高度に発達した魔法は、自然と区別がつかない
高度に発達した魔法は、自然現象と区別がつかない。
この言葉は、大魔法である5つの魔法に対して使われる言葉だ。
木、水、火、土、雷の最も強い神話に残る魔法は、まるで自然現象かと思わせるような天変地異をもたらす、と言われている。
今は、もう誰も使い手のいない大魔法だ。
これは、そんな大魔法には全く届かない一人の魔法使いの小話。
アーネスト・クライストの物語だ。
アーネストは、今日も神風を待っていた。
魔法学園の女子学生たちが、そのタータンチェックのスカートを揺らしながら、談笑しつつ前を通っていく。
風はそよそよと吹いていた。
石畳の寸草がゆらゆらとゆらぎ、一度静止し急に大きな風が一陣を横切る。
女子生徒は、忽然とした突風にスカートを抑えるのが間に合わず。
「白、赤、水色、青」
アーネストと小声で呟き、そっとその場を離れる。
今日もいい風が吹いた。
自然で違和感がない風だった。
誰が魔法と気付くだろう。
アーネストは、今日の日課を終えて、授業に向かった。
魔法。
それは、己の性欲を満たすためにある。
アーネストは、そう信じていた。
風を自然に吹かせ、スカートの下の秘蹟をチラ見し、小雨を天から降らしてブラスケを拝む。
自身を光魔法で擬似透明化して、女子更衣室やお風呂場の秘密を探検する。光魔法は風と水の応用だ。
アーネストは威力がないが、隠蔽能力だけ高い魔法を得意とした。
だがーー
「見いちゃったッ」
明るい声が、アーネストの横から聞こえた。誰もいないはずの空間が歪んでいき、アーネストよりも頭身2つほど低い少女が現れた。
「幻想の魔法使いミレー、よろしくね、覗き魔さん」
「なんのことだが。偶然パンツが翻り、偶然視線が吸い寄せられる。自然の摂理だ。第四真祖もきっとそう言う」
今もそうだ。偶然、水たまりが瞬時に、ミレーの下にできて、偶然鏡のようになり、下着が映る。
自然だ。ハプニングだ。ラブコメだ。
「隠密系の魔法が得意なのが君だけだと思わないことね」
水たまりの夢が、ぶれてしまって、きれいに反射してくれない。それはそれでモザイクの夢があるが。
「わたしは、きみに伝えたいことがあるの。もう世界は長くない。早く、探して」
そう言って、幻想のミレーは消えていった。
アーネストは、その瞬間、ミレーのことを忘れた。どうでもいいから。
世界が徐々におかしくなってきていた。
なんだか、みんな服装が痴女化していきていた。不自然だ。
みなさん、パンツをスカート風のチュニックで隠すレベルで、パンツを見られない構えをしていたのに。
最近なんて、ビキニかと思ったら、下着だったがあった。
いや、もう公序良俗違反だろう。
ダメだ、エロスがなくなっている。高度に発達した認識魔法か何かか。
もう、俺に、女子更衣室でロッカーに隠れる必要もなくなった。
だって、堂々と正面から入っても、普通に挨拶してくるんだぜ、あいつら。
おかしい。おかしいよ。
とりあえず、俺は、女子寮のベッドでねむった。
目が覚めた。ああ、フローラル。しかし、この女子生徒おれが、先にベッドで眠っていても、何も気にせず眠っている。頭、おかしいぜ。
性犯罪の存在しない清らかな世界だ。
さて、だれだ、こんな愛のない世界にした、超天才バカ魔法使いは。
俺は、冷静に、考えた。
きっと、この世界で、まだ正気を保っているやつが犯人だ。よって、犯人は俺だ。じゃなくて――
まぁ、仕方ない。とりあえず、全校生徒スカートめくり大会を一人開催して、頑張るか。
犯人は、女。これだけは譲れない。犯人は、エロスの意味を理解していないのだから。
というか、女子じゃなかったら、俺には解けない。なぜなら推理できないから。
俺にできるのは、女の子に対して、ラブコメラッキースケベ現象を行うだけなのだ。
全力廊下ダッシュ神風アタックをした。
そこでスカートを抑えて防御したのは、たったの三名。というか、もうほぼスカートなんてしてないし、めくれあがろうが気にしてない。
なんだ、この最高で、最悪な世界。隠すからこそ意味がある。それがヌーディストビーチは理解してないんですよ。
ということで、まず、スカートをしている三名を捕まえた。
すでに、なぜかある水たまり反射によって、彼女たちのスカートの中を確認した。何のためにって、意味なんてない。そこにショーツがあると思ったからだ。
「それで、なんで、わたしたちは、集められたのでしょうか」
「この中に、犯人がいるからだ」
何のですか、とポカンと聞いてきた一名を犯人から除外。だって、君たち、おかしいんだよ。みんなフルオープンしているなかで、アイアンメイデンしているんだから。
「わたしはね、世界とかどうでもいいの。みんな脱ぎだしたけど、そういうこともあるでしょ、と」
サバサバ系のマグロ女子っぽい子は言った。
あるわけねーよ、なんで脱ぎ脱ぎされて冷静でいるんだよ。お前、みんなが火事だと信じて逃げ出しても、出火現場を探しにいく天才かよ。
「この世界からエロスが死に行こうとしているんだぞ。いずれ、少子化になり、人類はXを忘れる」
「別にいいじゃない。わたし、魔法研究できれば、他は他の人に任せる」
さて、こんな魔法オタクは放っておいて――――
「それで、もう一人のそこの君。おっぱい揉んで良い」
少女は、イスごと引き下がって、胸を全力でガードしていた。
うんうん、健全な反応で素晴しい。
「とりあえず、犯人じゃないと」
よって、犯人はこの中にいるが。全員犯人じゃない。直感によって。
いや、なんかさ、どうしろって言うんだよ、ミレーさん。
何を探せって。黄金のパンツですか。レインボーパンですか。
この極めて大規模な常識改変魔法に、俺のラブコメイベント魔法でどう対抗しろと。
しかし、よくよく考えれば、常識的に考えれば、別に、ラッキースケベは常識が変わった世界なりに発展するのでは。つまり、どんな文化でもエロスは存在するのだ。
世界は滅んだ――――――。
「バカなのか、君は」
ミレーに頭頂部を叩かれた。
痛かった。痛みのない世界にしてほしい。羞恥心は欲しい。
「ミレーちゃん。なんで服着てるの」
顎を蹴られた。おいおい、俺じゃなきゃ、気絶してるよ。
「常識っていうのは、区別がつかない。常識に吞まれてしまったら。だいたいなんで、犯人候補を、学園内に絞ったのよ」
「そりゃそうでしょ。限定しないと大変すぎるよ。犯人候補が1万人いたら諦めるよ」
「あなた、なにか、おかしなものを見なかった?」
「見てません。何も見てません。ミレーちゃんの裸なんて見てません」
「見させるわけないでしょ」
そう、これこそ、男が頑張ってみようと思うものなのだ。向こうから、簡単に見せてきたら、見る価値がなくなる。だから、誰もAVなんて見ない。そういう簡単に手に入るものに人は価値を感じない。男とは、努力して手に入れてこそなんだ。
「それで、答えを教えてよ」
「自分で探す事に意味があるんでしょ」
「ミレーちゃんは、白だよね」
「わたしのショーツの色の答えなんてどうでもいいの」
あ、ミレーちゃんが、また幻想の中に消えていった。
ああ、何か、おかしなものって、この世界そのものがおかしくなってるのに。
いや俺のすべてのことを自然と思わせる魔法が暴走しているとでも言いたいのかな。
しかし、俺は、ラブコメラッキースケベで我慢できる紳士だ。
まさかな、変態的で犯罪的な性的願望はないんだ。俺は、男子小学生的な欲望で我慢できる紳士だ。変態紳士だ。
俺は普通だ。この世界にツッコミをいれれるぐらい正気だ。
ちょっと女子風呂に浸かって、冷静に考えよう。
ちゃぷんちゃぷん――。
ミレーちゃんは、何かを探せといっていた。犯人じゃないのか。
もしかして、あれだ。そうラブコメ理論的にいえば――、俺は正気だ。犯人は、実は主人公なんてありきたりすぎる。
そう、きっと、俺の能力を暴走的に利用するための魔方陣か何かがあるんだ。そう、最近、やたら魔力消費が多いし。垂れ流されているような。
なんということだ、俺は気づいてしまった。
この世界のおかしさに。
そう、これほど、エロスの解放された健全な世界なのに。世界には、下着が残っているのだ。
しかも、最近、やたら、下着のデザインがすごい。
いや、Tバックとかスケスケとかそういうことじゃなくて、女子の下着を長年見てきた俺だから分かる。
どう考えても、ブラやショーツに、魔方陣を刻んじゃってないか。あれって、どう考えても、魔方陣の刺繍だったのでは。
そうして、俺は、冷静にスカートを抑えた彼女たちを思い出し、あいつら、きっとノーパン界隈だと決めつけて、下着メーカーに、俺は女子風呂から突っ込んでいた。
その後、ミレーは、下着メーカーに突っ込む短絡的な俺に頭をかかえていた。




