小話 可愛い孤児姉妹
多分読まない方が良いです。支障は多分出ません。
物心ついた時、私たちは2人だった。齢2つもあるかないか。そんな赤子がたった二人きりで薄暗い裏路地に居た。今思えば何故餓えて死んでいないのか甚だ理解しがたいが、今更考えてもどうにもならない。。
春は良かった。木の葉は柔らかく、土を少し掘れば食べられるモノが手に入る。夜は少しばかり寒いがそれでも妹と抱き合って寝ていれば寒さに震える事は無かった。
夏は良かった。街中を少し歩けば食べられるモノが自ら場所を泣いて知らせてくれた。それに適当に足元に目を向ければ美味しいモノが跳ねていた。たまに喉に引っかかるのが玉に瑕だが味が良いため、気にはならなかった。夜も凍えることなく妹と一緒に手を繋いで寝た。
秋は少し良くなかった。食べられるモノは地面を掘っても、街中を歩きまわってもあまり多くは見つからなかったから。夜も少し寒くて、妹と抱き合って寝ても寒くて少し震えた。
冬は良くなかった。食べられるモノはほとんど無いし、夜は寒くて寒くてたまらなかった。妹を強く抱きしめて寝ても寒くて寒くてたまらなかった。足先がちょっと欠けた頃、寒い寒い冬が終わった。
次の冬の訪れを億劫に思いながら日々を過ごしていると、そばに居る人が1人増えた。
その人は私たちに色々な事を教えてくれた。言葉や文字、算術とお金の稼ぎ方。薄汚い汚れにまみれた格好の孤児の私達には使いようが無い事を沢山教えてくれた。
その人のおかげで、冬がほんの少しだけ寒くなかった。寒さに体が震える事はあっても、体が欠ける事は無かった。
ちょっとだけ、冬の寒さへの憂鬱さが和らいだ。
その人がそばに居てくれたおかげで次の冬までの間、いつもよりも沢山のモノを食べられた。おかげで、今までよりも毎日がちょっとだけ楽しかった。
この時の冬はいつもよりもずっと寒かった。その人がいても、寒さで震えて体が欠けてしまいそうだった。それでも、途中でごはんが大量に食べられたおかげで体が欠けなくて済んだ。
それからはまた二人で日々を過ごした。その人のおかげで、前よりも沢山の食べられるモノを手に入れられるようになった。だから二人でもお腹いっぱいになるまでごはんが食べられた。
冬も無事越せた。寒さで凍える冬は沢山あったけど。それでも体が欠けたりするようなことは無かった。
それから2回冬が来て、夜がほんの少し寒くなった頃、妹と一緒に何処か知らないところに連れていかれた。
光の無い穴の中に無理矢理連れていかれて、いろんな事をされた。その全てが、今まで知ら無かった、知りたくも無かったことだった。毎日体が痛くて仕方が無かった。妹も一緒にいろんな事をされていた。その姿が見てらてなくて。でも、見てないと妹がいなくなるんじゃないか。そう思って、痛くて痛くてたまらなそうな顔をした妹をずっと。ずっと。ずっと見続けた。そのせいか、ちょっとだけ見える範囲が狭まっちゃった。
妹も多分私と同じような気持ちだったと思う。だって、どんなに苦悶に満ちた顔をしていても、ずっと私の事を見てたから。ずっと、ずっと見続けてくれたから。
そんな生活が何日か続いたころ、私たちと同じ立場の人が一人増えたらしい。私たちは又聞きしただけで詳しい事は知らない。いや、知れなかった。
でも、音を聞くに、その人は私達とはちょっとだけ扱い方が違ったみたいだった。だって、声が聞こえなかったから。絞りだす声も、呻く声も、わめく声も、私達以外の声は聞こえなかったから。
でも、私たちにはもう「平等じゃ無い」たったそれだけの理由でなにかを思う心の余裕は無かった。
それからもう何日か経った頃、急に穴の中が騒がしくなった。私たちにいろいろな事をしていた人達が慌てて部屋を出て行って、それからほんの少し経って、ひときわ大きな音が鳴ったらすぐに音が止んだ。騒がしかったさっきまでの様子とは打って変わって、私たちの息遣い以外何も聞こえないくらい静まり返った。
ほんのちょっとして誰かの足音が聞こえた。今まで聞いた誰のどの足音とも違った足音。
私は心の底から願った。
【この足音の主が妹に救いの手を差し伸べてくれますように】
と。




