暑い太陽
夏休みはいつも同じようにやってくる。
暑さが厳しく、セミの鳴き声が容赦なく響き、昼前からべたつくような空気が肌にまとわりつく。
「飲み物だけ…買えばいいんだ。」
戸を閉めながら、片手に薄い財布を握る二年生の高校生、田柴倉カイはそうつぶやいた。中身はいつもよりさらに心もとない。
アパートを出ると、細い路地を抜けて近くのスーパーへ向かう。太陽は真上にあり、外に出る者を焼き尽くさんとばかりに照りつけていた。歩き始めて数分、もうTシャツは汗でべたつき始める。
カイは中学生の時から一人暮らしだ。両親は離婚し、それ以来、日々の生活を一人で切り盛りしてきた。小さなアパート、質素な食事、そして変わり映えのしない日々。悪くはないが、特別でもない。
冷えた飲み物を二本手に取り、片方の蓋を開けて喉を潤す。
「…ああ、生きてるって感じ。」
帰り道、近くの小さな公園で足を止める。
ベンチに座る女性がいた。体を少し前かがみにして、右足首を両手でさすっている。顔には痛みがにじみ出ており、隠そうともしない。
「……大丈夫ですか?」
カイは声をかける。女性は振り向き、一瞬驚いた表情を浮かべたあと、かすかに微笑んだ。
「ええ…たぶん。」
その声には「大丈夫」とは言い切れない、不安げな響きがあった。
「さっき転んじゃって…最初はただの捻挫かと思ったけど、歩くたびに痛くて。ちょっと休んでます。」
カイは足首を見た。少し腫れていて、乾ききっていない血の傷もあった。
「…『たぶん』じゃないでしょう。」
女性は小さく笑い、少し照れたように肩をすくめる。「そうですね…」
カイは深く息を吐いた。「ちょっと待ってて。どこにも行かないで。」
「えっ?あ、はい——」
カイはダッシュでアパートに戻り、すぐに包帯と消毒用ティッシュを持って戻る。
膝をつき、慎重に傷を手当てする。
「冷たくてごめんね。」
「いえ…大丈夫です。ありがとうございます。」
手当てが終わり、カイは立ち上がる。「無理に歩かないで」
その瞬間、女性の顔が青ざめた。
「まずい…!」
「え?」
「えっと…鍋、火にかけっぱなしだったかも…!」
カイは凍りついた。「…マジで?」
「うん!急いで出てきちゃって——ああ、早く帰らなきゃ!」
女性は立ち上がろうとするが、足がふらつく。カイは反射的に手を差し伸べる。
「無理しないで。住所は?」
「えっ?」
答える間もなく、カイは彼女を抱き上げた。体は硬直し、顔は真っ赤になっている。
「まっすぐ行って、交差点で右に曲がって!」
カイは汗だくになりながら走った。
到着すると、彼女をキッチンの前に下ろす。
数分後——
「火…消えてる…」
女性は両手で顔を覆った。「ごめんなさい…勘違いでした」
カイは深く息を吐く。「よかった…」
「次からは、慌てずにね」
「はい…ありがとうございます、抱えてくれて」
その時、女性は買い物袋のことを思い出した。
「あっ、材料…!」
「僕が取りに行きます。ここで待ってて」
カイは公園へ戻り、重い買い物袋を持って帰る。戻ると、女性は少し気まずそうに指を組む。
「お礼に…よければ、少し待っててくれる?料理を作るから」
カイは一瞬考える。アパートのインスタント麺と薄い財布が頭をよぎる。
「…迷惑じゃなければ」
キッチンで、女性は長時間立つのがつらそうだった。カイは自然と手伝う。
「これ、小さく切って」
「これ?」
「うん、玉ねぎ」
「え、しょうがかと…」
「形が違うよ」
「ごめんなさい」
ついに、二人は向かい合って座る。
カイがひと口食べると、目を少し見開いた。
「…美味しい」
女性はほっとしたように微笑む。
沈黙がしばらく流れる。カイはどう話せばいいか分からず、勇気を出して尋ねた。
「…学校は、どこに通ってるの?」
口に出した瞬間、舌を飲み込みたい気分になる。焦りで心臓が早鐘を打つ。
女性は少し間を置き、笑った。「もう五年前に高校を卒業しました。今は就職活動中です。」
「あ…」
恥ずかしさがカイを襲う。
「ごめん…まだ学生だと思ってた。若くて、可愛いから」
女性は頬を赤らめ、急いで話題を変える。
「このお肉、柔らかいね!冷めちゃう前に食べないと」
カイは頷く。少しだけ空気が和む。
「私は…直原ミサキ」
「田柴倉カイです」
食後、カイは帰宅の準備をする。
「また会えるといいな。近くのアパートに住んでるから」
次の日、ミサキは買い物袋を持って家を出る。
「カイくん?」
カイはゴミを出していて振り向く。「おはよう」
「このアパートに住んでるの?」
「そうだよ」
ミサキは自分の足を見て微笑む。「もうだいぶ良くなったわ」
カイはほっとする。
「どこに行くの?」
「果物を買いに。スイカとかメロンとか、デザートを作りたいの」
「重そうだね」
「ええ、手伝って」
二人はスーパーへ向かい、カイはアイスクリームを二本買う。
出ると、一本をミサキに手渡す。
「どうぞ」
「ありがとう…!」
しかし、アイスが溶けて顔に落ちてしまう。
カイはすぐにポケットからハンカチを取り、顔を拭く。
ミサキはびっくりして固まる。
「カ、カイくん…」
次に、カイのアイスも落ちてしまい、顔に付く。
ミサキはハンカチを取り返し、今度はカイの顔を拭く。
距離が近く、二人とも顔を赤らめる。
「…恥ずかしいね」カイが小さく呟く。
「うん」ミサキも笑う。
カイはミサキの買い物を全て持ち帰る。
「大きいから…もう一度、一緒に食べない?」
「いいよ」
二人は果物のデザートを作り、また一緒に食べた。
それ以来、二人は頻繁に会うようになる。ミサキは日替わりで材料を買いに行き、カイは手伝うようになった。
知らぬ間に、カイの生活も少しずつ整い、夏の空虚さは温かさに変わっていった。




