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旅人旅行録  作者: ヒロ
6/11

攫われっ娘護送録その1

 人攫い共を殴殺し、攫われた少女たちを助けた私は現在、洞窟の入り口に居た。


 理由は簡単。現在時刻の確認のためだ。この世界には来たばかりなので時間の流れはいまいち掴めてない。それ故に自らの目で見る必要があるのだ。


「はてさて、今の時間はどれくらいかな~っと」


 洞窟から見た外の空は茜色に染まっていた。洞窟に居た時間から察するに今は夕方なのだろう。夜が極端に短いとかそんないかれた理由じゃない限りきっと今は夕方なのだろう。


「夕日が綺麗ですねぇ。はぁ~生きててよかったぁ」


 そう呟いたのはさっきまでぎゃん泣きしてた奴隷落ち寸前ガール。今もまた瞳に溢れんばかりの涙を蓄えながらもさっきまでのように泣いたりせず私の隣に佇んでいる。連れてきた理由は本人が希望したからである。


「死体転がってるけどダイジョブそ?」と聞いたら「大丈夫です」と答えたので連れてきた。途中めっちゃ顔色が悪かったので大丈夫じゃないのだろう。盗賊団のリーダーは置いてきた。身ぐるみ剝いで肌着姿で拮抗縛りで天井に吊るしてるから何もできまい。ちなみに残り二人の攫われガールズは起きた。今隣にいる娘のぎゃん泣きによって。今は広間で休んでいる。


「さ~てと時間の確認は出来たし戻ってご飯食~べよ。お腹めちゃんこすいてるでしょ。美味しいの作ったげる。まっここにある材料次第だけど」


「そうですねぇ。ずっとまともに食べさせてもらって無かったのでもうペコペコで。」


「よ~しじゃぁちょっぱやで戻ろか~」


 おもむろに隣にいる娘を肩に担ぐ。娘はいまいち状況が呑み込めてない様子だ。実に好都合である。


「えっと?何でしょうかこの担がれ方?」


「あっそうだ。舌噛まないように気を付けてね~」


 担いでる娘の質問にまともに答えず壁にぶつからない程度に全力で走り出す。


「えっあっちょっまっはやまって死ぬ死ぬ死ぬ死んじゃいますってコレ~~~~~!!!!」


 娘の絶叫が聞こえるが無視して全力疾走を続けた。道中邪魔してくるような輩は全員死んだし、この上なく順調に進めた。ほんの数分経てば広間まで着く。最初はまぁまぁ時間が架かったのにやけにあっさり着いた。邪魔が無いのは実にいいな。


「はぁ、ふぅ、ひぃ、二度と!!こんなこと、やらないでくださいね!!」


 抱えてた娘が息を切らしながら苦言を呈してきた。どうやら少々刺激的過ぎたらしい。


「あいあい。もうやらないよ。それよりそこの縛られてるヤツに聞きたい事がある。料理場はどこだ」


「あ?誰がんなこと言うと思って・・・あっ。え~っとそこのドアの先に有ります。はい。舐めた口きいてホントすみませんでした」


 お仕置きは十分足りてるみたいだ。関心関心。攫われガールズはさっきまで吊るされてるヤツで遊んでいたらしい。子供って割と図太いところあるよな~。


「あっ戻ってきた~お時間どだった~?」


「あたしお腹すいた~なんか食べるもの無い~?」


「ウチもお腹すいた~」


 先程まで手痛い躾だか調教を受けていただろうに早速飯の催促とは。結構図太いなこの二人。あぁいや、タフの方が合ってるかな。まぁいいや。


「いまから作るからちょいと待っててね~」


「「は~い」」


 まともな食材がある事を祈りながら私は料理場に足を踏み入れた。


 料理場にに入りまず目に入ったのは大量の芋と人参だ。かなりの量があるが元々人攫い共は三十人以上いたのだ。そう考えるとまぁ妥当な量なのだろう。


「とりあえず色々漁って探すか~。生でもイケそうなのあったらあの娘達に渡しとこ~っと」


 そう呟きながら棚を漁る。するとハムと、量は少ないがチーズ、そしてリンゴその他いまいちよく分からぬ食材が入っており、その隣には各種調味料が入っていた。山椒らしきものにに推定胡椒、それと多分塩と砂糖それ以外にも色々ある。


「お~い皆~。リンゴ?あったけど食べる~?あと調味料とか食材詳しい子いる~?」


 広間で仲良しこよししてた3人に向かって声をかけた。


「リンゴ!?是非いただきます。二人も食べる?」


「食べる食べる~」


「ウチもウチも~」


 皆食べるらしい。リンゴが入った袋をそのまま攫われっ娘たちの所へ持って行く。皆こぞってリンゴを食べたした。まぁ食事が出来るまでの繋ぎにはなるだろう。私も一つ取り出し頬張る。


 意外と甘みが強くておいしい。蜜もたっぷり入っているし結構瑞々しさもある。捥ぎって一日二日とかそれくらいなのだろう。多分近くにリンゴの木がある。下山んついでに探してみるのもアリかもしれない。


「美味しいですね~このリンゴ。新鮮でツヤがあって。今まで食べさせられてきた粗食とは比べ物になりませんねぇ。あっ食材と調味料にはそこそこ詳しいので私が行きます。これでも商人の娘ですから。そこそこ分かりますよ」


「お~そりゃありがたい。ぜひともレクチャ~してくれぃ」


「了解です」


 ぎゃん泣きしてた娘と話している間、攫われガールズの内の二人は


「美味しいねぇこのリンゴ」


 と互いに言いながらリンゴに嚙みついていた。かなり豪快に食べている。この様子じゃ、ご飯はいっぱい作る必要がありそうだ。


「じゃ、リンゴ食べながらで良いからこっち来て~」」


「は~い」


 私たちは薄着で吊るされている変なヤツには目もくれず調理場へ向かった。


「お~結構量ありますね。野菜はじゃがいもにんじんくらいしか無いですけど合わせて大体100個くらいはありますよ。それに調味料なんて醤油に味醂にしおと胡椒それと砂糖、ここらへんじゃなかなか手に入らない山椒もありますし中にはワインまで。あっハムもある。ここの人攫いはグルメな人が多かったんですかね?」


 どうやら私の目利きは意外とあってたらしい。ここにあるもの的にやっぱポトフでも作るか。肉はハムよりベーコンの方が個人的に好きなんだけどまぁさして変わらないでしょ。


「かもね~んじゃ、お腹すかしてる娘もいるわけだしパパっと作っちゃいますか~あっ怪我するかもだから広間戻っててもらっていい?」


「了解です。楽しみにしてますね」


 ぎゃん泣きっ娘はそそくさと料理場を出て行った。きっとリンゴが食べたかったのだろう。部屋移動の最中に爆速で食べてたし。


「さ~てとんじゃ作りますか~」


 ポケットから料理帳を取り出し手順通りに、近くにあった鍋にジャガイモと人参、ハム、それと魔法で生成した真水をぽいぽいぽいっと投入した。無論各種食材は魔法で一口サイズにカット済みだ。その後手順通り特製ミックス調味料を作り鍋の中に入れた。このミックス調味料がおいしさの秘訣なのだ。


「さてさて、味はどんな感じかな~っと」


 鍋の中身をそのへんにあったスプーンですくって口に運ぶ。味は実にいいが食材が硬い。攫われっ娘達には少々酷な硬さだ。


「ふむ。時短するか。腹すかしてる娘達を待たせるのはアレだし」


 魔法で鍋の中の空気を完全に閉じ込めた上で少しだけ圧力を加えた。こうすると熱の逃げ場がなくなって早く火が通るのだ。


「今のうちにお皿を用意しまして~っと」


 食器棚を漁ると妙に高級感のある皿ばかりが目に入る。ここの連中は随分といい暮らしをしていたみたいだ。最初に会った二人組も固定客がいるっぽいことを話していたし、稼ぎはそれなりに有るようだ。稼ぎ方は最低だから感心してやるつもりは毛頭ないが。


「テキトーにこれとこれとこれでいっか。食材もそろそろいい感じっぽいし持ってきますか~」


 右手にお鍋、左手にお皿を人数分重ねて広間に運んだ。スプーンは一番上の皿にまとめて入れてある。攫われっ娘たちはりんごを食べ尽くしたらしく空の袋が置きっぱなしになっているテーブルで仲良く談笑していた。ずいぶんとまぁ楽しそうだ。


「みんな~晩御飯出来たよ~食べよ食べよ~」


 そう声をかけると全員が一斉にこちらに視線を向けた。顔仕草や動きから察するに皆食欲に支配されている様子だ。リンゴを1袋食べ尽くしたとは思えない食欲の強さだ。実に結構。たくさん食べる子は大好きだ。


「待ってました~!ささ、早く食べましょ食べましょ」


 商人の娘と名乗っていた娘が今までにない元気さで私の手から爆速で鍋と皿を回収し、皿にポトフを人数分よそい始めた。おそろしく早く、それでいて一滴も汁を零していない。まさに完璧と言っていい程に良いよそい方だ。無駄且つ謎に洗練された技術が垣間見える。そんなよそい方だった。


「は~い二人共どうぞ~食べよ食べよ」


「「は~い」」


 攫われっ娘たちがポトフを口に運んだ。そしてその直後、全員が何故か目をこれでもかと大きく見開いた。この世界の人間の口には合わなかったのかもしれない。


「えっ旨っ。あっ美味しい。はっ?えっ?」


 ぎゃん泣きっ娘が小さくつぶやいた。なるほど。どうやら口に合い過ぎて困惑していたらしい。実に結構。他二人も口に合っていたらしく凄まじい勢いで飲んでいる。明らかにポトフの食べ方として適してはいないが腹が減っているのであれば致し方なかろう。


「おかわり!!」」


「あたしも!!」


 爆速でおかわりの催促まで来た。いくら何でも早すぎる。もうちょい味わって食べろや。まぁ腹が減っているのであれば致し方なかろう。


「あいよ~。ちょいまち」


 鍋に残ってたポトフを皿によそう。この調子だと確実に食い尽くされそうだ。足りるとイイナ~割とおっきめの鍋で作ったんだけどな~食べ盛りだし仕方ないか~


「あっおかわり私の分もお願いします」


「あいよ~そ~いやみんな名前なんて言うの~?あっワタシはスピカ。ただの世間知らずだよん」


 おかわりを渡すついでに名前を聞くことにした。シンプルに呼び分けが面倒だし。


「ハイ!!あたしメア!!」


 空の皿を持っておかわりの催促をこれでもかとしながら攫われっ娘三人組の中で一番小さく幼そうな娘がいの一番に返事した。よ~しお姉さんがおかわりよそったげよう。


「んで、ウチがメイ。メアの双子の妹」


 後ろ並んで丁度中間くらいの身長の子が答えてくれた。無論手元に空の皿を持ったまま。これはおかわりの催促だ!!って感じの態度をしながら。よろしい。おかわりよそったげる。


「んじゃぁ最後に。エイミー・ヴォルフレットです。商人の娘です」


 一番身長高い子がやたらお上品にポトフを食べながら反応した。やたらカッコいい苗字してるな~。メアちゃんメイちゃんは苗字無かったあたり御貴族様だけ苗字あって平民は無いとかそんな感じなんかな~ウチの元居た世界だとそうだったし覚えるの楽で助かるわ~。お偉方と懇意にする気は毛頭無いしモーマンタイモーマンタイ。


「それにしても・・・」


 目線を下に向けると空の鍋が視界に入る。自己紹介が終わった頃にはすでに鍋が何故か空になっていた。理由は当然、皆に食べ尽くされたからだろう。素晴らしい食べっぷりだ。そして少し視線を横に向ければちび双子二人が船を漕いでいた。お腹いっぱいになって眠くなったらしい。


「あ~寝床どうしましょ。ここのアジトの寝床は確実に男どもが使いまくって男臭そうだしな~フム。さて、そこで狸寝入りしてる宙吊り女。お前さんの部屋何処?」


 視界の端の方でずーーっと黙り込んでる人攫いのボスに声をかける。狸寝入りしてることなどお見通しなのだよ。大体そんな体勢で寝れる訳無いじゃんね。


「・・・・・・広間から出て左突き当りの部屋」


 すごーく渋々っぽい声で返事した。何がそんな嫌なんだろか?不思議だ。


「んじゃダリアちゃんメアちゃん運んでくれる?ワタシはメイちゃん運ぶからさ」


「りょ~かいです」


 メアちゃんを抱きあげながら声をかけた。にしても軽いな~この娘。捕まる前ちゃんと食べてたのかな~?


 ダリアちゃんと一緒に広間を出て左突き当り目指して歩く。地上への道とは別の道なので死体は転がってない。見栄えが良くて結構。まぁ岩肌しか見えないのはアレだけど。


 そう長く歩くことなく突き当たりまで行き着いた。聞いた通りの位置にあった扉を開けると、割と金のかかっていそうな感じのする部屋につながっていた。


 3人くらいなら並んで寝れそうな広いベットに、いい感じの机。かなり大きめの姿鏡やドレッサーぽいやつもある。一部の壁はワインセラーっぽくなっていて良さげなワインが何本か飾られていた。


 評価がかな〜りフワッフワだけどこっちの品質基準とか分からんので許してくれたまえ。


「よいしょっと。ん?どうしたんですかスピカさん。そんなにワインセラーをじ~っと見て。」


 ダリアちゃんがメアちゃんをベットに寝かしながら訪ねてきた。


「あのワイン?上物そうだな~って思ってさ。ダリアちゃん商家の娘って言ってたし目利きとかできる~?」


 メイちゃんをベットに寝転がしながらそう答えた。目利きできるか聞いたころにはすでにワインボトルを手にとり見回していた。ラベルらしきモノとか無いしワンチャン密造酒とかなのかな~?


「そうですね~正直飲んでみないと私じゃ断定出来かねるんですけど、これたぶんルイス山脈で育てたブドウで造った貴腐ワインだと思います。たぶん20年物くらいだと思うんですけど確証はあんまり無いですねぇ。まぁ間違いなくかなりの良い物です。下手したら一等地に家建てれるかも。あいやそれはさすがに・・・いやでも父様ならいけるかな・・・」


 目利き出来るんだ。すご~。私お酒は飲み方荒いから全然区別つかないんだよな~。貴腐ワインか~こっちのはどんくらい甘いんだろ?気になるな~。飲みたいな~。


「飲んでも無いのに産地分かるの~?すごいねぇ~。・・・せっかくだし飲んじゃおうよ。持ち主にちゃんと許可とってさ~」


「え?あ~う~んまぁ密造酒でもなさそうだし。う~ん」


 さぞ悩んでるご様子。これはすぐ落ちる。私の酒飲みとしての勘がそう囁いてる。


「犯罪者相手なら大体の事は許されるんだしいいじゃんいいじゃんね~。そ・れ・に・お高い酒なら奴さんもさぞ開ける時を楽しみにしてただろうしさ、仕返しってとこでね。飲んじゃお飲んじゃお」


 ワインセラーからどんどんワインボトルを取り出しながらそう囁く。どれもすご~くよさげだ。にしても白ワインばっかだな~。赤は嫌いなのかな~アイツ。おいし~のにな~


「・・・・・・スゥ~~~。はぁ~~~~。よし。いいですよ。飲みましょう。今日は酔いつぶれるまで飲んでやります。」


 堕ちたな。


「よくぞ言った。よし行こう。今すぐ行こう。レッツ酒盛りパーリナイ」


 指の間に一本ずつ。ダイアちゃんの持ってるのと合わせて9本。今夜は全部涸らしてしんぜよう。


 私たちはこの世界の誰よりも何よりもルンルン気分で今来た道を戻る。ダリアちゃんの顔には溢れんばかりの期待に満ちた笑顔が浮かんでる。超絶カワイイ。こりゃ酒の肴には困らないな~。









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