助力と代償3
続きです。のんびり続きます
・・・・・・なでなでなで・・・・・
微笑みをたたえた妙齢の女性に頭を撫でれ続ける子供。
微笑ましい光景だが、方や精霊、方や中身三十路・・・・・・・・・現状に若干のやるせなさを感じ遠くを見つめる少年。
いやいやいや・・・・
余りのことに呆然と遠い目をしていた少年は頭を一振りして自分を立て直した。たそがれてても現状は変わらない。
死を逃れた自分には、やるべき事があるはず、出来ることがあるはず。いつまでも此処に居るわけにはいかない。
少年は表情をあらため、思い切るように顔を上げ、森の長に向き直った。
『・・・・・・もう、行くのか?』
森の長は残念そうに少年を見つめた。
「はい、私を待って下さっている方もおりますので、私の有るべき処に戻りたいと思います。森の長、小精殿のお力添えのおかげで命をとどめる事が出来ました。御礼申し上げます。」
『よいよい、・・・・でも、そうじゃのぉ。久しぶりの森の民じゃし、このまま帰すのは惜しいのぉ・・・・・何か”お返し”をしてもらおうか?』
「お返しでございますか?」
『ふふふ、そう構えずとも良い。簡単な事ぞ?その鎧と剣は、今のソナタには重くて邪魔じゃろう?それを暫しワラワが預かろう。再びこの地にソナタが訪れた時に返す・・・と言うのはどうじゃ?』
クスクス笑いながら問いかけるように見つめ返される。
―――つまり、重い荷物を預かってくれる変わりに、会いに来いと・・・
「はい、お気遣いありがとうございます。必ずや、またご挨拶に伺わせていただきます」
『うむ、待っておるぞ』
森の長は満足そうに微笑むと、淡い光の中に溶けるように姿を消した。同時に、少年の足下に転がっていた鎧と剣が空気に融け込むように消えていった。
少年は立ち上がり・・・・・。
「ッぶ!」
・・・・・・・・・・・・・転けた。
身体にあっていない下衣の裾に躓いたのだ。顔を赤くして、脱げそうになっている下衣を上げ腰帯をきつく締める。・・・・小精の笑い声が聞こえた気がしたが無視である。
「うぅぅ、このままじゃ動けん・・・・どうにかしなければ・・・・」
長すぎる上衣の袖と下衣の裾を捲ってみるがどうにも落ちてきてしまう。
「・・・・・切るしかないか」
幸い腰帯につけていたナイフがある。
武器には不向きな雑務用の小さなナイフだが、服を切るくらいは造作もない。
他に何か持っていないか、探ってみるが、敵の追撃を振り切る際に邪魔な荷物は落としてしまったので、腰につけていた小銭入れしか所持していなかった。
「・・・・・・・・・銀貨が5枚、半銀2枚、後は銅貨が少々か・・・・」
旅をするには心許ない金額だが、どこか人里に出れば何とかなるだろう。
此処から一番近い人里は・・・・
あの時、敵と向かえ打ったのが、首都レジィールから東に騎馬で15日ほど行ったバズの森、確か近くに小さな集落があったはずである。
「確か・・・村の名は・・・・バズハルだったな・・・・」
国の外れに位置するせいか、静かな田舎、はっきり言うと寂れた村だった記憶があった。
___ただ、どっちが村の方向か・・・・・不明?まぁ、何とかなるか・・・・・
若干の不安を残しつつ、服の体裁を整える。
少年は、立ち上がって、服が動きを阻害しない事を確かめてみる。ついでに姿換えの魔術で長い耳を隠す。準備完了である。
精霊塚に一礼して、今度こそ森に足を踏み入れる。
「さてと、・・・・・・」
森の中には、危険な魔物も多く生息していたはずだ。
武器の心許ない現状を考えると、なるべくだったら暗くなる前に森を抜けたい。
「鷹の目・・・・・」
淡い光を放ち魔法陣を組む。
頭に鳥が上空を飛んでいるような映像が浮かぶ。旋回し辺りを見回すと遠くに人為的な煙が見えた。
「・・・・・・あっちか・・・・」
人里は見えなかったが、人がいそうな方向に当たりをつけて歩きだした。
切実に、文才が欲しい・・・・・
ようやっと、主人公が動き出した・・・・
遅いよぉ~~~~