助力と代償5
ここまでで、第一話なのかも・・・・
国のはずれに位置するバズハルと言う村は、人も疎らで寂れた村だった・・・・・はず。
だが、・・・・・・・今、自分がいるのは本当に、バズハル村なのだろうか?
アグールに連れられ森を抜けた先に見えてきた石造りの塀に囲まれた村にルークは、記憶している村との違いに唖然とした。
「うほほ!何とか日が暮れる前に着いたのぉ~ほれ!ルーク!後、もうちょっとじゃ!行くぞ~」
石造りの塀に村の入り口らしき、木の門。門番の男が一人。
頭の上に犬耳、しっぽが特徴の獣人族の青年、槍を携え村への侵入に目を光らせていた。
魔物避けの施された村の門に行き着いたルークは、自分の記憶にある風景とはかけ離れた村の様子に顔を歪める。
・・・・・・どれくらい時が経てば、寂れた村がこうも変わる?
「お!アグ爺!遅かったじゃねぇか!!皆、心配し・・・・・・ん?子供?アグ爺・・・・その坊主は?」
人が善いらしい獣人の青年は、ルークに気づき不思議そうにアグールに尋ねた。森に行ったはずのアグールが子供連れで帰ってきたのが不思議だったようだ。
「おう!ガガ!心配かけたのぉ!ちと奥まで行ってたもんでな!うむ、そうじゃな、紹介しとこうかの・・・・・ガガ!こいつはルークじゃ!暫くワシの家で預かる事になったんでヨロシクな!」
森に行って子供を連れて帰って来た説明はスルーである。
「え!ちょっと、アグール?」
――自分はいつの間にアグールに預かられる事になったんでしょう?
「ルーク、コイツはガガじゃ、普段はココで門番をしとる。村の出入りはココで管理しとる。ま、何かと顔を合わせる事になるじゃろうて、覚えておけ~」
「覚えておけ~ってアグールそんな紹介の仕方はねぇだろう・・・・あ~、坊主・・・・ルークだったか?俺は門番のガガだ!ヨロシクな!あと、子供が一人で外に出るのは禁止だ。魔物も出るし、危険だからな!」
子供ではないんだがな、否定しても無駄か・・・・
ちょっと遠い目になってしまった。見た目は子供なのでしょうがない・・・・力も子供並みしかないのだし・・・・・・・
「お~い!ルーク?何、そんな所で突っ立ってんだ?爺さん行っちまったぜ?」
ガガに「早く村に入れ」と追い立てられる。ルークが村に入ると、門が閉じられた。
魔獣が入ると危険なので、夕暮れには門を閉じるのだと教えられた。
ルークの記憶では、バズハルに門は無く、もちろん門番もいなかった。
とっとと行ってしまったアグールを追いかけながら、ルークは、溜息を吐く。
――――精霊の助力の代償は、小さくなった体の他にも何やらありそうな・・・・・?
「おぉ~~~い、ルーク~~~、何しとるぅ~こっちじゃぁ~こっちじゃぁぁぁ!」
アグールの呼ぶ声が夕暮れの村に響く。随分と遠くに手を振るアグールが小さく見えた。
「はぁ~・・・・・・」
ため息を吐きつつ、アグールの小さくなった背中を追いかけた。
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夕日が空を緋に染め、すずやかな風が、手入れの行き届いた畑に麦穂が長閑に揺れている。
木造の家々に仄かな光が灯って夜の帳に備え、どこからか楽しげな団欒の声が聞こえてきた。
決して華美ではないが、人々の生き生きとした息づかいが伺える田園の美しい田舎町といった風景が広がっていた。
アグールの家は、バズハル村の北の外れ、木々に埋もれるように建っていた。
工房も兼ねているらしく、入ったとたんに大きな釜があり、奇妙な道具がそこかしこに転がっていた。
「テキトーに座っとけ~~~、腹減っただろぉ、大したモンはないが・・・・・・・ここら辺に、おぉ!あった、パンと・・・・・・・・・・・」
ガチャガチャと棚やら籠やらをひっくり返し、木の実やら、ハムやらを並べていく。
食べ物をどこに入れているんだ・・・・・・・・
「・・・・・・・・食べるのちょっと・・・・・・嫌かも・・・・・・・・・・」
「何か言ったかぁ~~~~~?」
「いえ・・・・・何でもないです・・・・・」
釜戸に火をつけ、ハムを焼き目がつくまで炙り、香ばしくなったところでパンに挟む。
「ほれ、出来たぞ」
あっという間に肉厚ハムサンドの出来上がりである。
ぽいっと渡され、恐る恐る齧り付く。
・・・・・・・案外・・・・・・・美味い・・・・・・・
「しかし、ルーク、お前は何もんだ?その歳で、魔術だけでなく精霊術まで操るとは、只もんじゃなかろうよ。」
詳しくは聞かない何て言っていた気がするんですが・・・・、「ん?そんな事いったかの」・・・や、こちらも聞きたい事があるので良いですが。もう、だんだんアグールのマイウェイに慣れてきたルークである。
「その前に、アグール。ここはバズハルの村ですよね?」
「そうだが?なんじゃ?」
「いえ、自分の知ってるバズハルの村は、・・・・・・・人がまだらだったと言いますか、寂れて・・・・・・この様に美しい田園が広がる村ではなかったのですが」
困惑気味に問いかけるも、反対に困惑されて、
「ん?いったい何年前の話をしとる?バズハルが寂れていたのはもう20年以上前のことじゃぞ?」
「ッ20年!?」
アグール曰く、24年前に起きたクーデターの際、今の皇帝が一番危機に面したのが、バズの森でそれを守り切った近衛隊の話が英雄談になっていて、当時のバズハルの村民が近衛隊長と皇帝を匿った話も有名なんだとか、事件後、現場を見に旅人やら観光客やら、人が訪れるようになり、定住する者が増え、だんだん栄え今の村になったんだとか。
「バズハルが知られる切っ掛けの話“白き翼の凱旋”は、吟遊詩人も真っ先に歌う有名な話だろうに、知らんとは・・・・・・お前さんのいたバズの森は英雄談に出てくる白銀の騎士が亡くなったになった場所として、今でも有名な場所じゃよ」
「白銀の騎士?」
「おう、追い詰められた皇帝を身を呈して守り切った近衛隊副隊長で、見事な銀髪の優男だったらしいな。近衛隊の白色の鎧と合わせて”白銀の騎士”じゃとさ」
・・・・・・・・・”白銀の騎士”?初耳です。
「まぁ、エルフのお前さんには、人族の歴史なんぞ関係ないかのぉ」
「あ、いいえ。・・・・・・大いに関係してるみたいです。はぁ~・・・・・」
今日、一日で何度ため息を吐いただろう。
子供の様に小さくなっているだけではなく、過去の偉人その一になってしまっているとは。24年・・・・・半世紀とまでは往かずに済んだのは良かったのか・・・・・知り合いはどうやら無事のようだが、果たして今の自分と会って自分とわかってくれるだろうか?いや、約一名は面白がりそうな気もするが、死んだと思われてるようだし、このままバッくれ・・・・・・・いやいや、ばれた時が面倒なことになりそうな・・・しかし、子供が訪ねて行って国の要人に合わせてもらえると思えない。
「のう、ルーク・・・エルフの子供がこんな人里に一人でいること自体がおかしいのは自分でもわかっているじゃろう?ワシは森でお主に助けてもらったんでな。何か力になれることはないのか?こう見えてもワシはちょっとは名を知れた錬金術師じゃ、助けられる事もあるじゃろうて」
アグールはわが道行くように見えて、人情家で面倒見の良い爺さんである。訳ありの子供を放っとく事は信条に反する。それに、ルークには助けてもらった恩もある。嫌がっても関わる気は満々である。
「アグール、子供に見えるかもしれませんが。私は、子供ではないんです。歳は32に・・・・あれ、・・・・・あれから24年って事は、56!!」
寝てる間にいつの間にかお爺さん(見かけは子供)、孫がいても可笑しくない歳に!
今日一日の衝撃で一番ショックなのはなんでだろう?
「何んで自分の歳で驚いとる?しかしのぉ~、長寿種のエルフで56歳はまだ子供の域じゃないのかの?」
「純血はそうかもしれませんが私は混血ですので、成長速度は人族と変わりません。多少童顔ではありましたが年相応だったんです」
「・・・・・見えんぞ!どう見ても12・3くらいの子供にしか見えんぞ」
「でも、大人なんです(記憶のない24年はノーカウントで)!」
善良な(?)一村人であるアグールに当時の自分の役職がばれたとしても、問題が出るとは思えないが、変に有名になってしまっているようなので、そこは暈かし。森で迷い、襲われて負傷して精霊塚でバズの森長や小精霊に命を救われたのだが気が付いたときには子供になっており、時が大分経過していた経緯を話す。
「なるほどのぉ。不思議な事もあるもんじゃ。」
うーむ、と唸る。ルークが見た目ほど子供では無いのは魔術と精霊術を使っていたので納得した。魔術であろうと精霊術であっても、術を使うというのは時間をかけて精神力を鍛え、知識を蓄え漸く使えるモノで、どんなに天才的な才能があっても子供では初歩の術が発動する程度でヘルハウンドを一撃で倒せるほどの威力は出せない。
たが、精霊術が使える者が、精霊に助けられるのは良くある話だが、ソレで若返ってしまった何て話は聞いたことがない。
しかし、起きた出来事に只管、困惑して狼狽えている子供にみえる・・・・ルークが偽りを言っているようには見えなかった。
ま、悪い奴じゃなかろうて、ルークの力になる事に異論はないアグールであった。
「それで、ルーク。これからどうするんじゃ?」
「え・・・・・・・・」
「え、じゃなかろう。知り合いに会いに行くにしても、その姿で大丈夫か?」
大丈夫とは言えないだろう。常識外れな所がある隊長に会えば分って貰える可能性はあるが、会うまでが難である。前の姿なら何とか理由をつけて会うことが可能かもしれない。親戚とか、兄弟とか?子供って選でもいけるか。いや、今の姿で”孫”って言ってみるのはどうだろう?精神上ちょっと受け入れがたいが最悪ありか・・・・。
色々思案しているルークの向いに座ったいたアグールは、何か思いついたように辞典のようなぶ厚い本を持ち出し、ページを捲る。程なく目的のモノが見つかったのか、開いたページをルークに示す。
「あった!これじゃ・・・・・・”時の宝石なんてどうじゃ?」
「たいむらもんど?何です?それは」
「錬金術で創る道具での、本来は一時的に時を止めるアイテムなんじゃが・・・・・・これを改良すれば、もしかすると、ルークお前さんの姿を元に戻せるかもしれん」
「!!本当ですか!それは何処に!」
「わからん!」
――ズルッ
力いっぱい言い切るアグール。期待させておいてそれは無いと涙目のルークに、慌てるなと制止、
「何処かにあるんじゃない。創るんじゃよ。錬金術での」
ワシをなんだと思っとると胸をはる。
今度こそ期待を込めて
「創って下さい!」
「無理じゃ!!」
殺っていいでしょうか?持っていたナイフを水平に構えニッコリと笑う。
ルーク君、黒いオーラが出ているようです
「は、話は最後まで聞かんか!・・・・ワシには無理じゃ、だが創れるかもしれん者がおる」
「何処にいるんですか!」
「そこに!」
ビシッ!
向かいを指さすアグール。
後ろを振り返るルーク・・・・・・・・
当然、誰もいないし
「何処!にいるんです!」(ホントに斬るぞジジイ!!)
殺気の漲る目でルークが詰め寄ると、
「だから!創れる可能性があるのはお前じゃ、ルーク!」
「アグール、いい加減な事を言わないで下さい。私は錬金術士ではありません」
「錬金術は覚えればいいじゃろう。大体、ワシが創れるんなら、直ぐにでも創ってやるわい!これはのぅ、材料も特殊だが、精霊の力を借りんと効力が付かんのじゃ」
「精霊の力?」
「うぬ、精霊術の応用みたいなもんかの・・・・・ワシはそっちの才が無くてな。創ってやりたくても出来ないのじゃ。すまんの」
そもそも、錬金術といいうのは物質を分析し成分を理解し分解し、掛け合わせ新しい効力のあるモノを創りだす術である。薬草を濃縮して効力を上げた薬を創ったり、燃える物質で爆薬を創ったり、そこにあるモノを材料に効力を特化させる学問のようなモノである。通常、魔力などは必要ない。
ある一種、特別な道具を創るとき以外は・・・・・・”時の宝石”は例外の一つである。また、厄介な事に魔力だけではダメ、最初の工程から一人で創る事、最後に精霊術をかける必要があるとアグールは説明する。
「錬金術の初歩は、ワシが教えるとして精霊術はどうにもならんからのぉ」
「明日から、特訓じゃぁ~」と勝手に盛り上がるアグールに、難しいかもしれないが普通にこのまま訪ねて行ったほうが早いのでは?と思うルークであった。
ようやっと代償の話が終了です。
ルークに課題・・・・・無理やり感満載です
どう辻褄合わせようかなぁ・・・・・・
進みたい方向に進まないジレンマです。