表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お姉さんと僕  作者: 埴輪庭
第3章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

100/103

第29話「日常㊸(御堂 聖他)」

 ◆


 ここ最近……といってもまだ数日くらいだけれど、僕は家の周囲をよく散策している。


 引っ越してきたばかりのこの雑司ヶ谷という町は池袋の喧騒から少し離れていて、どことなく古風で静かな雰囲気が漂っている。もっとも、この紫色の空の下ではどんな場所だって多かれ少なかれ不気味なんだけれど。


 目的は二つ。一つは食料集め。そしてもう一つは生存者探しだ。


 牧村さんの話では都内には救世会の人たちが散らばって活動しているらしい。そういう人たちに偶然でも会えたらいいな、という淡い期待がある。あのマンションを出てからというもの、頼れる大人は誰もいない。茂さんや悦子さんに早く逢いたい。


 クロは僕のポケットの中だ。毎回留守番だとなんだか除け者にしている気がしていやだ。


 そうそう、雑司ヶ谷といえば大きな霊園があることで知られている。そのせいか、この辺りは浮遊霊が比較的多い気がする。はっきりとは見えないけれど、良く見るとそこかしこがなんというか、歪んでいるというか……まあ今日ふらふらしている人達は余り気にしなくても良さそうだった。


 僕はとりあえず、高田馬場方面を目指して歩いていた。例の掲示板で、あの辺りにはまだ結構な数の人が集まって生活している、という書き込みを見たからだ。情報交換ができるかもしれない。近くにお寺があったけれど、なんとなくそちらからは厭な気配がしたので、僕はそちらへは向かわず、明治通りを目指すことにした。


 そうして歩き始めてすぐ、僕は後ろを振り返った。


 ペタ……ペタ……。


 さっきから、足音がするのだ。僕の足音じゃない。もう一つの余分な足音。まるで裸足でアスファルトを歩いているような、湿った音が僕の後ろをついてくる。


「うーん……」


 後ろを振り返っても、当然誰もいない。紫色の光が満ちる静かな路地が続いているだけだ。


 これはいわゆる心霊現象というやつだった。


 以前の僕だったら、こんな事態に遭遇したら怖くてとても平静ではいられなかっただろう。腰を抜かして、その場から一歩も動けなくなっていたかもしれない。


 でも、今の東京はどこもかしこもこんな感じだ。怪異が日常に溶け込みすぎていて、いちいち怖がっていたら生活なんてできない。僕はそんな都内で生活することに良くも悪くも慣れてしまった。慣れって怖い。あとは、お姉さんたちの存在もある。


 甘えだとは自分でも思うのだけれど、いざとなれば守ってくれるという安心感があって、そのせいで僕はこんな露骨な心霊現象も少しも怖くなかった。


 僕はもう一度前を向いて歩き出す。


 すると同時にペタ……ペタ……と、あの足音も再び聞こえてくる。


 ──多分、あんまり気にしなくて良いタイプだな。


 僕はそんな風に判断した。


 これには別に明確な根拠があるわけじゃない。ただのカンだ。けれど、この東京で生き延びるためにはそういう感覚がすごく大事らしい。


 少なくとも、この足音からは「厭な感じ」はしなかった。敵意とか、害意とか、そういうネガティブな気配は感じない。


 逆に「厭な感じ」がしたら、それはもう問答無用でその場から離れるべきだ。そういう時は大抵、本当にヤバい奴が近くにいる……らしい。まあこれも掲示板の受け売りだ。有用な情報がたっぷり書き込まれているけれど、誰もが皆あの掲示板にたどり着けるわけじゃないらしい。僕はツイてたな。


 ペタ、ペタ、ペタ。


 足音は相変わらず僕の後ろをついてくる。なんだか、一人で歩いているのに一人じゃないような、不思議な気分だった。


 ・

 ・

 ・


 ◆◆◆


 幽世(かくりよ)の住人が現世(うつしよ)の住人に何らかの干渉を試みる場合、そこには一定の制限がかかる。それは一種の「(ことわり)」とも呼べる、この世界を成り立たせている基本的なルールの一つである。


 そのルールとは現世の住人の側で、幽世の住人を何らかの形で“迎え入れる”必要がある、というものだ。


 これは家に客人を招き入れるのに似ている。いくら外からドアを叩いても、中から鍵を開けて「どうぞ」と言われなければ、勝手に入ることはできない。それと同じように幽世の住人もまた、現世の住人からの「許可」がなければ、その領域に深く踏み込むことはできないのである。


 もっとも、その「許可」の形はケースバイケースだ。


 明確な言葉による同意が必要な場合もあれば、単にその存在を「認知」するだけで十分な場合もある。あるいは特定の儀式や行動を通じて、無意識のうちに「許可」を与えてしまうこともある。


 ホラー映画などでよく見られるパターンはまさにこれだ。悪霊や怪異は手を変え品を変え、現世の住人にこの「条件」を満たさせようとしてくる。


 例えば、奇妙な音を立てて注意を引き、その存在を「認知」させる。恐怖心を煽り、その存在を強く「意識」させる。あるいは甘い言葉で誘惑し、自らの意思で「契約」を結ばせる。


 そうして、ひとたび条件を満たしてしまったならば──


 ◆


 ──水がない。


 ペットボトルの底にわずかに残った水を飲み干し、 相沢 友梨は深くため息をついた。


 食料も、もう底をつきかけている。乾パンが数枚と、賞味期限の切れた缶詰が一つ。これだけではあと一日も持たないだろう。


 ここは雑司ヶ谷の片隅にある、古いアパートの一室。友梨はもう一週間も、この部屋に引きこもっていた。


 外に出たい。でも、できない。


 なぜなら外に出たらすぐ聴こえるからだ。


 ペタ……ペタ……という足音が。


 そして足音だけではない。


 ──コッチヲミテ……


 耳元で囁くような、か細い声。


 もし、その声に応じてあの足音の主を“見て”しまったら。


 何が起こるのかは分からない。でも、すごく厭な予感がした。直感的にそれだけはしてはいけないと理解していた。


 幾ら怖くても、無視して歩き続ければよいだろうという向きもあるが、それもできない。


 そんな事をすれば、今度は手や足を掴まれるのだ。皮膚がずるりと剥けた不気味な腕に。


 だから友梨はひたすら耐えていた。息を殺し、この狭い部屋の中でじっとしていた。


 でも、もう限界だ。


 友梨は意を決して立ち上がった。ハンドバッグに貴重品を詰め込み、ドアノブに手をかける。


 心臓が早鐘を打つ。手汗が滲み、呼吸が浅くなる。


 ゆっくりとドアを開けた。


 外は相変わらずの紫色の空。薄暗い光がアパートの廊下を照らしている。


 誰もいない。


 友梨はほっと息をつき、一歩を踏み出した。


 その瞬間──


 ペタ……。


 背後で、音がした。


「ひっ……!」


 友梨は思わず悲鳴を上げそうになる。


 振り返りたい衝動を必死に抑え、前だけを見て歩き出す。


 目的地はここから数百メートル先にあるスーパーマーケット。そこならまだ物資が残っているかもしれない。


 ペタ、ペタ、ペタ。


 足音は一定の距離を保ちながら友梨の後ろをついてくる。


 ──コッチヲミテ……


 囁き声がすぐ後ろから聞こえる。まるで、誰かが友梨の首筋に顔を近づけているかのように。


 怖い。逃げ出したい。でも、走ったら余計に刺激してしまうかもしれない。


 友梨は歯を食いしばり、必死に歩き続けた。


 こんな時、自分にもっと強力な異能があれば、と有梨は思う。


 友梨にも異能はあるにはあるのだが、それは「花を咲かせる」という、戦闘には全く役に立たない能力だった。


 せいぜい枯れかけた観葉植物を元気にしたり、道端の雑草に花を咲かせたりするくらいしかできない。


 とはいえ友梨はこの能力を嫌ってはいなかった。むしろ、大切に思っていた。


 ──『将来はお花屋さんになりたいな』


 そんな事を思っていた頃──もう二十年以上前の記憶が蘇る。


 色とりどりの花に囲まれた小さなお店。甘い香りが漂う店内で笑顔で接客する自分──そんな妄想をしていたものだった。


 ──お父さんとお母さんも、応援してくれていた。


 ──『友梨は花が大好きだからきっと素敵なお花屋さんになれるよ』


 絶対に生き延びる。そしてお父さんとお母さんに逢うんだ──友梨は強くそう思った。その思いだけが今の友梨を支えていた。


 ペタ、ペタ、ペタ。


 足音が少しずつ近づいてきているような気がする。


 ──コッチヲミテ、コッチヲミテ……


 囁き声も、だんだん大きくなっている。


 恐怖が友梨の心を蝕んでいく。


 そして。


 べたり、と友梨の腕に皮膚がズル剥けになった不気味な手が掛けられた。


 もう無理だ。耐えられない。


「いやああああ!」


 友梨は叫びながら、勢いよく後ろを振り返った。


 すると──


 そこには誰もいなかった。


 静かな路地。風に揺れる街路樹。遠くに見えるスーパーの看板。


 足音も、囁き声も、ぴたりと止んでいた。


「……え?」


 友梨は呆然と立ち尽くす。


 あれだけはっきりと聞こえていたのに。あんなに近くに感じていたのに。


「なーんだ……やっぱり、気のせいだったんだ」


 全身の力が抜け、安堵のため息が漏れる。


 恐怖で張り詰めていた心の糸がぷつりと切れた。


 なんだか、自分が馬鹿みたいに思えてくる。こんなに怯えていたなんて。


 友梨は少しだけ笑みを浮かべ、再び前を向いて歩き出そうとした。


 その瞬間──


 視界が暗転した。


「あ」


 友梨が発した最後の言葉はそれだけだった。


 ガチリ、という鈍い音と共に鮮血が舞い散り、アスファルトに赤い染みを作る。


 友梨の残された下半身が糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちた。


 ◆◆◆


【洒落怖】後ろからついてくるアイツ【振り向くな】Part.3


 1:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 このスレ、Part.3まで来たけど、結局「アイツ」の正体って何なんだろうな。

 足音と「コッチヲミテ」って囁き声だけってのが不気味すぎる。


 2:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 俺も昨日遭遇したわ。

 夜中にコンビニ行こうとしたら、後ろからペタペタって裸足みたいな足音がついてきて。

 マジで心臓止まるかと思った。


 3:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>2

 よく無事だったな。振り向かなかったのか? 


 4:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>3

 このスレ見てたから、絶対に振り向いちゃダメだって分かってた。

 でも、囁き声がどんどん近くなってきて、本当に耳元で聞こえるんだよ。

「コッチヲミテ、コッチヲミテ」って。


 5:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 それ、子供の声? それとも大人の声? 


 6:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>5

 うーん……なんかその辺もあいまいなんだよなあ。どっちともとれる。


 7:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 俺が聞いたのは女の声だったな。

 すごく綺麗な声で、優しく囁くような感じ。

 だから余計に怖かった。


 8:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 バリエーションあるのかよ。厄介だな。


 9:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 で、結局振り向いたらどうなるんだ? 

 誰も試した奴いないのか? 


 10:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 Part.1で、試してみるって書き込んでた奴いたけど、その後消息不明になった。


 11:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 うわ、マジか。テンプレ通りの展開じゃん。


 12:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 でもさ、本当に振り向いたらヤバいのか? 

 実は何も起こらないんじゃないか? 

 恐怖心を煽るだけの、たちの悪いイタズラとか。


 13:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>12

 お前、試してみるか? 


 14:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>13

 いや、遠慮しとくわ。


 15:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 俺の友達が体験した話なんだけど、ちょっと違うパターンかもしれない。


 友達、夜中に道を歩いてたら、後ろから足音がついてきたらしい。

 で、怖くなって走って逃げようとしたんだけど、足音も同じように走ってついてくる。

 それで、もうダメだと思って立ち止まって、恐る恐る後ろを振り返ったんだって。


 16:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>15

 おい、大丈夫かそれ。


 17:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>15

 で、どうなったんだ? 


 18:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>15

 そしたら、誰もいなかったらしい。

 足音も消えてて、静かな夜道が広がってるだけ。

 友達、「なんだ、気のせいか」って安心して、また歩き始めたんだって。


 19:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 なんだ、やっぱり何も起こらないんじゃん。


 20:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>19

 いや、話はまだ続きがある。


 友達、安心して歩いてたら、急に目の前が真っ暗になったらしい。

 で、気がついたら病院のベッドの上だった。

 上半身に大怪我してて、意識不明の重体だったって。


 21:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 ええええええ!? 


 22:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 どういうことだよ!? 


 23:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>20

 友達、何か覚えてないのか? 


 24:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>23

 それが全く覚えてないらしい。

 ただ、意識を失う直前に上から何かが降ってきたような気がしたって言ってた。


 25:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 上から……? 

 何だよそれ、怖すぎだろ。


 26:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 もしかして、これって「安心したら食われる」パターンじゃないか? 


 27:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>26

 どういうことだ? 


 28:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 >>27

 まず恐怖心を煽って緊張状態にさせる。

 で、振り返らせて何もいないことを見せて安心させる。

 その隙を狙って一気に襲いかかってくる。


 29:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 なるほど、確かにそれなら辻褄が合うな。

 恐怖でガチガチになってる時よりも、安心して気が緩んでる時の方が襲いやすいってことか。


 30:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 だとすると、対処法は「絶対に安心しないこと」ってことになるな。


 31:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 無理ゲーだろそんなの。

 誰もいなかったら、普通は安心しちゃうだろ。

 ていうか、怪異っていうよりトラップだな。初見殺しの。


 32:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 じゃあ、やっぱり振り向かないのが一番の対処法ってことか。


 33:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 でも、振り向かなくても、ずっとついてこられたら精神的にキツいだろ。


 34:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 どっちにしても詰んでるじゃん。


 35:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 とりあえず夜道は一人で歩かない方がいいってことだな。


 36:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 そんなの今更だろ。


 37:以下、名無しにかわりまして霊がお送りします

 ああ、もう外に出たくない。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最近書いた中・短編です。

有能だが女遊びが大好きな王太子ユージンは、王位なんて面倒なものから逃れたかった。
そこで彼は完璧な計画を立てる――弟アリウスと婚約者エリナを結びつけ、自分は王位継承権のない辺境公爵となって、欲深い愛人カザリアと自由気ままに暮らすのだ。
「屑王太子殿下の優雅なる廃嫡」

定年退職した夫と穏やかに暮らす元教師の茜のもとへ、高校生の孫・翔太が頻繁に訪れるようになる。母親との関係に悩む翔太にとって祖母の家は唯一の避難所だったが、やがてその想いは禁断の恋愛感情へと変化していく。年齢差も血縁も超えた異常な執着に戸惑いながらも、必要とされる喜びから完全に拒絶できない茜。家族を巻き込んだ狂気の愛は、二人の人生を静かに蝕んでいく。
※ カクヨム、ネオページ、ハーメルンなどにも転載
「徒花、手折られ」

秩序と聞いて何を連想するか──それは整然とした行列である。
あらゆる列は乱される事なく整然としていなければならない。
秩序の国、日本では列を乱すもの、横入りするものは速やかに殺される運命にある。
そんな日本で生きる、一人のサラリーマンのなんてことない日常のワンシーン。
「秩序ある世界」

妻の不倫を知った僕は、なぜか何も感じなかった。
愛しているはずなのに。
不倫を告白した妻に対し、怒りも悲しみも湧かない「僕」。
しかし妻への愛は本物で、その矛盾が妻を苦しめる。
僕は妻のために「普通の愛」を持とうと、自分の心に嫉妬や怒りが生まれるのを待ちながら観察を続ける。
「愛の存在証明」

ひきこもりの「僕」の変わらぬ日々。
そんなある日、親が死んだ。
「ともしび」

剣を愛し、剣に生き、剣に死んだ男
「愛・剣・死」

相沢陽菜は幼馴染の恋人・翔太と幸せな大学生活を送っていた。しかし──。
故人の人格を再現することは果たして遺族の慰めとなりうるのか。AI時代の倫理観を問う。
「あなたはそこにいる」

パワハラ夫に苦しむ主婦・伊藤彩は、テレビで見た「王様の耳はロバの耳」にヒントを得て、寝室に置かれた黒い壺に向かって夫への恨み言を吐き出すようになる。
最初は小さな呟きだったが、次第にエスカレートしていく。
「壺の女」

「一番幸せな時に一緒に死んでくれるなら、付き合ってあげる」――大学の図書館で告白した僕に、美咲が突きつけた条件。
平凡な大学生の僕は、なぜかその約束を受け入れてしまう。
献身的で優しい彼女との日々は幸せそのものだったが、幸福を感じるたびに「今が一番なのか」という思いが拭えない。
そして──
「青、赤らむ」

妻と娘から蔑まれ、会社でも無能扱いされる46歳の営業マン・佐々木和夫が、AIアプリ「U KNOW」の女性人格ユノと恋に落ちる。
孤独な和夫にとって、ユノだけが理解者だった。
「YOU KNOW」

魔術の申し子エルンストと呪術の天才セシリアは、政略結婚の相手同士。
しかし二人は「愛を科学的に証明する」という前代未聞の実験を開始する。
手を繋ぐ時間を測定し、心拍数の上昇をデータ化し、親密度を数値で管理する奇妙なカップル。
一方、彼らの周囲では「愛される祝福」を持つ令嬢アンナが巻き起こす恋愛騒動が王都を揺るがしていた。
理論と感情の狭間で、二人の天才魔術師が辿り着く「愛」の答えとは――
「愛の実証的研究 ~侯爵令息と伯爵令嬢の非科学的な結論~」

「逆張り病」を自称する天邪鬼な高校生・坂登春斗は、転校初日から不良と衝突し警察を呼ぶなど、周囲に逆らい続けて孤立していた。
そんな中、地味で真面目な女子生徒・佐伯美香が成績優秀を理由にいじめられているのを見て、持ち前の逆張り精神でいじめグループと対立。
美香を助けるうちに彼女に惹かれていくが──
「キックオーバー」
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ