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人攫い殲滅作戦

 私は洞窟に足を踏み入れた。音の反響具合から察してかなりの空間があるのだろう。


「とりあえず暗視と探知使うか。見えんし」


 探知魔法を使い構造を探る。幾つか脇道があって下にいってちょっと進んだらそこそこ広いところがあるようだ。生命反応は計40。そのうち30名が2~3人一塊でバラバラにいる感じだ。まぁ間違いなく待ち伏せだろう。


「結構長くて面倒だな~。まぁいいか」


 広間っぽい所までの最短ルートを導き出し、スタスタ迷いなく歩く。入り口に一番近い待ち伏せ人がいる地点に辿り着くがぱっと見、誰もいない。しかしよくよく見ると壁に明らかに人為的であろう変なへこみなどがある。隠し扉の類だろう。


 私はそこへ向けて刀を振りぬく。壁がいともたやすく切り開かれ、真っ二つになった男が隠し扉の残骸と共に通路に転がり出た。


「んなっ」


 上から小さな声が聞こえた。恐らく待ち伏せ人の声だろう。上方向に刀を振りぬき天井を切り裂く。すると真っ二つになった隠し扉と首ちょんぱされた男の死体が降ってきた。


「これで2つ。あと35か。ああいやボスは生け捕りにするから34か」


 私はズカズカと洞窟内を進んでいく。待ち伏せ人を最初の二人のように、一方的に殺しながら。20個もの死体が洞窟内に転がってきた頃、残り10人が広間にむかって移動し始めた。外への隠し通路でもあるのだろうか?あったら実に面倒なことになりそうだ。


「少し急ぐか」


 私は広間に向かって狭い洞窟の道を壁にぶつからないように、全力で走り始めた。するとすぐに待ち伏せ人・・・ああいや、元待ち伏せ人が3人に出くわした。広間に逃げ込んでる最中のヤツらだろう。多分最後尾組だ。


「はっ!?チッ。コイツが侵入者か。オマエら!!殺るぞ!!」


「「応!!」」


 前方を走る3人が即座に振り向き、小ぶりの剣を抜き、構えをとる。素晴らしい反射速度だ。私が元居た世界でなら近衛騎士くらいになれるかもしれない程の速さだった。もっとも家柄がアレだろうから成れはしないだろうが。


「邪魔」


 構えていた3人が瞬く間に両断される。振り抜いた刀が構えた剣はおろか洞窟の壁諸共切り飛ばし、防御など意味を無くす。我が愛刀にとって肉も石壁も鉄剣も紙とさして変わらない。数多全ていともたやすく切り裂け、通路には三人分の死骸が転がる。


 死骸の上を飛び越え全速力で広間へ向かう。途中人攫い計5人と出会い、全員を両断した。それにしても一つだけ不思議なことが有る。壁や天井に煙で汚れた形跡がない。なんなら光源があった気配すらまともに感じ取れない。奴らはどうやって周囲を認識しているのだろうか?


「まぁそんなことは今はいいか。後でじっくり調べるとしよう」


 私は最終目的地である広間にようやくたどり着いた。扉は固く閉ざされている。私が殺した7人は切り捨てられていたようだ。


 扉に触れ、軽く押す。どうやら閂のようなもので扉が開かないようにしているらしい。まぁそんなことはもはやどうでもいい。こんな扉簡単に蹴り破れる。そして嬉しい事に隠し通路はこの先には無いようだ。探知魔術曰く攫われた者含む残り15人全員がこの先に居る。


「よっこいド~ン!!」


 私は掛け声とともに扉を蹴り、吹き飛ばした。運の悪い事に誰にも当たらなかったがもはやどうでもいい。


 広間の中には他よりもいい服を着た、武器を構えている女が1人と11人の武器を構えた男の人攫い共がいた。身なりから察するにあの女がリーダーなのだろう。実に分かりやすい。


「野郎ども!!やっちまいな!!そいつはウチらの仲間を沢山殺したクソアマだ!!」


「応!!」×11


 私は(コイツら返事全部「応!!」だな。そういうルールでも有んのかね~分かりやすいようにって)などとこの上なくどうでもいい事を考えながら襲い来る11人を殴殺する。

 

 ある者は首チョンぱ。またある者は胴体が二つに分かれ絶命。中には返しの刃に当たり、刀の峰の部分で殴り飛ばされ壁に激突しその衝撃で息を引き取った。全員が実に悪くない連携の元、攻撃を仕掛けるが、しかし、一凪ぎで武器も防具も命すらも砕かれていては意味など無い。


 瞬く間に11人の人攫いは肉塊に加工された。残すは推定リーダーただ一人。


「バ、バケモノめ」


 リーダーの女は今まで見てきた中で類を見ない程に青ざめた顔でそう呟く。


「え~女の子にバケモノ呼ばわりはひどくな~い?私傷ついちゃったな~。ど~しよっかな~。腹いせに~殺しちゃおっかな?」


 私はこの上なく満面の笑顔で、高らかにそう告げる。相手の顔色がますます悪くなる。死体よりもひどい顔だ。見比べればよく分かる。死体はそこら中に転がっているから見比べるのも実に簡単だ。


「こっ」


「こ?な~に?」


「降参だ!!頼む!!どうか命だけは!!金も酒もクスリもいくらでもやる!!だからどうか命だけは!!」


 なるほど命乞いか。この上なくヘタだな。まるで見逃す気が湧かない。少しくらい練習しておけば良かったな。まぁこんな元々殺す気は無かったのだが。


「ふ~ん。そう。じゃあまず攫った子たちのとこ。案内してくれる?話はそれからね」


「あっあぁ。分かった。こっちだ」


「敬語」


 私はそう言って女を蹴り飛ばす。正直敬語かどうかなんぞどうでもいいのだがまぁ多少痛めつけた方が色々便利だろう。


「っがっみぃ。ふぅ。こちらでございます」


 女は左足をかばうようにしながら前を歩く。足が千切れないギリギリ程度に加減したつもりだったのだが、おそらく軽く骨にヒビが入った程度の傷なのだろう。どうやらこの世界の住人は私がいた世界のニンゲンよりもはるかに精強であるらしい。まぁこいつらだけがやたら強いという可能性もあるだろうが。


 女はのそのそと歩き広間の隅にある扉に手をつき、体重をかけるようにして半ば無理矢理扉を開けた。


 扉の先には木製の柵で出れないようにされた空間にボロ布の服を着せられた少女が3人、別々の部屋に閉じ込められていた。内2人は全身に打撲痕や浅い切り傷のようなものがびっしりとあり、この上なく衰弱している様子だ。目立った怪我がない少女は座り込んだままこちらをジーっと見つめている。


「やっはろ~助けに来たよ。お嬢さん方」


 そう私が声をかけた瞬間、少女はボロボロと泣き崩れ始めた。安堵かそれに類する何かの感情によるものだと思われる。と、いうかそうであって欲しい。見ただけで泣かれる。そんな人相や恰好はしてないはずだ。多分。抜き身の武器くらいしかなく要素は無い。と、信じたい、じゃなきゃ傷ついちゃう。


「ズッあぁうぅ。ううぅよがっだぁ~ぁぁぁ」


 監禁部屋に、少女の安堵に満ちた泣き声が響いた。 


 







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