの動きが分かるという感じだ。


さっきの蹴りもそうだった。

顔面に重い衝撃が加わったと思ったら目の前に足が来ていたのだ。



俺は急いで立ち上がり、とりあえず距離を置くことにした。


このままでは殺される。近くにあった扉を開けそこに転げるように入るとそこはガレージだった。

ゴブ・ディーヴォのものであろう、高級そうなキャデラックが置いてあり、その他色々な工具やらガソリンやらがある。



腹を押さえ立ち上がろうとするが上手く力が入らない。そんな俺を蹴りを放った男は見下ろしている。


「俺の名前はアシャンティっつぅんだけどよォォォ、なぁ〜〜んか気に入らねェェ。だって女みてェな名前だろ?なぁおいそう思うだろ?」


そういって俺の髪の毛を掴むと顔を近づける。


「誰だって最初は決め付けられる。親に名前も自分が産まれることすらも。そして俺は最近考えたんだ。俺は決め付けられていたんじゃない。もっと大きな『運命』みたいなものに決められていたのだと。」


「何…言ってんだ…?テメェは…?」


俺は鼻血が大量に出ているため上手く話せない。しかしそんな俺をお構い無しにアシャンティ話を続ける。


「決められていることを覆すっつぅ〜〜のってよぉぉ、なんかカッコイイよなぁ?イカすだろ?」


そういって俺の髪から手を放すと俺の鼻血を舐め、口に含んで吐き出した。

異常者かこいつは?


だが怖い、相手が何を考えているのか、何をしてくるかわからない分余計に恐怖を感じるのだ。


「リンゴが木から落ちるのを見たニュートンはよぉぉ、万有引力ってのを発見した。そしてすべてのものは地球に引っ張られてるって定説ができた。」


相変わらず何を言っているのか、何が言いたいのか俺には全然わからない。


「つまりよぉ〜、地球がすべてのものを引っ張っている。これは決められていることだ。ニュートンが決めたことじゃあねぇ。だが飛行機を開発したライト兄弟はスゲェ。めちゃくちゃスゲェ。マジでイカすと俺は思う。人間は本来飛べねぇのに、地球がすべてのものを引っ張っているってのを無視して空を飛んじまうんだからなぁ。これはすげぇことなんだよ。分かるだろ?」



「つまりだ、決められたことを覆すっやつってのはカッコイイんだ。決められた『運命』に抗うやつらこそ偉大なんだ!!俺だってそうだ。決められたことを覆している。」


アシャンティはそういってまたもや蹴りを繰り出す。

俺には攻撃が見えない。痛みを感じた後に初めてどのような攻撃かが分かるのだ。

俺は自分の鼻血で真っ赤に染まった自分の服を見て、冷静に考えた。




目で見るよりも早く攻撃が…来る。


見るより早く…光より早く。


アシャンティは決められたことを覆すと言っていた…!?



ここまで考えて俺の脳裏にある一つの答えが浮かんだ。




まさか―……!?



それに気付いたアシャンティは話を続ける。


「『光』てのはよぉ、この世界で、宇宙で一番速いモンなンだよ。一秒で30万kmだって言われてるンだ。それを超えることは出来ねぇぇ。だから人間はどんなことがおきても先ずは反射した光が『映像』として目に映るから、出来事に対処できる。」


やっとアシャンティの”力”を理解した俺はアシャンティに吐き捨てるように毒づく。


「くそが!!それが…てめぇの”力”かよ。」


俺はよろよろと立ち上がり、鼻の中に溜まっている鼻血を片方の鼻の穴を押さえて勢いよく噴出する。

口の中の血の塊も吐き捨てた。


「そう。俺の”力”は『光を操作する』っていう”力”だ。今お前の眼に入ってくる光はすべてスピードを遅らせてある。1m1秒って所か。だからお前は攻撃を受けた後に映像が見えるンだよ。」


俺は鼻血をふき取る。

まだ痛みはあるが大体血は止まった。

そして目の前に居るアシャンティに『愚者』を向ける。


「長々と説明ゴクローサン。でもよぉ〜、お前が光以上の速さになったわけじゃあないンだろ?ならコレは避けられるンかよ!!」


俺は『愚者』をアシャンティに3発発砲する。

狙いは完璧だった、この至近距離ならば外すことは絶対になかった。



しかしアシャンティには弾丸が当たった様子もなく、苦しむこともしていない。


「な……!!」


戸惑う俺の背後でアシャンティの声がする。

だが俺の目の前にはまだアシャンティが映っている。


「俺の”力”をまだ理解してねぇようだなァァ〜?今お前が見ているもの!それは『過去の映像』だ!!数秒前の俺の『残像』だ!!」


俺は急いで声のした背後を振り向く。

しかし今俺の眼に映っているものはさっきの映像と同じ。振り向いても俺が見ている映像は変わらなかった。

光が俺の動きに追いついていないのだ。



アシャンティは銃を取り出し俺の太ももに発砲した。

音だけが聞こえて俺の太ももに激痛が走る。


「うぐぁっ!?ぃいっでー!!畜生!!」


俺は撃たれた太ももを抑えながら床に倒れこんだ。

幸い大口径の銃ではなかったので弾が食い込む程度で済んだようだ。


もし俺が持っているような大きな銃だったならば太もも周辺は吹っ飛んでいただろう。それでも痛いことには変わりはない。

傷口はドクドクと激しく脈打ち生暖かい血が溢れ出す。


「例えばだ、地球から100光年離れた星が昨日突然見えなくなったとしよう。人々はこう思う。『あ、あの星昨日消えちゃったんだ。』と。しかし実際消えたのは100年も前のことだ。今まで見ていた星は100年前の残像なのだ。そして今お前が見ているものはまさにソレと同じなンだよ!!」



その説明から行けば今の俺は目が見えないも同然。

完全に打つ手がない。




しかし何の問題もない。完全な盲目ではないのだから。



「おい、さっきからベラベラ喋ってっけどよォォォ!!お前俺の”力”のこと知ってんのかよ?」


俺は『愚者』を構え、アシャンティのほうに銃口を向ける。

今度の銃口は完璧にアシャンティを定めていた。



当然アシャンティにとっては予想だにしないことで、うろたえている様子だった。


「な…!?見えてるわけが…」


「見えてンだよ、実際な。じゃねェと銃口がお前のところに向くはずねぇだろ?」




ドン――





「がっはぁ…!あぐぅあ!」


アシャンティが左腕を押さえてうずくまる。

肘から上は、つまりは肩まで真っ赤に染まり、肘から先は何もなく、骨がむき出し僅かな肉片が吹き飛ばされずに肘にぶら下がっていた。


「ヤァリィィ!!HIT!!イエァ!!ん〜でもまぁ80ってとこか。心臓等辺狙ったンだけどよぉ、初めてにしちゃあ上出来だな。この先こんな場面があるとも思えねぇけどさ。」


俺は止めを刺そうと引き金に力を入れる。

しかし『愚者』はカキンと軽い音を立てただけだった。


俺は落ち着いてカートリッジ取り外し中を見る。マガジンの中は空だった。


「…俺の左腕がなくなってるぜ?しかも痛ェェェェ。めちゃくちゃいてェェェー!!てめぇクソガキが、何をしやがった!!?」


アシャンティは苦痛に顔を歪ませ、冷や汗をかきながら、しかし取り乱すことなく痛みを少しでも和らげようと大きく深く息を吐く。


「何したって?銃撃ったンだよ。まぁ俺は”力”を使ったから。今俺は1000分の1秒先を『見ている』。わかるか?『今』の1000分の一秒先だ。限りなく今に近い未来で、限りなく未来に近い今だ。お前が見せている過去の残像を見る『今』じゃあない。」


俺は目を閉じながら銃に弾を込める。カートリッジのスペアはあるのだが今止めを刺すだけのアシャンティに使いたくはない。

弾を込め終え、カートリッジを装填し、スライドを引く。


「じゃあな、人生振り返ってみてあんたは偉大だったか?」


弾を込め終え、カートリッジを装填し、スライドを引く。

もはやアシャンティには力を使う余裕はないだろう。

俺はゆっくりと閉じていたまぶたを開け、アシャンティを見据える。



しかし、相手も常日頃戦いの中に身を置くもので、アシャンティもただでは殺られないようだ。


いざトドメを刺そうとした瞬間、アシャンティは右手に付着していた血を俺の目にかける。


「うぉわ!?クソ!」


「ヒハハハ!!殺られてたまるかよ!!めんどくせェェェけどよ、お前を確実に殺すにはこれをやるしかねぇーーーー!!」


アシャンティの勝ち誇ったような笑い声がする。


(畜生……目が見えねぇ。くそが、汚ねぇ血ぃ付けやがって!!)


なんとか目に付いた血をふき取り、もう一度うっすらと目を開く。


「畜生…………笑えねぇっての……!!マジで目が見えねぇ……!!」


俺が見ているもの、いや。


何も見えない。


ただ俺の目に映っているは完全な闇。なにも見えない。


「言ったろう?俺は『光を操れる』と。今、ここのガレージの中のよ、光はほとんど反射してはいない。いや、正しくは今お前に見える光は見えねェよ。もちろん俺も見えねぇが――問題ねぇ。」




俺は装填し終えた『愚者』を声の聞こえたほうへ発砲する。


「弾丸の無駄だ。お前の”力”未来を見るっつぅー能力よ、『お先真っ暗』じゃあ何の意味もねぇだろォォォがよォォォッ!!」


叫ぶアシャンティは暗闇から発砲する。

弾丸は俺の左腕を撃ち抜いた。


俺は肩を押さえ声がしたほうに二発発砲する。


「やめろやめろ。車に当たっちまうだろうが。俺がボスに怒られる。」


「じょ〜〜〜と〜〜だよ!!当たっちまえよ!!クソ野朗!!」


「いや、当たらねぇ。お前全然違うところみてるもンなァァァ〜?まぁ俺はこれがあるからよ。」



アシャンティには―もちろん陽介には見えていないが―スターライトスコープが付けられていた。





――真っ暗といっても、光がまったく存在しないわけではない。ヒトの目に光として知覚されるだけの量にはなっていないというだけのことなのだ。

スターライトスコープは、このわずかな光を電気信号に変換し、その電気信号を増幅する機能があり、こうして得た電気信号を映像に変えることがこの装置の原理である。

5万倍という高倍率の光の増幅度を持ち、星の明かりさえあれば 400m先の人の存在を、月の明かりがあれば約1000m先の人の存在を感知することができる――




「おめぇの”力”がどんなものでもよぉぉ、どんな奴だろうが暗闇じゃあな〜〜んにも出来ねぇ。そして銃弾は俺に当たることなんて決してないからなァァァ〜。」


俺は残った弾丸を残らず撃つ。しかしアシャンティに当たったようではないようだ。

ベコッ!!と薄い金属板を打ち抜いたような音がしたのでどうやら弾丸は車を撃ちぬいたようだ。


「無駄だ!お前に勝ちはねぇ!!俺の左腕フッ飛ばしやがってよぉ!!覚悟できてるんだろうなァァァ!!テメェェェェェ!!」


何も見えない俺は突然乗しかかってきたアシャンティに押し倒される。

そして発砲音とともに俺の左手に新しい激痛が走る。


「あぁぁがぁああ!!いってーーー!!て、めぇクソ!!」


俺は『愚者』をアシャンティに向けて発砲するが、先ほど撃ち尽した為、引き金を引いても虚しくスライドするだけだった。


「…畜生…弾切れか。」


俺は力なく腕を下ろす。アシャンティは俺の上で高笑いをしていた。

アシャンティの左腕からは大量に血が出ていてそれがシャワーのように俺の顔に降りかかる。


「ヒハハハ ハハッ!!テメェが負けることは当たり前なンだよ!!なぜなら俺は偉大だからなァァ〜!!凡人のお前が俺に敵うかっつーの!!俺はのし上がるぜぇ!!俺は偉大だからなぁ!!ハハヒハハハ!!」


「だがまぁ一応は…うまくいったってところか。これでいいはずだ。うん。」


「はぁ〜〜!?何言って…」


「気付いたか?臭ェェェよな?臭ェだろ。臭うよな?『ガソリン』の臭いがよォォォ!!」


俺はそういうと急いで顔を両手で覆い隠した。

すぐに爆音がしてアシャンティの叫び声がする。


「ああがぁぁ!!目、目が!!うがぁぁああクソ!!この野朗!!俺の、目が!!」


俺はすぐにアシャンティの”力”が解け、目が見えるようになった。アシャンティはしばらく目が見えないだろう。


「ガソリンのタンクを撃ち抜いたんだ。最後の弾丸はお前を狙ったモンじゃあねぇ。スターライトスコープってよぉ、微弱な光を増幅して見るんだろ?さっきガソリンがあったのを思い出してよ。ソレを狙ったんだ。一瞬だが今ガレージに広がった光の量はハンパじゃねぇ。しかもお前はソレを増幅してみたからなぁぁ〜!!まぁ目が見えなくなるのは当然だな。網膜が焼かれちまったんじゃあねぇか?」


「うぅあ…てめぇ俺の…目が…アァァ!!」


俺は弾を装填し、スライドを引き、アシャンティに額に銃口を近づける。今度こそ、ちゃんと見える。


「なにかよぉ、言いたいことがったら聞いとくよ。言ってみ。」


俺は完全に戦意を失ったアシャンティに聞く。

アシャンティは静かに口を開く。


「―俺は…運命に抗うこと、それこそが『生きること』だと、単なる生存ではなく、それ以上の意味が在るのだと…最近思うようになった。お前はどうだ?抗っているか…?運命に逆らっているのか?未来は変えることなど出来ないというが…お前の”力”は未来を見ている…。その未来が見えるということは決められているということだ…。お前にはわかるだろう…そしてできるかもしれない。抗うことが……。」



ドン――




アシャンティは静かになった。目線から上は吹っ飛び、眼球は垂れ下がりあたり一面にアシャンティの血と脳漿と砕かれた頭蓋骨の破片が広がり、頭に中の脳組織が見える。


ガービッジの髑髏を撃ち砕く俺の銃は常人の頭を撃ち抜くには十分過ぎるようだ。





「やっぱお前は偉大じゃねぇよ。俺に負けるって運命を覆すことが出来なかったもンな。でもかっこよかったぜ。」




火が広がる。ガレージいっぱいに。

俺の心に中にはアシャンティの言葉が強く残り、俺はガレージを後にした。



アシャンティ=光を操作する”力”。光を反射しなくすればあたりは暗闇に、光の速度を遅らせれば相手が見ているものはすべて過去の残像を見ることになる。

光はこの世で一番早いものなのでこれを超えることは不可能。

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