ヒロインがキャラを攻略するとは限らない
気づいたら桃色の髪の美幼女に産まれかわってたぞ!
トラックにひかれた覚えもないし、そもそも死んだ記憶もない。
これ本で見た転生ってやつじゃねって気付いたのが三歳の時。
貧しいながらも優しい両親にちやほやされまくって育てられてるけど、これもしかしなくてもヒロインポジションでは。
でれでれした顔の今世の父が五歳になったから来週教会でスキルみるぞ~なんて言いながら私を抱き上げる。
え、私やばくない?
このゲームが何か知らないどころか乙女ゲームやったことないもん。
やばいやばいやばい。
他にも転生者いたら私は真っ先に潰される。
だって私バカな自信あるもん。
前世の成績表?下の評価ばかりですよ。
日本語ですら尊敬語謙譲語あとなんだっけ?ビジネス敬語?忘れたけど、母国語の日本語ですらまあまあ不自由してたのに他の国の言葉?無理でしたねー。
数学?足し算と引き算しか覚えてないですわ。
他の科目は、うん、きっと転生のときに忘れたね!
さてさて、やっぱり教会では私に光の魔法の適正が見つかり聖女として生きることになった。
なお聖女は貴族であらねばならないらしく、子爵家に引き取られることになった。
めっちゃ酷いじゃん、そんな理由で血の繋がった親から離されるなんて現代の日本ならありえないよーって思ったけどここはなんちゃってファンタジーヨーロッパ、それが許されちゃう世界。
子爵家に入ってからからは毎日泣きそうになったね、嘘、よく泣いた。
姿勢、所作、言葉遣い全てにダメ出しされて、時には体罰もある教育をうける日々。
それプラス週2日は聖女教育なんてものも教会で受けなくてはいけない。
めちゃくちゃ逃げ出したいけど、本当の両親のところへ行けるわけでもないし、行くあてもないなら手を抜きながら頑張った。
そんなこんなで数年があっという間にたって、魔法学園入学。
王子様もいるし伯爵、侯爵、公爵家とかのキラキライケメン軍団がいる。
いや、なんで皆、こんなに歳が近いんだよ。
王妃様が懐妊すると側近候補やら、王子妃候補に皆頑張るって習ったけどさぁ。
この歳の近さは違うよね、同学年もいるもん。
聖女というのは珍しいからか王子様や他の方々から声をかけられることもあるが、仮に他に転生者がいてヒロインぶっ殺!勢だとやばいので、当たり障りない返事と微笑みで返す。
こっちは命かかってるかもしれないんです!
そもそも聖女ってだけで教会で週に何日か何時間も祈って、国の結界を維持したり、なにかあるとまた祈って奇跡をおこしたりしないといけなくて疲れてるんですよ!
しかも無給だし!労働には対価をよこせ!
多分他に転生者はいなさそうで、まあまあ平和に過ごしてたのに私のアナタ達に興味ないですよ~って態度がおもしれー女認定されたのか、まあ、あと自分でいうのもあれだけど見た目が物凄く良いからか、あとは聖女の補正か、キラキラ軍団がやたら構うようになった。
昼食に誘われる、隠れてもバレる、授業がかぶれば隣の席にくる、外出に誘われる。
ねえ周りをみてくれ。貴方達の婚約者の視線で私、殺されそうなんですけど。空気って吸うもんだと思ってる私ですらやばい雰囲気ってわかるレベルだよ。
何度断っても、謙虚だねとか○○○(あいての婚約者の名前)を気にしてるのかい?とか頭がわいた返事がくる。
そうだよ!気にしてますよ!というかやばいから関わりたく無いんですよ!って言えたら良いのに、身分制度って辛いなぁ。
聖女ってさ、死んで暫くしたら次世代が産まれてくる場合が多いんだって。
つまりコイツむかつくから消そう☆ってなると私を殺して、次のを探そーってなる可能性があるわけ。
せっかく美少女に産まれ変わったのにこの世は最悪です。
そして今修羅場に巻き込まれてます。
見事な金髪縦ロールお嬢様、海よりも深い青の髪のお嬢様、美しい銀の髪のお嬢様、フワフワ茶色の髪のお嬢様たちに囲まれてます。
はい、皆さん、あのキラキラ軍団の婚約者達ですねー。
とっても逃げ出したい。
「聖女だからといっても、こうも学園の皆さまと違うのですね。みだりに男性に近づくとは、やはり産まれが違うからなのでしょうか。」
はい、近づいてないです。そして産まれ関係ないです。
「あなたとあの方の身分の差をわかってらして?自分が釣り合うとでも?」
釣り合いたくもないです。
「お願いだから、あの人に付きまとうのはやめて、お願い。」
こっちこそお願い、泣かないで。付きまとわれてるのは私なんです。泣きたいのは私です。
「結婚するのは私なんです!婚約者は私なんですよ!」
あ、この人だけポメラニアンがキャンキャン吠えてるように見える、可愛い。ちょっとだけ現実逃避できた。
取り敢えず必死に謝って、更には膝をついて謝って、最終的手段の土下座をしようして泥まみれになったらお嬢様方に止められた。
なんだ良い人達じゃん、私のこと責めてたけどなんかこの雰囲気って悪いの男の方って解ってるぽいし。
そんなヤベー修羅場を誰かに見られてたのか、学年最後のパーティーでアレがおこった。
そう婚約破棄イベントである!
キラキラ軍団は口々に聖女に対してそんなことする女性とは結婚できない、例え聖女相手でなくてもよってたかって虐めるような非道な行いをしてる女性とは一緒になれないと。
そうしてはじまるキラキラ軍団からの私へプロポーズ。
いや、あの、誰とも恋仲になってないんですけど。こういうのってイベントがあって好感度あげて〜がセオリーじゃないの?
ねえ、甘酸っぱさどころか苦味しか私は感じてねーよ!
「あの~申し訳ないんですけど、誰ともそうなるつもりはありません。」
キラキラ軍団の発言から静まりかえったパーティー会場に私の声がよく響く。
よし!言うなら今だ!逃げ出すなら今だ!
「婚約者がいるのに私なんぞにうつつ抜かす人なんて、とってもいらないです~。」
かたまってるキラキラ軍団に言いたいことを伝えて、そのまま馬車に飛び乗って教会へ逃げた。
そして教会で聖女の力を取り込むために王家や各家々にプロポーズされ外堀も埋められはじめていると渾身の演技で泣いて助けを求めた。
そのあとのことは物凄く早く色々終わった。
金髪縦ロールお嬢様はキラキラ軍団の王子様が皇太子になれなかったことによって、別の王子が皇太子となりその方と結婚し将来国母になることが決まり、海よりも深い青の髪のお嬢様は隣国の高位のお貴族様と婚約を結んだ。
美しい銀の髪のお嬢様は身分が低い家だけど幼馴染みの男性が事の顛末を聞き、彼女の両親に熱心に願い通いそしてお互いが両思いだとわかると彼女の両親それを聞き入れて結婚、フワフワ茶色の髪のお嬢様はキラキラ軍団の一員をそのまま婿にした。
ポメラニアンお嬢様はどうやら彼を本当に愛していたらしい、アホなことをして家族にも愛想をつかされた男を救いあげたのだ。
愛とは素晴らしい、私なら絶対お断りなのに。
収まるところに全ては収まったのだろう。
なのに私にはいまだに誰もいない。
今日も今日とて熱心に祈っている。
どうか神さま、私にもステキな男性との縁をお願いします。
あと聖女に給料渡すという概念をよろしくお願いします、と。
このあと堅物イケメン聖騎士と道の曲がり角でぶつかったのは神さまの思し召し。
だから絶対逃がさないから!ぶつかっただけで照れてる騎士様!
〆