序章1
初めての投稿&文章下手糞で恥ずかしいですが、今の精一杯です。誤字脱字いっぱいあると思いますが、大きなココロでお許し下さい・・・・
8/25:大幅に修正しました
大陸の北東を統べるレジィール皇国、首都に大きなレク湖をたたえた自然豊かな美しい国と知られていた。
レク湖を挟んで東に首都と向かい合うようにあるバズの森は、国の外れに位置し、主たる町から遠い事と魔獣が多く生息する為に、人が訪れる事は稀であった。
ましてや、闇の支配する夜は、魔獣の蠢く時、命の惜しい者は決して踏み入れてはならない。多くの人が知る、暗黙の掟であった。
だが、今宵はそんな森の深層に、複数の足音、荒い息づかいが響く。
何かから逃げるように駆け抜ける3人の人影。
先頭を行くのは軽微だが肩と胸を保護する白い鎧を着た壮年の男、フードのついた外装を目深にかぶった少年。最後に続くのは、銀糸の紙を無造作に結い、壮年の男と揃いの鎧を付けた青年の姿が、薄闇の中、僅かに届いた月光に照らしだされた。
はぁはぁはぁ・・・・・
「うわッ!!・・・・」
少年が大きく張り出した木の根に躓き倒れそうにになるのを、とっさに壮年の男が支え、再び走り出す。
しかし、少年の体力は限界が近い事が、二人にはわかっていた。
壮年の男と言葉なく頷き有った青年は足を止め、踵を返す。
「・・・!!ダメだ!一緒に!!逃げ・・・・・」
少年が、青年に縋ろうと手を伸ばすが壮年の男に止められ、そのまま抱えられる様に引っ張られ、走ることを促される。
「・・・・・此処は任せた!・・・・・死ぬなよ・・・・」
苦渋が混じった声音を絞り出し、壮年の男は再び走り出す。
「はい、隊長もお気をつけて・・・・・」
泣きそうな顔で振り返りつつ引っ張られていた少年も、青年が安心させるように見つめ返すと、振り切るように走り出した。
壮年の男と青年、道を違える。同じ思いを抱きながら。
―――守りきる。何としてでも・・・・この国の存亡は、この若き少年にかかっているのだから。
「皇子・・・・ご無事で、・・・・・精霊神レジィーファーどうか、ご加護を・・・・」
青年は、走り去る二人の背を祈りを込めて見つめると、瞳を閉じて大きく息を吐いた。
「・・・・我願う、視えざる壁よ・・・・」
薄暗い森に進入者を拒む不視の壁が出現した。簡易的な結界術だが時間稼ぎには有効だろう。簡易的とはいえ森の精霊を味方に施した精霊術、青年を上回る術士でも破るには時間がかかる。とはいえこの国の、いや世界を探してもレクスを上回る”人間”の術士など存在しない。
風もないのに青年の髪がかすかに光を放ち舞う。
先ほどまで丸かった彼の耳は、長く尖った形に変わっていた。
その姿は、伝説とも神話の様に伝わる、世界のどこかの森の遙か深層に住まうと言われている精霊の子、エルフの特徴によく似ていた。
「・・・・さて、そろそろお出ましか・・・・」
迫る殺気に剣を抜く。
程なく森の静寂を破り闇に紛れるような黒いローブの集団が現れた。
森の闇よりビュッと風切り音が何処とからとも無く響く。その数複数、刀身に濡れた光を放つナイフの雨が青年の身に降り注ぐが、その身に届く前に守るよう沸き起こった風が弾き返す。
「ぐわっ」
「ぎゃぁ!!」
闇の中からうめき声とともに、ドサッと何かが倒れる音が複数聞こえた。
「ッく、化け物め!!」
ギリギリ殺気が籠もった目で、刺客の頭らしき男が怨嗟を含んだ声音で怒鳴る。
その声を合図にしたかの様に刺客達が襲いかかる。
青年は冷徹な眼差しで刺客を切り伏せる、目的は敵の死滅、これより先に、何人いようとも、刺客を二人の元へ行かせる訳にはいかない。
暗器が飛び交い、敵の術士の放った氷牙、火炎弾を薙払い、合間に施した術で風の刃を返礼する。
打ち合う激しい剣戟の音、時折、月光を反射しきらめく刀身が軌跡を画く。
噎せかえるような血の臭いが周囲に立ちこめ、刺客達の怒号と悲鳴があたりを満たしていった。
光の届かない樹海の奥に湧く泉の側に静かに、それはあった。不思議に淡い光を放つ、人々に精霊塚と呼ばれている祠。
森や洞窟に時折見かける精霊をモチーフに掘られた石像が奉られた祠で、誰が造ったのか謎とされているが、そこでは魔物も襲ってくることが無いため旅人や商隊などに野営や休息の場として利用されていた。無論、利用されている精霊塚は街道沿いに有ったりと比較的人目の有る場所のみで、多く精霊塚はひっそりと静寂に守られ世界中に佇んでいる。この精霊塚も人知れずそこにあった。
ガサッ
低木の葉を揺らし、精霊 塚に男一人辿り着いた。全身を赤黒い血で濡れた青年の凄惨な姿だった。息遣い荒く、よろつきながらまた一歩と精霊塚に寄っていく。全身を染めている大半は敵の返り血だったが、脇に深い傷を負って、尚も鮮血が流れていた。
妙なのは傷口だった。傷の周りから皮膚を毒々しい色に染めて枯れた蔦がはう様に更に広がっていく。。
敵の武器を交わしきれずに付いた傷から毒が入り込んだ証であった。このまま全身にまわれば死に至るのは必至であった。
しかし、青年には、毒を消す薬も、傷を癒す魔力もすでに尽きていた。
泉の側で、膝をついた青年はそのまま力尽き倒れ込んだ。
「・・・・場を汚して、すまない・・・・しばしの間、休ませて・・・・ほ・・・し・・・ぃ・・・」
小さく力ない青年の願いは、そのまま誰に聞かれることなく森に消えていった。
再び辺りには静寂がもどる、ただ違うのは横たわる青年を心配するかの様に、暖かな緑の小さな光が辺りを舞う。
最初一つが誘い舞う光はだんだん数を増やし、場を満たして行く。薄暗かった泉の畔を多数の星空のように瞬いていた。眠る青年の周りを癒すように、守るようにひっそりと・・・・・・。
しばらくの間続いた光の舞が収まると、森は再び薄暗い闇に包まれた。精霊塚に小さな泉だけの場、元からあったモノのみソコに存在し、何も無かった様に眠る青年の姿は光とともに消失していた。
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レジィール皇国歴1246年、惨劇が起こった。
王弟ダルガフと組みする愚かにも私欲にはしった貴族により、時の皇帝を刺殺し首都を占拠したクーデターは、皇太子を助け難を逃れた近衛隊と賛同した賢明な一部の貴族の活躍により1ヶ月という短い時を経て失敗に終わる。
その後、皇太子は即位し、動乱の幕は閉じた。
レジィールに再び平穏が訪れたのだ。
苦難を乗り越え若き皇帝となった少年を常に支えたのは近衛隊の隊長であった壮年の男一人。
バズの森での襲撃を退けた功労者、近衛隊副隊長であった青年の姿はその横にはなかった。
時は過ぎ・・・・惨劇は、語られる。
国を守った英雄談として、吟遊詩人に謡われる、近衛隊の白銀の鎧を翼に例えて・・・・・、”白き翼の凱旋”として国中の民に語り継がれていくことになった。
読んでいただきまして、厚く御礼申し上げます
また、誤字脱字ありましたらご連絡いただけますと幸いです